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邪魔ばっかりする幼馴染みのコイツ①〖プロローグ〗
しおりを挟む………村の外れ、暗い森の奥には洋館がある。古びた小さな城のようで、屋敷の側面には蔦が蔓延っている。赤と緑の斑に蔦は色づき、いかにそれが古い頃からあったのかを感じさせる。そこは魔女の館と呼ばれ、中に入れば真っ暗で、チタン、チタンと水滴が天井から落ちて来る。辺りは金属臭く、絨毯はぬらりと滑り、手をつくとついた手は真っ赤に染まり………
「まーた。何書いてんだ?」
僕が机に被さるようにして、ノートを隠したが一樹が一歩早かった。取り上げられ、クラスに残ってた奴、皆に聴こえるくらいの大きさで音読された。追いかけて取り上げようとしとも身長差が許さない。
「返して!」
と言い、思いっきり飛び上がっても届かない。それはそうだ。バスケ部の一樹とは、身長で敵うはずもない。恥ずかしい。ここに居たくない。みんな、笑う。こんな変な話書いて。可愛い恋愛話でもない。小説を書くのが趣味なんて一樹しか知らないのに。それを吹聴するなんて。しかも、まだ誰にも言ってないけど小説家になるのが夢なのに。自信もない文章をけなされたら、解ってはいても自分の中では大ダメージだ。涙をためた僕を見かねてか、女子のリーダーの美山さんが、一瞬の隙をついて一樹からノートをすくい取るように取ると、
「災難だったね」
と苦笑いして返してくれた。美山さんの横で一樹は面白くなさそうな顔をしている。
「砂川くんは、本好き?来週の土曜日、一緒に図書館行かない?」
首を少しかしげて笑う癖。僕は思わず見とれた。可愛い子。目が大きくて黒目がちで猫みたいだ。いわゆる陰キャな僕と比べれば天使と石ころくらいの差だと思えた。
「図書館なら俺も行く!」
一樹は、僕の見張り番。何処までもついてくる。教室で、美山さんと話す。くりくりな目がまるで仔猫だ。やいやい言う一樹を置いておいて土曜日の約束をする。学校帰り、少し肌寒いので一樹とコンビニエンスストアで買った肉まんを半分個して帰る。本当は美山さんと帰りたかったけど、黒帯までの辛抱だ。
「あのさ、なんで教室であんなことするの?この前も美山さんが助けてくれた」
「あんまり、美山のこと信用しない方がいい」
僕は腹が立った。こいつよりはずっと、確実に信用できる。
「美山さんはいい人だよ!」
庇ってくれる。助けてくれる。笑いかけてくれる。やさしく接してくれる。おまけに図書館デートに誘ってくれた。こいつが邪魔したけど。
「──この前、現国のおまけの授業で、『短い小説を書こう』ってやったじゃん?『これ以上はないと、解ってはいるのに』とか、『言葉を飲み込む代わりに僕は手の平を握りしめた』ってお前が小説書くとき出てくるとき、前に使ってた言葉だろ?他にも色々。普通全く同じ文句があの短い時間内には出てこない。あいつの小説にまんま入ってた。しかも、この前校内のコンクールに出すのに迷ったもう片方の話が、そのままあいつ名義で校内コンクールで金賞もらって全国行く。本来ならお前がいけたのに。あと、こっからは俺。今日の話。何で部屋ん中真っ暗なのに手が赤いって解るんだ?」
一生懸命書いてるのに。頑張ってるのに、一樹はいつも高みの見物。偉そうに!美山さんが可愛いから、デートに誘われたのが一樹じゃなくて、冴えない僕だから、一樹はやっかんでるんだ。美山さんはそんなことするような人じゃない!そんなことしなくても、頭も良くて、可愛いし、モテるじゃないか。盗んだり汚い真似しなくても、何も困ることはない。
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