9 / 31
〖第9話〗
しおりを挟む裏道を抜けて山間に入る。空気も清々しい緑色ではないかと言うほど爽やかな湿度だ。
「いつもの寄り道?」
「良介さんは、多分まだ家の片づけ中ですし、少し足を延ばすだけでいい温泉があるんですよ。惣介ちゃんもきっと気に入るわ」
湯あたりをするからとチヨさんを除いて父と温泉に入りに行くことになった。車で足を伸ばし、飯坂町につく。
父は、
『熱いから惣介には無理じゃないか?』
と笑っていた鯖湖湯はかなり熱いと評判らしい。しかし、このお湯は熱いせいか頭がスッキリすると父が言う。
確かにかけ湯をして湯船に入った時の、ビリビリっとくるような熱さと弾けるように目が覚める感覚があって、お湯に浸かると目が覚める感じがした。
お湯から出て、車に戻った僕たち二人に、チヨさんは紙パックの冷たいイチゴ牛乳を手渡した。
叫ぶように、蝉が鳴いていた。叔父さんの家に着くと、父は僕を放ったらかしで叔父さんと話し込んでいた。
チヨさんは僕を気にかけ、
『もう少ししたら皆で冷たいゼリーを食べましょうね』
チヨさんは、庭の小さなベンチに座る僕を残して、勝手口から台所に入っていった。
夏の高原。皆賑やかなのに、此処だけ静かだ。此処でも誰もいない。幼い僕はいつも独りだった。
普段なら、絶対にしない駄々をこねてまでここに来たのに、いつもと同じだ。無駄に広い家。お洒落と言われる家。けれど家には音がない。
カードキーの家の中には僕以外、誰もいないのだ。
僕がするのは勉強。僕が周りから望まれていることは、ひたすら勉強をすること。これから偏差値と言うものを上げて、いい学校に入ること。それが僕のすること。
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる