地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

文字の大きさ
21 / 26

二十一話 ヘンリー・フィッシャー

しおりを挟む

 阿鼻地獄にて、面会を申請した。
 近づき過ぎてはいけないことなど決まりは多くとも話ができる。
 また一歩、私のまわりに関する謎に少し近づける。

 また例の子鬼たちに少し案内してもらうことに。

「阿鼻の面会ってオイラ初めてみる」
「まぁ普通は会いたくないクズしかおちねぇもんな……」
「トトンガみたいにロリ鬼グッズ集めてるだけじゃ落ちないもんな」
「こんな大仕事で性癖をバラすなよ」

 閻魔殿からごつごつした灰色の岩ばかりの地面を徒歩で移動する。
 現れた朱色の門の向こうに、赤鬼二人に掴まれた男が見えた。
 彼がヘンリー・フィッシャーだと紹介される。

 金色巻かれた毛に青い瞳と白い肌。

「……う、ぅ」
「初めまして」
「ぁ、ぐ」

 阿鼻地獄だけあってヘンリー・フィッシャーは喋れる気配がない。
 目もあわないし正気ではないのだろう。言葉になっていない嗚咽。
 けれど、何か妙に――懐かしいような、愛しいような。

 彼を抱えた鬼が告げる。

「時間だ」
「え、もう!?」
「……阿鼻の罪人と面会が出来ただけでも大ごとだからな」

 彼の罪状が私の村を全焼させたことなのは間違いない。
 怨んではいる、なのに行かないでくれと魂が叫ぶのだ。
 あれほど復習に燃えていた心で何故、彼に。

「待って……!!」

 門の向こうへ足を踏み出そうとした瞬間、赤鬼に掴まれた。
 子鬼たちも前に出てとおせんぼうしている。
 この先に行ってはいけないと。

「阿鼻へ足を入れたら重罪になっちゃうよ!!」
「俺たち、あんたを呵責したくねぇよ!!」

 村を焼いた主犯があの男だというのなら、私は怨んでいなければおかしい。理屈はそう。でも違う。何かどうしても愛しくて。

「ナキさん、彼と私の間は――本当は何があったのですか!?」
「今まで調べたことに嘘などない、お前の村はアイツに燃やされた」

 復讐心で動いた結果、赤鬼から千年罰を受け続けた。
 それも彼のせいだとしても何故か彼をどうにか、どうにかと。
 異世界からきて罪をわざわざ犯した理由がある?

「ナキさん、彼を阿鼻よりはマシな箇所に移せませんか……っ!!」
「裁判をすることは可能だ。しかし、この千年を地獄一番の責め苦を受けつづけた男を助けようとしても、人としての言葉も心も壊れているだろう」

 もう一人助けてくれと叫ぶ者が近くまできた。
 見覚えがある、隣村の村長。
 石を投げたくなるぐらいに、自分の怒りが燃えているのが分かった。

「『死ね、嫁を苦しめた罰だ』――え?」

 私は確かに隣村を憎んでいたが、殺されたのは母や妹や弟であって嫁ではない。
 ニエは隣村に住んでいいたようなので彼女を苦しめていた可能性は確かにある。
 知らないのに、確信している。

 彼はニエを洞窟に閉じ込めて子供を産ませようとしていたのだ。
 嫁としてではない、ただそれだけのために生かされ虐げてきた。
 幼い彼女を縄で縛り付け、年齢がいくまで待っていた。

「思い出した、違う、これは」

 あふれ出る家族との思い出、頭が割れるような痛みに耐えながら記憶が戻ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

陛下の失われしイチモツをみつけた者を妃とする!………え、ヤバいどうしよう!?

ミクリ21
BL
主人公がヤバいことしてしまいました。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

処理中です...