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十九話 番犬
しおりを挟む終了を告げる鐘の音が鳴り、掃除を終えて帰路に。
「犬神さん、家に――」
「きている」
「へ?」
「とにかく外へ出よう」
犬神さんを追いかけて教室から廊下へと足を運んだ。
何故か教室の中にも犬神らしき人物を見かけた気がした。しかし今は出て行ったはずの犬神を追いかけようと決めた。
校庭にいたのは、耳のない巨大な犬のような姿をした何か。正直、怖い。何ですかあれ。
毛も生えていないし陶器のような肌。目と呼べる器官さえ見つからない。
今まで習った妖怪とは遠く離れた存在と呼べる。
「我ら時の番犬テンダロス」
「犬神さん……と同じ妖怪ですか?」
「そうだ、そして我らの役目は世界を終わらせないこと」
「世界を終わらせない?」
「未来を見たり過去に赴いたり、そうして世界を壊そうとする者から世界を護る」
犬神さんは人の姿なままで同族と対面した。
「俺はこの世界のテンダロスではない」
「ここへ赴いた理由などお前自身が最も知っているだろう」
「異物として排除にきたとお見受けする」
「へっ!?」
口をあけた名も知らぬテンダロス、獣が狩ろうとしている動作。
思わず犬神を突き飛ばした。
二人して地面に伏せる形に。
しかし、思ったような痛みに襲われることはなかった。
何が起きたのかは目を開き気付いた。
惚れた鬼が立っているのだ。
「シノガタに傷をつけさせるわけにはいかない」
ナキがテンダロスの牙をとめていた。鬼の怪力は知っていたが、あのような化け物ですらとめられるのか。人間が鬼に逆らえないのも当然だろう。
「我らが目的はシノガタではない、同族だけだ」
「犬神が傷つけばシノガタが悲しむ故、口も手も出させてもらおう」
「鬼ごときがテンダロスに挑むというのか」
犬神が無茶だと叫ぶ。それは、何も知らぬ同族に対しての言葉だと思い知らされた。
トゲのついた金棒(かなぼう)でテンダロスの頭を吹き飛ばすナキ。
倒れるテンダロスだが別の個体が現れた。
「……一匹潰れたが、まぁ、良い」
「まだやるか?」
「やめておく、だが鬼よ、この世界は我らテンダロスの恥ゆえにいつ消えてもおかしくないことを忘れるでない」
尻尾をまいて逃げた、尻尾かどうかはさだかではないがぐるぐると身体をねじりながら亜空間へと消えたのだ。
「犬神さんは、消えるつもりだったのでしょうか?」
「この時代の地獄へ赴いてから、こうなるのではとは感じていた」
「……ナキさんに怪我は?」
赤鬼というだけあって全身が赤いと血が流れても分からない。
「ない、テンダロスの牙ごときで俺に傷はつかん」
「勇ましさにますます惚れてしまいそうでした」
「共にいるのが許されるのはわずかな間。今だけは……すべて全力で応える」
ニエさんが校庭に走ってきた。
「ねぇ、アタシの写真を誰か見なかった!?」
「写真……とは?」
「形は黄金で出来た時計なんだけど――」
「私は存じ上げませんが犬神さんは?」
「今日なくしたとあれば、真の姿に戻り過去を見て探すことはできる」
「どうせもう見慣れたので彼女を助けてあげられませんか?」
「……聞き届けよう」
犬神さんはテンダロス本来の姿となり、口を開いた。
「教室の、ゴミ箱の中だ」
さきほど掃除したゴミの入った箱を覗けば金色の物体。
ペンダントと呼ばれたそれを開くとなんともおかしなもの。
ニエは他の女性と巨大な乗り物。ロボットに乗っていた。
「アタシの友だちなんだ……見つけてくれてありがとね、犬神」
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