氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第24話〗

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 必要な予防接種などを打ち、お手入れもしてもらい、すっかり見違えたふわふわの、だがまだ頼りない二匹と一緒に暮らす為に必要なものは、その日のうちに買い揃えた。

 他の物も急いで手配し、他の注射の予約も取り、タクシーで大量の荷物と共に帰った。仕事で遅くなる日もあるので、まだ小さい二匹のために病院併設のペットホテルもたくさんお世話になった。

 何の意味もないと思えた『ペット可』のマンションが、本当に嬉しくて、ありがたかった。二匹とも、男の子だ。

 彼らはマナーの心得も良く、トイレもすぐ覚えた。珍しいことに爪を切られることが二匹とも平気で、簡単に切らせてくれる。とても助かる。段々元気に、そして予想を超える大きさになった。

 猫ってこんなに大きいのかしら。二匹の去勢手術のとき、

「すっかり元気ね。それにしても大きくて可愛い顔して。去勢したから、もっと大きくなるかも。ノルウェージャンが近くにいそうな毛並みだねえ」

 大型種のメインクーンを飼っている、動物病院で知り合って仲良くなった奈津さんが嬉しそうに言っていた。

 猫を飼うのに知っておくといい知識が載っている本やサイトを教えてもらったりした、お世話になった人だ。

 大きくなっても、あの儚い消えそうな生命の灯火が揺らめく緑色の瞳の二匹を思い出す。おはぎ、だいふく。何があっても私があなた達を守ってあげる。絶対にあなた達をを手放したりたりしない。

 暫くしたら奈津さんの予言は的中し、本当に大きくなった。凛々しく迫力のある、二匹とも八キロをゆうに超す大きく優しい子達。ふさふさとした長い毛がたてがみのように生え揃う。二匹は白と黒の色違いの兄弟みたいだ。

「おはぎもだいふくも、ハンサムくんね」

 同じ透き通る緑の瞳の二匹。柔らかな彼らの毛並みを撫でていると、自然と顔が綻ぶ。そんなリラックスタイムを邪魔する着信が入った。

 知らない番号に苛々を飲み込んで、会社モードでスマートフォンを取った。

──────────

「はい、斎藤です」

「あの、俺、俺だよ、俺。解る?」

詐欺紛いの電話に苦笑した。
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