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〖第8話〗
しおりを挟む僕が小学生の頃、父と二人で此処に一度だけ来たことがある。福島駅を出たところで、僕は食べかけの、珍しくコンビニエンスストアで駄々をこねて買って貰ったアイスクリームを不器用に持ちながら父の背中を追いかけた。
シルバーのまるいフォルムの軽自動車がクラクションを鳴らすと、父は会釈し、軽自動車に駆け寄った。右手をアイスに塞がれ、体つきが小さく上手く走れなかった僕は、置いていかれると思って、半分泣きながら、父の後ろ姿に、
「おとうさん!待って」
と涙声で訴えた。車から降りてきたのは、運転席の年配の女性。スッと片手でアイスを持ち、膝を曲げて幼い僕に視線を併せ微笑み、余った片手で頭を撫でた。なんて綺麗なひとなんだろうと僕は見惚れた。
真っ白な髪を結いあげた、ただのおばあさんではない、まるで『ひと』ではない『何か』みたいだ。皺やシミは、ひとに似せるために作った物のようだとまで思えた。車内で簡単な自己紹介をされる。
「改めて麝香チヨと言います。惣介ちゃん、宜しくね。それと、こんなおばあちゃんでも、女性に年を聞くのは野暮ですよ、昌介さん」
昌介というのは僕の父。チヨさんは父の毎度の質問をさらりとかわし笑う。
「じゃ、行きましょうか。いつもの寄り道も」
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