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〖第19話〗
しおりを挟む「自分でも、そうだな、魔法みたいだと思う。大体の女の子はこのくらいは出来るかな。まあ、今の世代、男の子もできる子はいるね。まさに変身よね。自分でも驚くよ。みずぼらしいパンダの面影はまるでないわね」
「そんな、こと………」
真波は私の言葉にどう答えていいか解らないようだった。私は敢えて、今書き足した眉を下げて笑う。
「いいのよ。化粧は自信なの。化粧品は自信を買うのよ。まあ、場数で上手くなる人も多いね。年の功ってのもあるかしら。数をこなせば、多少は上手くなるからね」
私は真波をじっと見た。切なそうな顔をして見ないで欲しかった。
「すっぴんの美雨さんはあどけなくて可愛かったけど、今は戦闘モードだね。綺麗だけど近寄りがたいな。寄りかかる人、いないの?寄りかかりたい人は、いないの?」
私は口紅を取り出す。紅筆で口紅を口唇に乗せながら、私は「いたよ」と答えた。
自分でも驚いた。ちゃんと過去になっているじゃないか。悪いことは隅っこに追いやって、ただ好きだった人がいたという過去になっていた。
ただ、この口紅は切なさを連れてくる。ここで使うのが二回目。人生、何があるかなんて、解らない。
直樹と別れるときにおろした口紅だった。真波とさよならする時にまで使うのも寂しいと思った。
「俺、美雨さんにまた会いたいよ」
真波がしょんぼりして尻尾を垂れた仔犬みたいに見えて、私は名刺を手渡した。
名前と役職。スマートフォンの電話番号と会社の住所が書いてある。四十二歳での、まさかの本部長の昇進に私が一番驚いていた。
周りは『順当』と言う評価をくれた。それが一番嬉しかった。
「LIMEは嫌なの。文字と会話するのは仕事のパソコンでたくさんよ。するなら電話して。真波くんの声は、良い声よ」
私が帰ろうとしたとき、玄関が開いた。合鍵だ。
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