氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

文字の大きさ
18 / 94

〖第18話〗

しおりを挟む

「何で………最初からあきらめるの? 『みんないらない、みんなどうでもいい』って、寝言で言ってたけど。何かあったの? それと俺の友達に会うの、そんなに嫌?」

 私は一呼吸置いて真波の質問に答えた。惨めになるのは解っていた。

「正直に言うと、嫌よ。歳を重ねて『魅力が増した』なんて言われるのは、ほんの一部の女の人なの。他はね、皆ただの『おばさん』になるの。それにね、知り合ったばかりの知らない人に混じって楽しく話すほど、私はタフではないし、図太くもない。譫言は………会社で嫌なことがあったの。それだけのことよ」

「『直樹』は嘘つきだったの?」

 真波は、少し遠慮がちに言った。私は淡々と答えた。

「嘘つきじゃないよ、私が無駄に期待しすぎただけ」

「何を期待してたの?」

「何だろうね。自分でも解らないな」

「自分なのに解らないの?」

「一番信じて、大切にしなければならないのに、解らないの。解らなくなるのよ。どうして、だろうね」

 本当は解っている。その意味が、あなたも解る日が来るよ。

 あまりにも、それは誰にも残酷で平等なの。でも、仕方ないって真波には諦めないで欲しいと思った。私みたいにはならないで欲しいと思った。

*****

「多分、会うことはもうないね。さよなら、真波くん」

 別れる前に、面白いもの見せてあげると、私の化粧していく過程を見せてあげた。

 汚い顔が、滑稽な表情をして、美しい面を作り上げる過程。

「面白いね。どんどん綺麗になる。キャンバスに絵を描いてるみたいだ」

 彼の感性が好きだと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

メイウッド家の双子の姉妹

柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…? ※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

お前に惚れた〜極道の一途すぎる愛

ラヴ KAZU
恋愛
我妻組若頭、我妻力也は、堅気の女性と結婚したいと常々思っていた。 そして婚活パーティーに参加した。 そこで巡り合ったのが、コンビニバイトの榊ひとみだった。 力也は極道の正体を隠して、表の顔である我妻コーポレーション社長として、 ひとみを食事に誘った。 車といい、運転手といい、なんかおかしい。 もしかして、極道の世界の人? ひとみは早くこの場から離れなくてはと思い出した。 それに時間が経つにつれて、ひとみは時計を気にし始めた。 実は、ひとみはキャバクラで働くキャバ嬢だった。 しかも、我妻組管轄の店だ。 そうとは知らない力也はひとみにいきなりプロポーズをする。 過去の恋愛にトラウマがあるひとみは力也の言葉を信じられない。 (我妻さんが極道だったら、年齢詐称がバレる、堅気の人でも、私がキャバ嬢だなんて言えない) ひとみはタクシーを呼んでもらった。 タクシーが発進する直前、力也はひとみにキスをした。 「俺は諦めない、ひとみと結婚する」 タクシーは暗闇の中、走り出した。

あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。 ※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。 書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。 ――――――――――――――――――― ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。 傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。 ―――なのに! その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!? 恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆ 「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」 *・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・* ▶Attention ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...