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9話 スマホが思っていたのと違う
しおりを挟む「帰ってきました」
「おかえり―――はっくしょん!!」
「すみません悪魔の方に案内して貰っていたのもで!!」
すぐに着替えて手を洗って来た
三日筋肉とエンマにスマホを見せ連絡先を交換
上司の天使にも電話してこのスマホにしたと伝えた
「死んでも真面目な奴だな」
「楽しい事に首をつっこむのが大好きでして」
「早死にしてる理由が何となく分かった」
「死因なら普通に病気ですけど」
普通はスマホを立ち上げた瞬間顔のロックかパスコードがいる
でも特にそういうのが無くメイン画面へ
日本ならおおよそ
『携帯会社①A』『携帯会社②D』『携帯会社③S』『携帯会社④R』
だがどれでも無い為に使い勝手が不明
「ホームボタンは無いタイプですね」
「万歩計とか現世だと入ってる事が多いけど天国や地獄だと無いよな」
「現世の時に欲しかった『近い店の特売情報』ってアプリが役立ちそうです」
「へー牛乳が焼けるんだ」
「それで他のアプリだけど」
「話をさえぎって申し訳ないのですが」
「俺もキッチンから聞こえてきた声が心配になってきた」
エンマは台所で紙を広げていた
そこには『ホットサンドメーカー説明書』の文字
しかし先ほどの言葉は謎である
牛乳は焼くものでは無い
「エンマさんそれは?」
「せっかくだから食べてみたくて」
「それはいいが牛乳が焼けるって聞こえて来た気がして」
「説明書にあったよ?」
最初に否定するのはよくないし
もしかしたら本当に牛乳を焼く機能があるのかと自分たちも読む
一般的な下界の説明書と変わりない
『ぎゅうぎゅう焼けます』
の文字
「所でどうやって『ぎゅうにゅう』焼くのかな」
「ぎゅうぎゅうですよ!!」
「え、本当だ」
「天然って言われる事ありませんか?」
「昔からよく言われるかな」
そういえば確かに猫がいる事すら一緒に暮らす段階で言わなかった
サイコパスな感じはしないし本人に悪気は無さそう
これはいいネタが取れそうな予感
「何か企んでないか?」
「作家と同居なんてネタにされるに決まっているじゃないですか」
「俺も漫画家してたから分からんでもないけど」
ハムとチーズを出してくる三日筋肉
いつのまにか冷蔵庫の中身が大所帯並みに充実していた
卵も取り出してお椀に
「ちょくせつ割ると殻が入るかもしれないだろ」
「料理上手な方なのですね」
「無人島にサバイバルした時に先を見通す力が付いたからな」
「漫画家なのに?」
ホットサンドメーカーで作ったサンドを皆で食べながら
買ってきたスマホでレシピを調べた
天国ではいわゆる現世で使うSNSやクッキングアプリが使えない
「慣れるまで時間がかかりそうですねコレ」
「天国では料理アプリなら『ココメシ』だ」
「料理なんて天国も現世も変わらないのでは?」
「火の玉で調理する地獄名物とかの作り方もある」
「火の玉って料理に使えるのですね」
お皿を片づけて
買って来た食洗器に入れてスイッチをON
手がぬるりと出て来て洗っていく
「思っていたのと違う」
「時々あるんだよこういう付喪神みたいな商品」
「便利だし安いからおすすめだよね!」
現世ならホラーだが天獄では普通らしい
服を着る時に手伝ってくれるハンガーなど
妖怪みたいな商品が沢山ありコスパがいいとの事
「職場で今ちょっと寒くて暖かく出来るカイロとか無いですかね?」
「火の玉を持っていくとか」
「あれ温かいのですか?」
お化けと一緒に出て来るイメージがあり
どちらかと言えば寒いのかと思っていた
でもよく考えたら炎であるのだから熱くて当然である
「スマホのアプリで空間だけ温める事も出来るぞ」
「アプリってそういうものでしたっけ?」
「許可さえ下りればビームとかも打てる」
「それ必要あります?」
「天使が暴れる悪魔を相手にする時に使ったり」
「警察が使っている拳銃みたいな役目で?」
「相手を止めるだけだから結構愛用している天使は多いんだとよ」
「電気で止める奴(スタンガン)みたいですね」
人気アプリランキングを調べて1位が
『天国温泉めぐりMAP』
いつの時代も人々は温泉に入りたいらしい
「天国でもサウナとか大人気だから」
「でも現世とあまり変わらないのでは?」
「超豪華だとは聞いてるんだが俺も詳しくはしらない」
「露天風呂とか広さが段違いですから異世界転生する前に1度は行くべきだよ」
異世界転生が前提になっている
しかし温泉が人気というのは本当で
アプリには大量の温泉がこれでもかと記載されていた
「天国で『美肌効果』の文字を見る事になるとは」
「あとはキャンプ地とかのアプリも人気」
「それは現世でもありそうですね」
最近はブームだから旅行アプリぐらいは探せばありそうだ
ホテルや温泉を探すものに比べれば少ないかもしれないが
自分も生前に行っておきたかったと多少しんみりした感情になった。
「ちなみに風呂もアプリで持ち運べる」
「アプリでお風呂を!?」
「だからキャンプでもお風呂に入る人はいっぱいいるんだよね」
「ちなみにキャンプの道具って何処に?」
「デパートで普通に売ってる」
天国の普通はもう分からない事が分かった
さんざん現世と違うものを見てきたのだ
デパートも現世と何か違うとしか思えない
「普通って言われても」
「あるいは通販アプリで買えばいいと思う」
「死んだらスマホが必需品だった件について」
「小説のタイトルみたいだな」
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