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第一章
1.おかしな夢
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「お前にとって、友達の条件って、何?」
木漏れ日のさす窓辺に背を向け、少年は声を掛けた。
(なんだ……?夢……か?)
「何だよ、急に」
(っ!?俺、喋ってねぇぞ!?)
意思に反して口をつき放たれた声は、自分のものではなかったが、やけに心地が良かった。
「いや、友達って、どこまでが友達なのかって気になったからさ」
「そんなもん、何か条件ついたらそれは友達じゃないだろ」
「そりゃそうかぁ」
(何の話なんだ……?)
既視感を覚える光景だが、記憶にあるわけではない。
意思と本体が乖離した不思議な状態ではあるのだが、どうしてか嫌な感じはしない。
「じゃあさ、一個約束してくれよ。
俺達、いつまでも、どんなときも友達だって」
「ああ、約束しよう」
互いの拳を合わせ、二人は微笑み合っていた。
少しずつ、その景色が遠ざかり、フレームアウトしていった。
「──きて──起きてくださいっ!」
「っ!?」
身体を激しくゆすられ、九曜旭は目を覚ました。
目の前で深刻そうな顔をした、部下の北斗優馬は、目覚めた九曜に構わず、身体をゆすり続けていた。
「どうした!?敵襲か?」
「違いますぅ、交代の時間ですー!!」
「……そうか、とりあえず手を離せ」
「はっ!?失礼しました……」
「すまない、どれ程寝ていた?」
「時間を30分オーバーするくらいには、ぐっすりと」
「そうか、悪かったな」
当直室のベッドから降り、むくれる北斗の肩を叩き、九曜は勤務する宇宙観察ルームへと歩いた。
歩きながら、先程までの夢を思い出していた。
懐かしい景色、見覚えのある光景。
だが、話していた彼の名前も、自身が入り込んでいた自分自身の名前も、全く思い出せなかった。
(一体、あれは何だったのだろうか……)
既視感の正体を掴めないまま、九曜は部屋へとたどり着いた。
「お、主任!重役出勤っすねぇ」
銀髪の目立つ、部下の灯珠緒は、九曜をからかった。
「すまんな、変な夢を見ていて、つい寝過ごしてしまった」
「なんすか、それw
北斗のガキが怒ってましたよ、珍しく」
「ああ、肩が外れるんじゃないかってくらい揺すぶられたよ」
「そりゃあ傑作っすね!」
笑いながらモニターを監視する灯は、大仰に身体を伸ばし、欠伸をした。
「んじゃ、主任も来たことだし、俺は帰りますわ」
後はお願いします、と立ち上がり、出口へ歩く灯が、ふと何かを思いだしたかのように振り向いた。
「そういや、主任。こんなメッセージがうち宛に届いてました」
手渡されたメモリースティックには、付箋が貼られ、何やら数字が記されている。
「一応チェックしたんですけど、よくわからなかったので、主任に預けます」
「わからない?どういうことだ」
「多分見てもらうほうが早いと思うんですけど……」
何やら複雑な表情をしている灯に、九曜はそれ以上追求することなく、メモリースティックを受け取った。
「じゃあ、とりあえずお疲れ様っす」
お疲れさん、とドアの向こうへ消える灯に声をかけ、九曜は、今しがた受け取ったメモリースティックをモニターに読み込ませた。
(一体何が──)
モニターに広がる光景に、九曜は絶句した。
木漏れ日のさす窓辺に背を向け、少年は声を掛けた。
(なんだ……?夢……か?)
「何だよ、急に」
(っ!?俺、喋ってねぇぞ!?)
意思に反して口をつき放たれた声は、自分のものではなかったが、やけに心地が良かった。
「いや、友達って、どこまでが友達なのかって気になったからさ」
「そんなもん、何か条件ついたらそれは友達じゃないだろ」
「そりゃそうかぁ」
(何の話なんだ……?)
既視感を覚える光景だが、記憶にあるわけではない。
意思と本体が乖離した不思議な状態ではあるのだが、どうしてか嫌な感じはしない。
「じゃあさ、一個約束してくれよ。
俺達、いつまでも、どんなときも友達だって」
「ああ、約束しよう」
互いの拳を合わせ、二人は微笑み合っていた。
少しずつ、その景色が遠ざかり、フレームアウトしていった。
「──きて──起きてくださいっ!」
「っ!?」
身体を激しくゆすられ、九曜旭は目を覚ました。
目の前で深刻そうな顔をした、部下の北斗優馬は、目覚めた九曜に構わず、身体をゆすり続けていた。
「どうした!?敵襲か?」
「違いますぅ、交代の時間ですー!!」
「……そうか、とりあえず手を離せ」
「はっ!?失礼しました……」
「すまない、どれ程寝ていた?」
「時間を30分オーバーするくらいには、ぐっすりと」
「そうか、悪かったな」
当直室のベッドから降り、むくれる北斗の肩を叩き、九曜は勤務する宇宙観察ルームへと歩いた。
歩きながら、先程までの夢を思い出していた。
懐かしい景色、見覚えのある光景。
だが、話していた彼の名前も、自身が入り込んでいた自分自身の名前も、全く思い出せなかった。
(一体、あれは何だったのだろうか……)
既視感の正体を掴めないまま、九曜は部屋へとたどり着いた。
「お、主任!重役出勤っすねぇ」
銀髪の目立つ、部下の灯珠緒は、九曜をからかった。
「すまんな、変な夢を見ていて、つい寝過ごしてしまった」
「なんすか、それw
北斗のガキが怒ってましたよ、珍しく」
「ああ、肩が外れるんじゃないかってくらい揺すぶられたよ」
「そりゃあ傑作っすね!」
笑いながらモニターを監視する灯は、大仰に身体を伸ばし、欠伸をした。
「んじゃ、主任も来たことだし、俺は帰りますわ」
後はお願いします、と立ち上がり、出口へ歩く灯が、ふと何かを思いだしたかのように振り向いた。
「そういや、主任。こんなメッセージがうち宛に届いてました」
手渡されたメモリースティックには、付箋が貼られ、何やら数字が記されている。
「一応チェックしたんですけど、よくわからなかったので、主任に預けます」
「わからない?どういうことだ」
「多分見てもらうほうが早いと思うんですけど……」
何やら複雑な表情をしている灯に、九曜はそれ以上追求することなく、メモリースティックを受け取った。
「じゃあ、とりあえずお疲れ様っす」
お疲れさん、とドアの向こうへ消える灯に声をかけ、九曜は、今しがた受け取ったメモリースティックをモニターに読み込ませた。
(一体何が──)
モニターに広がる光景に、九曜は絶句した。
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