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癒しの巫女〖第7話〗──②
しおりを挟む意識を失った空は蒼の目の前の床へ膝から崩れ落ちた。血が顔にはねた。腕から血が、じわじわと小さな水たまりのように広がって行く。
「い、嫌だ。嘘だよ、空。あんなこと言うつもりじゃなかったんだ。こんなこと……するつもりじゃ……まだ、話したいことも、訊きたいこともあるんだ。連れていってあげたい場所もあった。……何で血が止まらないんだよ!返事しろ!返事しろよ!空!」
こんな、傷つけるつもりなんかなかった。言葉だけじゃ飽き足らず実際に傷つけた。取り乱す蒼の頬を、暁はパチンッと叩いた。
「しっかりしろ。落ち着け!らしくねぇぞ、蒼」
ハッとして暁を見る。暁は自分のシャツをビリビリッと破き止血し、的確に処置していく。
「失血性ショックかもしんねぇ。外の本で読んだ。出血が多い。取り敢えず俺ん家の薬師は外傷関係強いから家に運ぶぞ」
全速力で走る。黒い耳と尾が出る。忌むべき色。少しだけ自分と空は似ているかもしれない。完全な人のかたちより本来のかたちに近い分、駆けるのは速い。あっという間に獅子尾家に着いた。
******
失くした日々が君を呼んだ。ちぎれる思いを隠して君は笑う。泣いていい。もう無理をして笑うことをしないで。簡単に俺を許してしまわないで。
******
獅子尾家は巫女追放に暁の祖父が最後まで反対していた。追放派の狛井家の祖父とは少し、もめたらしい。もう、今となっては昔のことだが。
空の術の才能を見抜いたのは暁の祖父だったと後で聞いた。二人とも今は亡い。それから代が変わり、獅子尾家は中立の立場をとっている。
獅子尾家の医師や薬師により空は一命はとりとめた。
『もう大丈夫だから、帰っていいぞ』
と暁に言われたが
『責任がある』
とだけ言った。ただ眠るだけの空でも、一緒に居たかった。爺に伝書鳥を飛ばす。内容は知らせず、今日は暁の家に泊まるという旨だけ伝えた。看病と言っても汗を拭いてやって額の手拭いを氷水で冷たくしてやるくらいだ。暁と交代で空を看た。傷が炎症を起こしたのか、夜中、熱が出て苦しそうにしていた。
悲しい夢を見ているのか、魘されてポロポロ泣いている。手を握ると、ゆっくり空は目を開けた。
「起こしたな。ごめん。悲しい夢を見てたのか?」
「うん」
「……聞いて、いいか?」
「お母さんが、死んじゃったときの夢……お母さんは心臓が悪かったの……」
静かに泣きながら空は蒼に語る。話を要約すると、こうだ──。
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