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二十二話 家族
しおりを挟む奈良時代の山奥、山菜をとって我が家に帰った。
「こんなに遅くならないでよ!!」
彼女はトミ、私の妹でしっかり者。
さらに弟のユバとエモンもまだ起きていた。
末の妹シュウカも泣いてしまい、頭を撫でる。
「すみません、でもほら!! こんなに山菜が取れましたよ」
「これだけあれば母様の病気も治るかもっ」
「ゴホッ――アタシより、お前たちが食べておくれ」
「しっかり食べて治してよ! 家のことならアタシらに任せてさ」
翌日は山菜と魚を交換してもらうために隣村へ。
道中、川で女性が倒れていたのだ。やせ細っていたその身体に事情があると見受けて我が家に連れ帰った。具合が良くなった母、妹、弟たちは助けようとしてくれた。
「綺麗な人だねー」
「でも、こんなに痩せてる……隣村って魚がとれなくなってたのかな」
「これは――!!」
腕と足にアザ、囚われていたのだろう。何か重罪でも犯したのか、しかし事件について何も聞いていないのもおかしい。隣村で女がそこまでの事件を起こして耳に入らないことなどあるのだろうか。
「……う?」
「ああよかった、目が覚めた」
「お名前はなぁに?」
「アタシは、ニエ――です」
彼女は隣村に産まれ、長女は村長の子を産むため一生を洞窟の牢で過ごす決まり。
だが牢のカギをかけ忘れたので外へ逃げた。
川へたどりつき、飛び込んで死ぬつもりだったと告白してくれた。
私は激怒し、近隣の村人にもこれを話した。
そして村で娘を可愛がることとなり、嫁として正式に決定することに。
隣村の村長がやってきたが追い返した。あれは私の嫁だと。
「生贄をささげねば大変なことになるのだ! 返してもらおう!」
「私の嫁に手は出させません!」
村人たちが総出で、たった一人でやってきた村長を追い出した。
隣村に話を聞けばニエが生きていると聞き驚いていた。
さらに、その内容が村長の子を産ませるためということも聞いていないと。
洞窟には神様がいて捧げているのだと伝えられていたのだ。
隣村の村長は同じ村の者たちから追い出されたらしい。
私の村に掟として結婚式をして夫婦になった夜。
「その、夫婦になるとはそういうこともするのです――私で良いのですか?」
「あなたさまの子を為すことに辛さなど微塵もございません」
夫婦になり可愛い子供たちを五人も産んでもらった。
年老いて孫が何人も産まれても、いつまでも仲が良く、彼女は私が死ぬ時に笑っていた。
幸せをくれたアナタ様がどうか極楽へ行けますようにと願ってくれたのだ。
―――
家の中で目を覚ました。ナキも子鬼たちも心配そうに覗きこんでいた。
「嫁や子供たちの記憶は一体?」
「……異世界の記憶だ、ヘンリー・フィッシャーが来なかった世界」
「テンダロスに近づくとこういうことあるんだよなぁ、オイラ初めてみた」
「夢っていうか、テンダロスが元いた異世界と記憶が混ざることがあるんです」
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