15 / 115
空の孤独 と疼く記憶〖第8話〗──①
しおりを挟む
───────────
………朝起きてみると、空の母親はもう、息がなかった。息を引き取る瞬間も一緒にいられなかった。
また、『死』というものに接したことがなく、また、全ての時間を母と一緒にずっと狭い家の中で過ごしてきた空には『死』が良く解らなかった。その意味も概念もまだ良く理解できなかった十歳の空は、なす術もなく、ただ母親が目覚めるのを待った。段々容貌が変わり、腐臭が漂う母親を必死に『看病』した。飲まない水を飲ませ、懸命に語りかけた。
家にたまに来る綺麗な着物を着た長い髪のおじさんが二週間くらい経った後くらいに来た。変わり果てた母親を見ると、涙を流して抱きしめた。すると、空の母親は生き返ったように綺麗になった。
母親は棺に入れられ、眼鏡のもう一人のおじさんと長い髪のおじさんが空の母親を花でいっぱいにして、家の裏に埋めた。そして、長い髪のおじさんが流した涙が宝珠になった。おじさんは懐から二つの宝珠を出した。『空が生まれた喜びが一つ、お前の母親を失った悲しみが一つだ。肌身離さず持っていなさい』と言うと、長い髪のおじさんは、空を抱きしめると消えてしまった………
────────────
「お母さんを思い出すと勝手に涙が出てくるの。何でかな……」
そう空は困ったように涙声で笑い、片手で顔を隠した。指の間からとめどなく涙が伝う。もう息がない母親との二週間。段々痛んでいく遺体。それをまだはっきりと『死』の概念がない十歳の子供が『看病』し、その様をずっと見ていた。
どんなにつらかったか。孤独だったか。悲しかったか。叶うなら十歳の空を抱きしめて、一緒に泣きたかった。
そして、年の割に空の精神が幼い理由が解った。空の人生の中で関わったのは『母親』だけだ。空の世界はあの狭い家の中と、夥しい本の世界。
………朝起きてみると、空の母親はもう、息がなかった。息を引き取る瞬間も一緒にいられなかった。
また、『死』というものに接したことがなく、また、全ての時間を母と一緒にずっと狭い家の中で過ごしてきた空には『死』が良く解らなかった。その意味も概念もまだ良く理解できなかった十歳の空は、なす術もなく、ただ母親が目覚めるのを待った。段々容貌が変わり、腐臭が漂う母親を必死に『看病』した。飲まない水を飲ませ、懸命に語りかけた。
家にたまに来る綺麗な着物を着た長い髪のおじさんが二週間くらい経った後くらいに来た。変わり果てた母親を見ると、涙を流して抱きしめた。すると、空の母親は生き返ったように綺麗になった。
母親は棺に入れられ、眼鏡のもう一人のおじさんと長い髪のおじさんが空の母親を花でいっぱいにして、家の裏に埋めた。そして、長い髪のおじさんが流した涙が宝珠になった。おじさんは懐から二つの宝珠を出した。『空が生まれた喜びが一つ、お前の母親を失った悲しみが一つだ。肌身離さず持っていなさい』と言うと、長い髪のおじさんは、空を抱きしめると消えてしまった………
────────────
「お母さんを思い出すと勝手に涙が出てくるの。何でかな……」
そう空は困ったように涙声で笑い、片手で顔を隠した。指の間からとめどなく涙が伝う。もう息がない母親との二週間。段々痛んでいく遺体。それをまだはっきりと『死』の概念がない十歳の子供が『看病』し、その様をずっと見ていた。
どんなにつらかったか。孤独だったか。悲しかったか。叶うなら十歳の空を抱きしめて、一緒に泣きたかった。
そして、年の割に空の精神が幼い理由が解った。空の人生の中で関わったのは『母親』だけだ。空の世界はあの狭い家の中と、夥しい本の世界。
0
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た
キトー
BL
【BLです】
「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」
無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。
そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。
もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。
記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。
一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。
あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。
【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】
反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。
ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。
壊すほどに、俺はお前に囚われている
氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】
春、新学期の大学キャンパス。
4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。
彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。
――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。
否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。
無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。
先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる