灰かぶりの王子さま~カボチャの馬車で迎えに行くから~〖完結〗

カシューナッツ

文字の大きさ
2 / 7

かぼちゃプリンと知らなかった母さんの悩み②

しおりを挟む


そして、いつも疑問に思うこと。一樹はバスケの副キャプテンだ。身長が高くてそこそこ頭も良くて、友達もいる。

そもそも何で僕なんかの友達なんだろう。お守りみたいにそばにいるんだろう?何にもいいことなんて無い。
ただ、優越感に浸りたいから?

チビの陰キャの、身体が─心臓が─ポンコツの、一緒にいても、何もいいこと無いのに!損得勘定で人を測るなんてと、思うかもしれない。けれど、僕は出来た人間じゃない。バレンタインに女の子から告白されたりする陽のあたる場所を歩いてきた人間とは違うんだ。

「これからは一緒に帰らなくていいから!デートはね、二人でいるから成り立つんだよ。合気道もさ、あともう少しで黒帯取れそうなんだ。もう昔の僕じゃない!自分のことくらい自分で何とかするよ!それに美山さんは僕を誘った。一樹なんかいらない!もう僕には一樹は必要ない!僕はそんなに可哀相に見えるのかよ!」

走り去ると、丁度ミラーがあった。歪んで映る僕の顔。これ以上無い程、悲しそうな一樹の顔。僕は生まれて初めて胸がかきむしられるような痛みを覚えた。

*****

一樹とはいつも腐れ縁だった。小・中・高、皆同じ。誰かが仕組んだのかと思うくらい全部通して同じクラスだ。押しが強くて、選択を迫られる度僕は『YES』としか言えなくなる。昔の恩がある。守ってくれた。他にもたくさん。危機一髪というときには必ず現れて助けて貰った。

昔は、何をするにも一樹と一緒。でも、僕は小学生高学年の頃、一樹が女の子に告白されているのを見た。このままじゃダメなんだと思った。依存しているのは、僕だ。薄々解ってはいた。独り立ちしなければ。

僕は今はまだ、チビの部類だけど、昔より男らしくなった。ただ、困ったことが一つ。高校入学のとき母と約束した。いや、させられた。

『帰るときはなるべく一樹と一緒に帰る。一樹と一緒じゃないときはガタイのいい男子と帰ってくること』

ということ。

「もう高校生だよ。中学生の頃みたいなことにはならない。独りでも帰れるし、か、彼女ができるかもしれないし………大丈夫」

頭の中を過ったのは兎みたいな美山さんの可愛らしい笑顔だった。

「海はその子を必ず守れるの?」

キッチンで洗い物をしながら母は言う。

「守る!近くの合気道教室通ってるだろ。もうすぐ黒帯貰える。母さんも、僕が守るよ!」

「解ったわ。あ、オーブンそろそろね。かぼちゃプリンつくったの。一樹くんそろそろ来るかな」

「仲直りしたいって顔に書いてあるわよ。海がそうおもうのは一樹くんだけでしょ」

あ、きたきた、いらっしゃい。

「こんばんは、スミマセン遅くに。海、どうしてます?」

「いじけてる。これ、アルミのカップは今度休みの時でいいから。背、伸びたわね。もしもの為に海をお願い。あのひとが亡くなって十年もたつのね。ラガーマンでゴリゴリだったんだから。海は心臓が弱いところも、華奢なところも私ににたのね、わるいとおもってる。海にも、一樹くんにも」

「好きだからいいんです。海のことが」

「解けない魔法でカボチャの馬車で気をつけて帰って。海!途中まで一樹くんのこと送ってあげて。明るいとこまで、ね?」

明るいとこまで。僕が変態にあった区域の境目だ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。 追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。 きっと追放されるのはオレだろう。 ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。 仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。 って、アレ? なんか雲行きが怪しいんですけど……? 短編BLラブコメ。

【完結済】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!

キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!? あらすじ 「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」 前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。 今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。 お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。 顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……? 「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」 「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」 スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!? しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。 【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】 「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」 全8話

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

happy dead end

瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」 シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

処理中です...