偽りの聖女には貴方は渡さない!何故なら私が本物の聖女(らしい)からです!~って私、死んだんじゃなかったの?~

カシューナッツ

文字の大きさ
1 / 8

こんなとこで、死ぬのなんかやだよぉ〖第1話〗

しおりを挟む

私は、本村マミ、29歳。
もう、生きることに疲れていた。
上司はパワハラ、セクハラ、モラハラのオンパレード。そんな私は同じ社員からは生け贄の羊。

同棲中の彼氏は自分の親友、神谷ユイと浮気していた。手を絡ませ嬉しそうに街を歩く2人。職場から帰ったら、家はもぬけの殻。金目のもの全部なくなり、不幸のズンドコ。拠り所の彼氏もいない。身寄りもない、友達と思っていたユイは、彼を盗った。私は線路に飛び込んだ、もう、生きてることに疲れた。はずだったんだけどなぁ──。
───────────────


知らない、天井。
木で出来てる。木造建築でここまで古いのは中々無い。ここは天国?
私、線路に飛び込んだはずなのに。
天国って木造だったんだ。パルテノン神殿とかのイメージだった。

『起きたわ!良かったわ。あなた3日3晩眠りっぱなしだったの。今日はちょうど満月なの。本当、いい日だわ。降臨なされた聖女さまもお喜びになる!』

喜ぶ修道院の、シスターの格好をしている中年の女性。助けてくれたのはこの人?線路に飛び込んだはずなのに、身体に異常はない。ただ、だるくて頭が重い。私は周りを見渡す。窓から見える景色は日本ではない。ヨーロッパのまるで西洋建築。けれど植物の植生は日本と同じ。

ここは何処なんだろう?

『獣人が袋一杯の使えもしないシイの実を持ってきたのよ。あんな、野蛮な生き物が、いえ、形が異なる者が。あなたを大事そうに「助けてやってくれ」と。いけませんね。口が滑りました。ホホホ』

『じゅーじん?』

『ケダモノです。〖獣人〗と書きます。関わりにならないほうがいいかと』

私は形が異なる人を区別することを、あからさまに何も知らない人に言う人はあまり信用できない。0の人にはそれは100になる。
獣人と呼ばれる人はそんなに異形の種族なのかしら。

この人、シスターが語るこの世界。
知らない国。
今流行りの異世界が何とかって本屋さんでたくさん並んでいるのを見た。
そして、シスター曰く、獣人は頭が悪く使えもしないドングリを拾ってきたという。

『こんな、食べれもしないもの……。ああ、子供たちのおやつにいいわ。あの子たちなんでも食べるから』

実験台?ですらない。こんな孤児院おかしい。毒草なんて食べたら……まあ、幸運にもシイの実は灰汁は強くなく食用だ。炒っても美味しい。幼稚園で食べた。

それにしても、ここ、おかしい。

助けてくれた獣人と呼ばれた人にお礼を言いたい。見るとこの修道院は孤児院兼、病院も兼ねているらしい。小さな可愛い子ばかり。

「あの、私の服とバックは?」

「あの汚い物?捨てましたよ。さあ、スープを。あなただけの特別なものですよ」

ニタァと笑ったシスターからは悪意しか感じられなかった。肌で感じる。


『食べるな』誰かの声。女の人?


「ほら、ほら、ほらぁ!さっさとする!」

怒鳴られると、萎縮するけれど、このスープは飲んじゃダメだと私は握らされたスプーンを落とすふりをして軽く投げた。


『飲むな!』
『危険!』
『逃げろ!』

確かに聞こえた。頭の中に響く、女性の声。解るよ。私もヤバいって感じる。



「今は、遠慮します」

「『あなた』が、必要なんですよ。これも運命。外の者が災いをもたらす。すれば国は傾く、聖女さまのお告げです。ほら、長年一緒に暮らした恋人に裏切られ、金銭を失い、天涯孤独のマミさん。全ての苦悩から解放されますよ」

私はぞっとした。どうしてそんなことを知っているのだろう。

『どうして──そう思われましたね。聖女さまは貴女のことは皆ご存知。聖女さまには羽根がありますの。背中に赤い羽根が。聖紋といいますの』

私の彼氏を寝盗った『元』親友ユイを思い出した。あの子も幼い頃ヤカンのお湯を被って背中を火傷した。
もう、そんなことどうでもいいけど。

ただ、今思うことは、私の過去の不幸を並べ立てて楽しそうにしないで欲しかった。毎日、仕事はつらくて、ただ、帰ったら彼ががいる。
それが生き甲斐になっていた私を、このシスターの格好をしているババアは悪びれることなく言った。

まず、こんな文明的な暮らしをしているのに『聖女』?ありえない。
段々とシスターがにじりよる。

「さあ、スープを。強情な子。バックを返して欲しいの?ほら、返しますよ。嫌な子。疑うなら中身を確かめてごらんなさい」

スープ、冷えたわね。折角高価なニンジンを沢山使ったのだから無駄にしないで欲しいわ。沢山使わないと、意味がなくなってしまうし。

ボソリと呟いたシスターの言葉に、私は肌が粟立った。


『殺される!』


私は身を翻し、バックを持って駆けた。ふらふらするのは多分、毒草のケシだ。
あのババア、3日3晩私を『眠らせて』おいた!怪しげな満月の日に合わせて。何となくいやな予想しかつかない。大学で薬学研究部で良かった。

あのスープ、ニンジンは多分ドクニンジン。ソクラテスが牢獄で毒杯を飲んだと言われてる。毒草。

外は満月。影が出来るほど明るい。雨が少ないのか、枯れて割れた地面に軽くつまづきながら走る。逃げながら、私は、


『こんなとこで死にたくないよぉ』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

処理中です...