氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第39話〗

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「カンパリの水割りだよ。いつもの晩酌のお相手。少し癖があるかな。普通ソーダで割るよ。カクテルで『カンパリソーダ』とか聴いたことあるでしょ?」

 私がそう言うと、真波は頷いた。それからおずおずと、

「一口ちょうだい? 俺、カンパリ飲んだことない」

 と言ったので、私はグラスを差し出す。

「甘い、けど苦い。美味しい。俺も欲しいな」

バカラの私とお揃いのロックグラスにカンパリの水割りを作ってあげた。透き通った赤が乱反射する。真波も、嬉しそうに飲む。綺麗だね、とほろ酔いの瞳でグラスを見つめた後、視線を私に移した。………少し、頬が上気している。

「じゃあ、最後に、プレートも空になったから、食後のデザートにしよう?」

 真波は流行りの歌を口ずさみなからホットケーキの種をたこ焼き器で焼いていく。真波の歌が、段々オリジナルの聴いたことのない歌になる。

「変な歌」

 くすくすと、私の口から自然と笑い声が洩れた。私は目を細めて真波を見つめる。楽しいな。温かいな、と自然と真波といるそう思う。

「愉しいでしょ? 美雨さんは笑った顔が一番いいよ。あ、もうすぐ焼けるよ」

 私は最初どうなるかと思ったが、甘い匂いが香る鈴カステラだった。こちらも油断したら熱かった。

「おいひい!」

「ほんのり甘さがいいでしょ。でもね、これが合うんだ。メイプルシロップ!」

 タコパと、デザートのスズパをしながらの、お互いの好きなもの、例えば映画、本、音楽、動物。そして趣味。たくさんのことを話した。今日のお喋りは楽しかった。中学生の淡い、照れながら公園でサイダーを飲みながらお互いのことを話すだけの初恋に似ていた。

「お腹いっぱい、暫くしたらお皿洗うね、
ここ置いといていいから。あー動けない。真波くんは、いつもこのくらい食べるの?」

 恥ずかしそうに、真波は小さくなって、

「食べ過ぎ?かなあ。少し足りない、くらい」

「大柄だもの。若いし、胃がブラックホールなのは当たり前よ。あ、残りご飯あるからキムチ炒飯食べる?この前キムチとか、お漬け物好きって言ってたから」

 大きな身体をますます小さくさせながら

『お願いします』という真波に、

「私、美味しそうに食べる人好きだよ」

 アルコールで上気した頬を更に赤くし、真っ赤になりながら、真波は出来上がったキムチ炒飯と、私の言葉も美味しそうに、もぐもぐと食べていく。真波は炒飯のお皿を綺麗に空にした。
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