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42話 帰還
しおりを挟む「ホンイツー俺らカミノに帰るからまたなー」
「え、急だけど何かあったの?」
別れを告げる為にシャック、レイニー、俺で竜宮城……ニカナ王宮へきた。
確かに昨日グレンディアベア討伐に参加して今日いきなり帰るのは驚くだろう。
ホンイツも理由を聞かないと納得できないぐらい寂しいのかもしれない。
先輩転生者でもあるし隠すような事情でもない。
「魔王が出たから叩かなきゃいけないらしくて」
「ゴキブリのような言い方するんだね」
「似たようなもんだろ? 1匹やってもまだ次がいる」
魔王が復活するには時期が早いはずだが何かあったのかと不思議がるホンイツさん。
ウルフさんから火急な知らせが〈スキルカード〉により手紙として届いただけで、詳しいことは実は俺たちも知らない。
レイニーも、今回の出現が早すぎるという。
「まだ動き出してはいないってウルフの手紙にはあったよね」
「そうですね」
「ジーンズ王国の近くに出現したとも書かれていたわけだけどさ」
「レイニー、魔王の力っていつも変わらない感じ?上がってく?」
「……変わりません」
「瞬殺できる?」
「魔王なら、瞬殺――と、まではいきませんが秒殺程度なら」
「魔王の討伐かー楽しみだなー」
「討伐する気ですか!?」
「いや映画みたいに後ろでポップコーンでも食いながら後ろで見てる」
今までの魔物は現れてすぐにレイニーが瞬殺してくれた。
魔王だとしてもレイニーがいれば何とかなる気しかしない。
確かに過去には多くの犠牲者は出たようだ。その時から戦力は大幅に増えたようだしウルフさんは俺を魔王討伐作戦に加えたがっていた。
人手は欲しいが戦力が本当に足りていないならもっとレイニーに魔王討伐作戦への参加交渉が来ているはずなのだ。
なによりレイニーは俺が見学するとなれば付いてくるしかない。
頼まれていた魔王討伐作戦への参加……少なくとも何かあればレイニーが動ける位置につれていくことが俺の役目な気がしたのだ。
「見学はものすごく離れた場所にして下さいね」
「止めないの!?」
「止めない気でいるのぉ!?」
レイニーは俺がしたいことを叶えるのが今の自分の使命であり、俺が望むなら魔王討伐の見学も止められないのだと困ったように笑った。俺も別にレイニーの邪魔になるようなことをしようとしているわけではない。
俺だって大人で、この世界に召喚された151代目の異世界転生者だ。
「力不足だとしても、本当なら俺も戦うはずだった魔王をこの目で見ておきたいからな」
「ねーねー国王、こいつら早くいなくなってほしいよね?」
「うん」
「100万マル払ってくれたら、僕のスキルで2人をジーンズまで送ってあげるよ?」
「はいはいお金あげるから早く行ってよ」
「またなー!」
ホンイツとは手を振って別れ、俺とレイニー、そしてシャックはニカナの港へとやってきた。短い間だったけどいろいろあったな。また飴とか買いにこよう。
「【スキル:ひきよせ ターゲット ジーンズ・港】」
飛行機のように飛ぶシャックさんにしがみついて、しばらくすればジーンズの港に到着していた。
あまりにも激しくて酔った。
「み、水……レイニー水だしてくれ」
「どうぞ」
「がぼぼ……ごくん、ふぅ」
俺達がここでガゴリグさんの船に乗ってから日は経っていないはずなのに、ジーンズの港は大騒ぎ状態。俺たちが知る港の風景とはすっかり別物になっていた。
魔王が来るから今のうちに遠くへ逃げろとジーンズの人々を乗せた貿易船、客船、漁船が次々に出航している様子。
10年に1度の魔王襲来。そのたびに転生者が討伐部隊を結成し、魔王を倒してきたはずだ。ここ数十年の被害は大したことがなかったハズなのにそこまで怯えているがちょっと不思議だ。
レイニーが瞬殺してくれる、と言っても信じてはもらえなさそう。
「今の時代でも、魔王ってそこまで怖いものかな?」
「人間を踏みつぶしていく存在ですからね」
「遠くに見えるあの白いのが魔王で合ってる?」
ジーンズ王国の方角に見える白い影。
さすが200メートルもの巨体だけあって、これほど距離があっても凄まじい存在感だ。
ここが中世ヨーロッパ風の世界だからなおさら、超高層ビル級のサイズ感は圧倒的。もはや国そのものをを踏みつけているようにすら思える。
今は微動だにしないようだが、あの白い化け物はこれからジーンズの街に向かって動き出す。
「レイニーどうする?」
「……私はカドマツ様をお守りしなければなりません」
「ならもう討伐部隊に加わったほうが早い。ティラノたちが部隊の編成に取りかかってるはずだ」
「今はまだカドマツ様の傍を離れるわけにはいきません」
「じゃあ連れていけば?」
シャックさんの言葉に、2人で顔を見合わせる。
かなり考えた後にまずはジーンズのギルドを訪ねて今この状態を把握しようと頷きあった。
街の中に入ればさらなる大混乱で、ジーンズ王国外へ逃出そうとする人々とすれ違った。
「逃げるっていっても、船もないのにいったいどこへ……」
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