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8話 地獄が思っていたのと違う
しおりを挟む『皆さまおはようございまーす』
地獄に出勤したらスピーカーから挨拶が
時間きっちり来る必要は無いが放送までに着ていればセーフらしい
理由はと言えば
『現在地獄の最下層での気温が大変低くなっていますので注意して下さい』
毎日同じ気温ではないらしく今日はやけに寒い
そこで冬用の制服を持ちに行って戻ってきた
階段は相変わらず暗いし上下も見えず不気味と言えば不気味だが
「お疲れ様です」
「ありがとなー」
悪魔たちは別に問題行動を起こすでもなくお茶を貰っていくし
そもそも彼ら・彼女らがくるペースは20分に一人ぐらい
思ったより人数が少なくはっきり言って暇である
「でも時給いいしなぁ」
「あら何かあったのかしら?」
「女性悪魔さんに質問なのですが」
「何でもどうぞ」
「ここで何か別の事もしていたら怒られますかね?」
「彼女つれこんでキャッキャでも?」
「地獄でデートするほどの鋼の精神は持っていません」
「あらそう?この下の階だと彼ピと一緒に仕事してる人いるわ」
本人もだが彼ピのメンタルも強そう
「単純に暇つぶしにパソコンで小説とか書いていたら怒られるかなと」
「それぐらいなら平気だと思うわ」
「仕事なのに?」
「そもそもこの階層にいる悪魔なんて数が少ないし暇でしょアンタ」
「確かにそうですね」
「あと出来た話とかついでに冊子として置くのもありよ」
「何で?」
「地獄って著作権の都合で図書館とかおけないから」
「著作権って地獄にもあるのですね」
「バックヤードの天使に聞けばいいと思うわ」
少し現場を離れて制服や支給品がある場所へ
何かあれば天使までご連絡下さいの旗
レジのような場所にいた人に話しかけた
「すみません」
「何でしょう」
「実は―――――」
今まで起きた事を説明した
「ああ構いませんよ」
「本当にそうなのですね」
「ノートパソコンとプリンターの支給品でしたら家電コーナーです」
こうしてのーとパソコンとプリンターを運んだ
とても軽いので一人で持ち運んで『休憩所』へ
悪魔が一人待っていた
「すみませんお待たせして」
「休憩所にミラーボール持ち込んだのはいたけど、何?」
「いやその方が分からないですよ」
ミラーボールは古の時代の上空でキラキラする玉の事だ
地獄であんなものを何に使うというのだろうか
刑務所で囚人たちが刑罰してる中でダンスも中々のメンタルだ
「パソコン?他の内職でもするのー?」
「作家なので暇つぶしに小説でも書いて冊子を配ろうかと」
「へー初めてだなそういう奴は」
「大変おまたせいたしました」
入れたお茶を渡していると次の悪魔が登ってきた
皆がパソコンとプリンターを見ていく
確かに休憩所にあれば目立つし何故と思うのは当然だ
「仕事の合間に暇つぶし用に」
「何でゲームとか持ってこないんですか?」
「あの世に存在する事を初めて知りました」
「でも僕しってるんですよノートパソコンでも『ソリティア』出来るって!」
ドヤ顔している
「今のパソコンにソリティア入ってるかはともかくインストールすれば出来はするかと」
「いんすとーる?」
他の悪魔が説明してくれたのだが
太古の昔からずっと地獄にいる者たちも多く
テレビですら悪魔たちにとっては最近出来たものらしい
「でも新しい物とか好きな悪魔はスマホとか詳しいよ」
「自分この仕事が終わったら買いに行こうかと思っています」
「俺がそれ付き合ってもいいけど」
「悪魔が簡単にここから出られるのですか?」
「羽が重いけど町へはいける」
「成程?」
「あと地獄その物に町もある」
「えっ」
こうして案内された『地獄の町』はごく普通に建物が並び
天国と違って道路があり空を飛ぶ人々が少ない
車が普通に走っている
「もっとこう奴隷市場みたいな恐ろしい雰囲気かと」
「昔は確かにもっと恐ろしい雰囲気ではあったけどさ」
「そうなのですね」
「ヤクザでも事務所は綺麗じゃん?」
「確かにそういう印象あります」
「少しばかり治安は悪いがな」
「財布とか盗む人がいる―――とか?」
「いや唐突に切りかかってくる」
来た事を少し後悔したが
滅多には無いらしく怒らせるような事さえしなければいいらしい
スマホを売っている店もあるので連れて行かれた
『いらっしゃいませ』
「この人が死にたてでスマホをご希望だ」
『ご職業などは?』
「地獄でお茶を配るバイトを」
『階段管理と―――何か機種に希望は?』
「地獄でも通信可能なおすすめの奴がある」
「それで」
「即決!?」
「値段がよほど高いなら変わって来ますが長い間この街にいるのも危なそうですし」
さっさと手続きして地獄・天国のどこでも使える機種にした
月々1万円かかるが最初に三日筋肉がおススメしたプラン
地獄のショップなので地獄で分からない事も聞ける
「天国で地獄の事を聞くの嫌がられたりするからな」
「こっちに来てよかったですよ」
「地獄って働いてすぐ辞めちまう奴が後を絶たねぇから」
「階段で特に辞めたくなるような出来事は無かったですけど」
「天国にはいくらでも楽な他の仕事あるから」
悪魔たちがココに普通の人間がいるのを珍しいと見ている
治安が悪いとは聞くが珍しいからといってからんで来た悪魔は今の所いないし
思ったよりも平和ではあった。
『天使が来たぉぞ!!』
「は!?」
飛んできた天使に周りの悪魔たちはひれ伏していく
国王陛下でもやって来たのかという勢いで
自分も周りが頭下げているので空気を読み下げておいた
「レディさん?」
「それなら私ですが」
「あの世に来てすぐ地獄に行くなんて何があったのですか!?」
確かに普通の人なら地獄の町へなど行きたがらないだろうが
「現世での職業病でネタになりそうな所には首を突っ込みたくてですね」
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