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八話 温泉にて
しおりを挟む子鬼のトトンガさんやノノホカさん、人間のノブナガさん。
彼らと別れ、オールドエデンに帰り、布団に寝かされた。
与えてもらったこの家。本当に居心地がいい。まさに極楽。
「また夜がくるのですね」
「この家は寒くないか?」
「ええ、とても暖かい」
ナキの温度がなくても、もう眠るのは怖くない。
しかし触れていたいのだ。恋情とはそういう、我が儘なものです。
私はそれでも願わずには、せずにはいられない。
「……赤鬼様も布団にお入りください」
「そうだな」
何もせずただ二人、布団の中に。
大きな物だというのに赤鬼様の身体ははみ出しているようだ。
触れ合うことなく朝を迎える。
「願いはあるか?」
「温泉とは――?」
「この家は風呂がついている、案ずるより産むがやすし、だな」
風呂には湯が入れられていた。これは罰ではなく褒美。腕先だけいれれば確かにしんわりと温かさが伝わる。
「ノブナガさんがおっしゃっていた極楽温泉とは?」
「煩雑しているかもしれないし、案内は必要だろうな」
昨日と違い川ではなく閻魔殿へと赴いた。
足がしっかりとは動かず最初から車椅子を使う。
そこになら案内できる鬼がいるかもしれない。
あの頃と変わらない閻魔殿がそこにそびえたつ。
中に入ると広い空間と大量の紅い柱。
今代の女性閻魔様が鬼たちの前に立ち朝礼をしていた。
「人の心を晴らすが鬼、今日も拷問に手を抜かず――?」
こちらに気付いた閻魔様は話を中断して、私の前へと移動した。今代の閻魔様は小さく足も遅いようだ。
「シノガタ様、どういったご用件でございましょうか?」
「ナキ様がここなら昨日の話に出た温泉について分かるものがいるだろうと」
「あー!!」
昨日の子鬼がこちらをゆびさした。こうも早く再開するとは。こちらも手をふった。
「お知合いですか?」
「昨日、お世話になりました――温泉の案内を彼らに頼めないでしょうか?」
「オイラは閻魔様さえよければ全然いいっすよ」
「俺も、閻魔様が決めたことには従います」
閻魔様は今日の雑務はしなくていいのでシノガタの案内につくようにとおっしゃっていただけた。
「これ、かなり重要な役目だよな――まだ勤務1年目なのに」
「案内するだけじゃん?」
「お前本当に分かってねぇのな……まぁ、シノガタさんが良ければいいか」
こうして閻魔様の許可も出たので外へ。
【たくしぃ(タクシー)】という乗り物で極楽温泉へと向かう。
少し遠いので乗って一刻ほどかかると。
「お世話になります……その、赤鬼様は身分が高いのでしょうか?」
「俺か? 鬼としては最上位の身分にいる、俺より上となれば閻魔ぐらいなものだろう」
「鬼にも身分差がある、と」
「上になるほど責任とかそういうの強くなるから、オイラほどほどがいいな」
「身分が上がると拷問させてもらえるし給与も上がるけど、極寒だったり激熱の環境で拷問しなきゃなんです」
確かに私がいた檻は極寒だった。そこで仕事をするというのはまだ弱い鬼たちには難しいのだろう。
こうして温泉についた。
まずは【男湯】と書かれた場所に入り服を籠にいれて裸に。
さらに奥へ入れば巨大な風呂が。
「こうやってまずは全身をお湯で軽く洗います」
「こうですか」
「で、こうやって全身を入れます」
「いえーい」
ザブン!!飛び込むノノホカさん。
「バカ!! 温泉に飛び込むなよ!!」
「シノガタさんも早く入らないと風邪ひくよー」
ゆっくりと身体を入れてゆく、温かい。
身体が少しずつ強くなっているような、治っているような。
温かさに包まれる、ナキさんも入った。
「子鬼たち、礼を言う」
「そんな大層なことしてないですって!!」
「いや、十分だ」
ナキが笑うところを地獄に落ちてから初めて目撃した。
子鬼たちに礼をいいたいのは私のほうだ。
好いた者の笑った顔を見ることができた。
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