25 / 26
二十五話 世界
しおりを挟む第二裁判は世界中の人々が集まった。
「っていうか僕ら天使は地獄で罪人に拷問するっていうことも反対なの!!」
「死者は眠るものであって、魂を責めるなんて――」
「あげくの果てに世界を救ったヒーローにする仕打ちじゃない!!」
天使たちからは怒りの声。
彼は世界を救いにきた救世主、なのに拷問をしたなど悪魔だと。
悪魔というのは海外でいう怨鬼のようなもの。
「悪魔の俺様はさー、地獄に落ちた悪人をざまぁみろってボコボコにすんのよ」
だから、彼に噛みついたりしない。
日本の地獄と違って好き勝手に暴れるのが悪魔らしい。
もしもこれが悪魔の地獄であるなら、あったとしてせいぜい氷漬けにされて噛まれる程度。
昔からいる鬼たちが意見を出した。
「これが俺たちの仕事だ」
「決まったからには断罪せねばならぬ」
「地獄とはそういう場所だ」
今まで世界中がどうして彼に手を出せなかったか。
テンダロスという化け物すら一撃で頭を消し飛ばす。
あの世で最強の妖怪とすら言われているのが、鬼。
しかし彼らは決まったことを行うのみ。
つまりは結局のところ今の、女性閻魔大王に従う。
「3代目閻魔大王の名において新たなる判決を下す、この千年間にて彼の罰を終了とする!」
こうしてヘンリー・フィッシャーの第二裁判に決着がついた。
勿論彼の減刑に反対する者だって多くいるが、そんな数えるほどの者の声は歓声にかき消された。
「ヘンリーさん!!」
「……」
「私は、あなたの祖父ではないかもしれない――でも、その身体には私の血筋が流れていることだけは確かです!!」
もう動けない彼だが、極楽側も急には極楽に迎えられないそうだ。
特例とはいえ地獄の刑罰が終わったものはオールドエデン、今私が暮らす村。
ここでしばらくは過ごしてからという規約があると。
「ヘンリー、ここが私の家ですよ」
だから私の家に連れて帰った。
はるか遠く、家族を犠牲にして世界をとった彼。
他の家族はもう転生しているのだが、嘆くだろうか。
「……俺は、この世界は近いうちに消えると思っている」
「え?」
「番犬、テンダロスたちがここまで巨大な改変をいつまでも放置したりはしない」
「世界の改変は成功した、のでは――?」
「また改変される、そうなれば俺たちが出会ったことすらなかったことになりかねん」
鬼との恋が叶わない本当の理由。
確かに彼は一度も鬼と人だからなどとは語らなかった。
そんな生易しい理由ならばまだ、ともにいてくれと、その胸に縋ることができたのに。
「ようやく、彼を救えたのに……」
「ただ世界が消えるだけ、救った事実まで変わらない」
鉛筆で書いた文字をいくら消しても、一度書いた事実は消えないように。
彼がこうしてこの世界にやってきたこと、千年間の拷問をされ続けたこと。
世界が消えても何も消えることはないと、嘘のつけぬ鬼は語りかけてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる