地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

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二十五話 世界

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 第二裁判は世界中の人々が集まった。

「っていうか僕ら天使は地獄で罪人に拷問するっていうことも反対なの!!」
「死者は眠るものであって、魂を責めるなんて――」
「あげくの果てに世界を救ったヒーローにする仕打ちじゃない!!」

 天使たちからは怒りの声。
 彼は世界を救いにきた救世主、なのに拷問をしたなど悪魔だと。
 悪魔というのは海外でいう怨鬼のようなもの。

「悪魔の俺様はさー、地獄に落ちた悪人をざまぁみろってボコボコにすんのよ」

 だから、彼に噛みついたりしない。
 日本の地獄と違って好き勝手に暴れるのが悪魔らしい。
 もしもこれが悪魔の地獄であるなら、あったとしてせいぜい氷漬けにされて噛まれる程度。

 昔からいる鬼たちが意見を出した。

「これが俺たちの仕事だ」
「決まったからには断罪せねばならぬ」
「地獄とはそういう場所だ」

 今まで世界中がどうして彼に手を出せなかったか。
 テンダロスという化け物すら一撃で頭を消し飛ばす。
 あの世で最強の妖怪とすら言われているのが、鬼。

 しかし彼らは決まったことを行うのみ。

 つまりは結局のところ今の、女性閻魔大王に従う。

「3代目閻魔大王の名において新たなる判決を下す、この千年間にて彼の罰を終了とする!」

 こうしてヘンリー・フィッシャーの第二裁判に決着がついた。
 勿論彼の減刑に反対する者だって多くいるが、そんな数えるほどの者の声は歓声にかき消された。

「ヘンリーさん!!」
「……」
「私は、あなたの祖父ではないかもしれない――でも、その身体には私の血筋が流れていることだけは確かです!!」

 もう動けない彼だが、極楽側も急には極楽に迎えられないそうだ。
 特例とはいえ地獄の刑罰が終わったものはオールドエデン、今私が暮らす村。
 ここでしばらくは過ごしてからという規約があると。

「ヘンリー、ここが私の家ですよ」

 だから私の家に連れて帰った。
 はるか遠く、家族を犠牲にして世界をとった彼。
 他の家族はもう転生しているのだが、嘆くだろうか。

「……俺は、この世界は近いうちに消えると思っている」
「え?」
「番犬、テンダロスたちがここまで巨大な改変をいつまでも放置したりはしない」
「世界の改変は成功した、のでは――?」
「また改変される、そうなれば俺たちが出会ったことすらなかったことになりかねん」

 鬼との恋が叶わない本当の理由。
 確かに彼は一度も鬼と人だからなどとは語らなかった。
 そんな生易しい理由ならばまだ、ともにいてくれと、その胸に縋ることができたのに。

「ようやく、彼を救えたのに……」
「ただ世界が消えるだけ、救った事実まで変わらない」

 鉛筆で書いた文字をいくら消しても、一度書いた事実は消えないように。
 彼がこうしてこの世界にやってきたこと、千年間の拷問をされ続けたこと。
 世界が消えても何も消えることはないと、嘘のつけぬ鬼は語りかけてくれた。
 
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