地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

文字の大きさ
22 / 26

二十二話 家族

しおりを挟む

 奈良時代の山奥、山菜をとって我が家に帰った。

「こんなに遅くならないでよ!!」

 彼女はトミ、私の妹でしっかり者。
 さらに弟のユバとエモンもまだ起きていた。
 末の妹シュウカも泣いてしまい、頭を撫でる。

「すみません、でもほら!! こんなに山菜が取れましたよ」
「これだけあれば母様の病気も治るかもっ」
「ゴホッ――アタシより、お前たちが食べておくれ」
「しっかり食べて治してよ! 家のことならアタシらに任せてさ」

 翌日は山菜と魚を交換してもらうために隣村へ。
 道中、川で女性が倒れていたのだ。やせ細っていたその身体に事情があると見受けて我が家に連れ帰った。具合が良くなった母、妹、弟たちは助けようとしてくれた。

「綺麗な人だねー」
「でも、こんなに痩せてる……隣村って魚がとれなくなってたのかな」
「これは――!!」

 腕と足にアザ、囚われていたのだろう。何か重罪でも犯したのか、しかし事件について何も聞いていないのもおかしい。隣村で女がそこまでの事件を起こして耳に入らないことなどあるのだろうか。


「……う?」
「ああよかった、目が覚めた」
「お名前はなぁに?」
「アタシは、ニエ――です」

 彼女は隣村に産まれ、長女は村長の子を産むため一生を洞窟の牢で過ごす決まり。
だが牢のカギをかけ忘れたので外へ逃げた。
川へたどりつき、飛び込んで死ぬつもりだったと告白してくれた。

 私は激怒し、近隣の村人にもこれを話した。
 そして村で娘を可愛がることとなり、嫁として正式に決定することに。
 隣村の村長がやってきたが追い返した。あれは私の嫁だと。

「生贄をささげねば大変なことになるのだ! 返してもらおう!」
「私の嫁に手は出させません!」

 村人たちが総出で、たった一人でやってきた村長を追い出した。
 隣村に話を聞けばニエが生きていると聞き驚いていた。
 さらに、その内容が村長の子を産ませるためということも聞いていないと。

 洞窟には神様がいて捧げているのだと伝えられていたのだ。
 
隣村の村長は同じ村の者たちから追い出されたらしい。


私の村に掟として結婚式をして夫婦になった夜。

「その、夫婦になるとはそういうこともするのです――私で良いのですか?」
「あなたさまの子を為すことに辛さなど微塵もございません」

 夫婦になり可愛い子供たちを五人も産んでもらった。
 年老いて孫が何人も産まれても、いつまでも仲が良く、彼女は私が死ぬ時に笑っていた。
 幸せをくれたアナタ様がどうか極楽へ行けますようにと願ってくれたのだ。



―――


 家の中で目を覚ました。ナキも子鬼たちも心配そうに覗きこんでいた。


「嫁や子供たちの記憶は一体?」
「……異世界の記憶だ、ヘンリー・フィッシャーが来なかった世界」
「テンダロスに近づくとこういうことあるんだよなぁ、オイラ初めてみた」
「夢っていうか、テンダロスが元いた異世界と記憶が混ざることがあるんです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

陛下の失われしイチモツをみつけた者を妃とする!………え、ヤバいどうしよう!?

ミクリ21
BL
主人公がヤバいことしてしまいました。

届かない「ただいま」

AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。 「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。 これは「優しさが奪った日常」の物語。

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

処理中です...