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〖第6話〗
しおりを挟む私も残業なんかするから悪いのか。誰かに無責任に、かつて上司にされたように仕事を押し付ければ良かったのか。みすみす彼の気持ちを手放すだけだったのに。終わりを手繰り寄せるだけだったのに。
もう、恋はしたくない。こんな想いは真っ平だ。後悔ばかり。そういつも別れる度に言っている。
けれどまた、不覚にも誰かを想う瞬間がある。恋は落ちるものだ。予測不能だから価値がある。今度こそ素直であろうと思った。言いたかった言葉も言えずに、相手の顔色ばかり窺っていないで。
「自業自得なんだろうなあ。でも、好きだったんだよ。好きだったんだよ」
あの時『何も感じない』と、熱に浮かされた直樹の顔面に、ありきたりのドラマのように水でもかけてやれば良かったのか。
それとも独り雰囲気の良いバーにでも行き、意味ありげに泣けばいい?それとも直樹を店から連れ出して出て、直樹に罵声を浴びせたり、号泣しながら縋ったりすればよかったのか。
きっと、それらが正解だった。実際、ドラマみたいな方が心にわだかまりを残さない。
『察して欲しい』
『言わなくてもわかって欲しい』
そんな都合の良いことなんてない。人間は心は読めない。
『察せ』ないし、
『言わなければ解ら』ない。
服は脱げても、小さなことさえ言えずに、積もり積もった結果がこれだった。でなければ、こんな結果にはなっていない。
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