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こんなとこで、死ぬのなんかやだよぉ〖第1話〗
しおりを挟む私は、本村マミ、29歳。
もう、生きることに疲れていた。
上司はパワハラ、セクハラ、モラハラのオンパレード。そんな私は同じ社員からは生け贄の羊。
同棲中の彼氏は自分の親友、神谷ユイと浮気していた。手を絡ませ嬉しそうに街を歩く2人。職場から帰ったら、家はもぬけの殻。金目のもの全部なくなり、不幸のズンドコ。拠り所の彼氏もいない。身寄りもない、友達と思っていたユイは、彼を盗った。私は線路に飛び込んだ、もう、生きてることに疲れた。はずだったんだけどなぁ──。
───────────────
知らない、天井。
木で出来てる。木造建築でここまで古いのは中々無い。ここは天国?
私、線路に飛び込んだはずなのに。
天国って木造だったんだ。パルテノン神殿とかのイメージだった。
『起きたわ!良かったわ。あなた3日3晩眠りっぱなしだったの。今日はちょうど満月なの。本当、いい日だわ。降臨なされた聖女さまもお喜びになる!』
喜ぶ修道院の、シスターの格好をしている中年の女性。助けてくれたのはこの人?線路に飛び込んだはずなのに、身体に異常はない。ただ、だるくて頭が重い。私は周りを見渡す。窓から見える景色は日本ではない。ヨーロッパのまるで西洋建築。けれど植物の植生は日本と同じ。
ここは何処なんだろう?
『獣人が袋一杯の使えもしないシイの実を持ってきたのよ。あんな、野蛮な生き物が、いえ、形が異なる者が。あなたを大事そうに「助けてやってくれ」と。いけませんね。口が滑りました。ホホホ』
『じゅーじん?』
『ケダモノです。〖獣人〗と書きます。関わりにならないほうがいいかと』
私は形が異なる人を区別することを、あからさまに何も知らない人に言う人はあまり信用できない。0の人にはそれは100になる。
獣人と呼ばれる人はそんなに異形の種族なのかしら。
この人、シスターが語るこの世界。
知らない国。
今流行りの異世界が何とかって本屋さんでたくさん並んでいるのを見た。
そして、シスター曰く、獣人は頭が悪く使えもしないドングリを拾ってきたという。
『こんな、食べれもしないもの……。ああ、子供たちのおやつにいいわ。あの子たちなんでも食べるから』
実験台?ですらない。こんな孤児院おかしい。毒草なんて食べたら……まあ、幸運にもシイの実は灰汁は強くなく食用だ。炒っても美味しい。幼稚園で食べた。
それにしても、ここ、おかしい。
助けてくれた獣人と呼ばれた人にお礼を言いたい。見るとこの修道院は孤児院兼、病院も兼ねているらしい。小さな可愛い子ばかり。
「あの、私の服とバックは?」
「あの汚い物?捨てましたよ。さあ、スープを。あなただけの特別なものですよ」
ニタァと笑ったシスターからは悪意しか感じられなかった。肌で感じる。
『食べるな』誰かの声。女の人?
「ほら、ほら、ほらぁ!さっさとする!」
怒鳴られると、萎縮するけれど、このスープは飲んじゃダメだと私は握らされたスプーンを落とすふりをして軽く投げた。
『飲むな!』
『危険!』
『逃げろ!』
確かに聞こえた。頭の中に響く、女性の声。解るよ。私もヤバいって感じる。
「今は、遠慮します」
「『あなた』が、必要なんですよ。これも運命。外の者が災いをもたらす。すれば国は傾く、聖女さまのお告げです。ほら、長年一緒に暮らした恋人に裏切られ、金銭を失い、天涯孤独のマミさん。全ての苦悩から解放されますよ」
私はぞっとした。どうしてそんなことを知っているのだろう。
『どうして──そう思われましたね。聖女さまは貴女のことは皆ご存知。聖女さまには羽根がありますの。背中に赤い羽根が。聖紋といいますの』
私の彼氏を寝盗った『元』親友ユイを思い出した。あの子も幼い頃ヤカンのお湯を被って背中を火傷した。
もう、そんなことどうでもいいけど。
ただ、今思うことは、私の過去の不幸を並べ立てて楽しそうにしないで欲しかった。毎日、仕事はつらくて、ただ、帰ったら彼ががいる。
それが生き甲斐になっていた私を、このシスターの格好をしているババアは悪びれることなく言った。
まず、こんな文明的な暮らしをしているのに『聖女』?ありえない。
段々とシスターがにじりよる。
「さあ、スープを。強情な子。バックを返して欲しいの?ほら、返しますよ。嫌な子。疑うなら中身を確かめてごらんなさい」
スープ、冷えたわね。折角高価なニンジンを沢山使ったのだから無駄にしないで欲しいわ。沢山使わないと、意味がなくなってしまうし。
ボソリと呟いたシスターの言葉に、私は肌が粟立った。
『殺される!』
私は身を翻し、バックを持って駆けた。ふらふらするのは多分、毒草のケシだ。
あのババア、3日3晩私を『眠らせて』おいた!怪しげな満月の日に合わせて。何となくいやな予想しかつかない。大学で薬学研究部で良かった。
あのスープ、ニンジンは多分ドクニンジン。ソクラテスが牢獄で毒杯を飲んだと言われてる。毒草。
外は満月。影が出来るほど明るい。雨が少ないのか、枯れて割れた地面に軽くつまづきながら走る。逃げながら、私は、
『こんなとこで死にたくないよぉ』
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