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〖第7話〗
しおりを挟む今、此処だけは自由に満たされている。僕は逆らう勇気はない。逆らい方も解らない。結局、僕は溜め息を日常に、大人になることを叔父さんはすぐに見抜いた。
だから叔父さんは静かに笑った。けれどそれは僕を軽んじるものではなく『あの家のしきたり』故の『哀しさ』だと認める温かなものだった。叔父さんは家の離れに僕を案内した。
「何かあったら私かチヨさんに」
鍵を受け取り、火照った顔を洗面台の冷たい水で顔を洗う。離れと言うより小さな家みたいだ。
冷蔵庫を空けると炭酸水と天然水があった。初めての期限つきの自由は、掴み所がない透明な味。窓を通る風は、するりと洗ったばかりの頬を撫でていく。
叔父さんの家、ここの暮らしは最高だ。散歩をして、陽の光を浴びて、何種類か混じった蝉の声を聞く。不自由さは何もなく、とても落ち着く。ぼんやり風に当たり、庭を散歩するのも楽しい。
叔父さんと麝香チヨさん─お手伝いのチヨさん─に庭を案内された時、たくさんの草花の名前を知った。叔父さんは草木の根本に邪魔にならない大きさの『名札』をつけている。叔父さんは植物一つ一つの『植物の種類』を呼んで声をかけ、朝夕、チヨさんと水をあげている。
昔、此処で医者だった僕のご先祖様が、小さな医院を開き薬草園を営んでいたらしい。
「仲良くなりたいからね」
そう叔父さんは言い、植物を撫で微笑む。叔父をおかしいと思ったことはない。叔父さんもチヨさんも笑顔が若々しく、何処か浮世離れして見えるのは、他人に会わない生活からか。
一体何歳なんだろう。昔と変わらなく見える。
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