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36話 絶望が覗いてくる
しおりを挟むこの宇宙船を目が覗いてきている。
「えっ」
「私よ、ミコ・テンシちゃん」
離れて顔が見えたがいったい何メートル、いや何キロある?
それ以上大きな単位を俺は知らない。
だから計り知れない恐怖を見てしまったのは確かだけど、意外とパニックにならんな。
「お前は何がしたいんだ?」
「アタシはねぇ、愛を育てるの」
「あ、愛?」
予想外の言葉きたな、でも化け物ほどそういうの望むよな。
幼馴染と見に行った幼児向けアニメで敵が愛を集めるシーンあった。
ようするに愛されたいって敵だったわけだが、今回は愛されたい、とは違いそうだ。
「愛ってね、時間をかけるほどに強く、重くなるの、地球人の愛は特に力を持つわ」
「……ミコさんは愛を育てて何を?」
「終わりの時にぜーんぶ分かるわ」
煙になって消えていくミコ・テンシさん、うん、あれ味方じゃない。
直感、推理、目的を愛なんていう奴、俺のためとか一切言わない。
クロノの奴を待って合流するのが得策か?
『かーな』
ロボットが近づいてきた。
それこそ保育園や幼稚園時の玩具みたいな見た目。
大きさはちょっと大きくて1メートルはある、子供みたいだな。
「えっと?」
『カナ、あそぼ』
「お前も俺のこと、『カナ』って呼ぶんだな」
『クロノ、遊んでくれない、だからカナあそんで』
「あー、えっと、問題でーす、俺の名前は?」
『はいはい!秋田カナ!!』
顔っぽい画面に『秋田カナ』と出している、苗字まであるのか。
いやむしろ別人の身体に入っちまったのか?
可能性としちゃありうるな、
「秋田カナって何歳?」
『データにアクセス……15歳!!』
「若いな俺!?」
鏡見た時は美少女だなって思ったけどそんなに!?
『カナ抱っこ』
「え?」
『お部屋まで一緒にいこーよ』
「……俺に持ち上げられ」
あげてみれば想像以上に軽かった。
簡単で、でもなんか、何だろう。
この子の顔が泣いてるのが異様に気になる。
『抱っこだ……これすき』
「お、おう? ロボットなのに好きなのか抱っこ」
『僕ロボットじゃないよ』
「え?」
『プーって呼んで!!』
「いいのかプーで!?」
まぁまぁ俺の感覚だと侮辱の言葉なのだが、本人が呼べという。
この場合はむしろ呼んだほうがスムーズだよな。
いや正式名称は何だ?
「本名とか知りたいなー、なんて」
『んぎ、g、ぷぅグ』
「聞き取れない!!」
『だからプーで』
「プー……くん、かな?」
『クロノはカナを守るの忙しいからかまってくれないの』
「んー、君は子供かい?」
『そうだよ子供……だったよ』
「だった?」
『もっと遊ぼ?』
扉があいてクロノくんが出てきた。
「んぎ、g、ぷぅグ!?」
『あそぼーよ、もっと』
「寝てろと言っただろ!!」
『ひっ!?』
「まだ子供なんだろ? 怒鳴るのは違うんじゃねーの?」
クロノの触手がプーを握った。
「そんな破損状態で動き回ったらまた壊れちまう、やめろ……」
『アアアアアアボ!!』
急にプーくんの様子がおかしくなった。
「えっ」
『あそぼーよ、あそぼーよ、あそ、あそぼーよ』
「だから寝てろって言ったんだクソがっ!!」
「☆クロノ!?☆」
慌ててプーくんをつれてどこかに行った。
ヒコさんと二人で残る。
先ほどの事件と、今のできごとから推察するに、多分悲しい事実が、何かある。
「ヒコ・キララさん、少し話しましょう」
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