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55話 闇を扱う転生者(後編)
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洞窟の主であるマキナが怒ったので俺もやむなく外に出たが、寒くてろくに動けない。
「俺はこういう、現場に出てくるくせに動けない奴が嫌いなんだが」
「アンタもう洞窟のなか引っ込んでなさいよ」
「だってマキナが家の中で待たれるの嫌で怒ったみたいだし……」
俺が凍えていると、マキナはそんなことないと首を振った。
「友達だと言ったのに協力しないのかと思って」
「【スキル:そうじき】でお前の部屋を掃除して友達の帰りを待っているほうがまだ役に立つだろうよな……」
「カドマツ様は戦闘がまったくできないかたですから」
レイニーが苦笑する。
俺はせめて自分で暖を取ろうと炎のスキルカードを使おうとしたが止められた。
この周辺の木はよく燃える品種なので、調節ができないうちに使うなと。
炎のスキルは初心者に向かない。レイニーに止められるのはもう何度目だったか。
スキルカードでは長い間は持続しないらしく、普通に焚き火して他の皆帰りを大人しく待つことにした。
「もしダンジョン見付けたら解決してきてくれていいからさ」
俺を呼びに戻ってこなくていい、さっさとみんなで解決して戻ってきてくれと伝えた。
シャックだって昔ここにきた時の何百倍も強くなっているのだから、記憶をいじる魔物なんか瞬殺して妹さん連れ帰って紹介してくれと。
今回は洗脳系のスキルが効かないマキナも一緒なので何とでもなるだろう。
1人で森の中に残された俺は、しばらくして腹が減ったので非常食のパンを焚き火で焼いて食べた。5時間経過。
夕方になり、さすがに皆の戻りが遅いと感じで〈フレンド〉のスキルカードで無事を確認することに。
「【スキルカード:フレンド レイニー通信】」
ザザザザザ……という謎のノイズ音が聞こえてきて、いよいよ何かが起きたということを悟る。
他のメンバーにも通信を試みたが結果は同じで、一切連絡が取れない。
ウルフとも。ティラノとも。シャックとも。マキナともだ。
想定していない遭難をした気がする。寒くて焚き火ばかり見ていて気付くのが遅れたが、辺りはすっかり暗くなっている。月は出ていない。
「誰かいますかーッ!!」
大声で叫ぶが、俺の声がむなしく森にこだまするだけで返事は返ってこない。
一応の何かあった時に使う装備は整えてきて良かったと思いつつ【スキル:ライト】で荷物を確認。
レイニーに借りた何でも入る特殊な鞄を背中に背負いスキルカードを手に取り叫ぶ。
「【スキルカード:テレポーター エクスチェンジ!!】」
ティラノさんと俺の座標を入れ替える。ティラノさんなら自分の【スキル:テレポーター】で戻ってくることができるだろうと判断した。
次の瞬間、俺が立っていたのはダンジョンというよりは王宮の中のように見える何やらおどろおどろしい場所だ。
RPG後半に出てきそうなタイプの内装で、髑髏の装飾が無駄に多い。
ティラノとすり替わった俺を見て、ウルフが顔をしかめた。
「カドマツ様。来てしまったのですね」
「だって【スキルカード:フレンド】が使えないし……何があったのか教えてくれ」
「そこに最低の魔物がいます。ちなみにカドマツ様よりははるかに強いかと」
王座のようなデカい椅子に座っている。ペンギン型の魔物。
その背後には巨大な水槽があり、苦しそうな人間たちが何十人も沈んでいた。
シャックの妹らしき少女も、その水槽の中にいるのが分かった。
『初めまして』
人の言葉を話せる魔物。この世界でも、魔物が俺たちと同じ言葉を話すことは珍しくない。だが俺はこの世界に転生してきてから今まで、喋るなら性格がいい魔物としか出会わなかった。
首無し鎧のグラドも、ドラゴンのメレンゲも。カミノ城下町の人々も、しっかりと話ができる魔物はみんないい人ばかりだった。
避難してきた人間に暴力も盗みもしない――相手がしていたら別だが。
しかし俺の推理では目の前にいるのはゴミクズでは言い表せないぐらい最低そうだ。
水槽の中にシャックの姿を見つけ、俺はシャックほどの実力者にいったい何があったのかとレイニーに振り返った。
「あいつそんなに強いのかレイニー」
「……」
「レイニー?」
気が付いたら牛とかを競わせる闘技場に移動させられていた。
「俺はこういう、現場に出てくるくせに動けない奴が嫌いなんだが」
「アンタもう洞窟のなか引っ込んでなさいよ」
「だってマキナが家の中で待たれるの嫌で怒ったみたいだし……」
俺が凍えていると、マキナはそんなことないと首を振った。
「友達だと言ったのに協力しないのかと思って」
「【スキル:そうじき】でお前の部屋を掃除して友達の帰りを待っているほうがまだ役に立つだろうよな……」
「カドマツ様は戦闘がまったくできないかたですから」
レイニーが苦笑する。
俺はせめて自分で暖を取ろうと炎のスキルカードを使おうとしたが止められた。
この周辺の木はよく燃える品種なので、調節ができないうちに使うなと。
炎のスキルは初心者に向かない。レイニーに止められるのはもう何度目だったか。
スキルカードでは長い間は持続しないらしく、普通に焚き火して他の皆帰りを大人しく待つことにした。
「もしダンジョン見付けたら解決してきてくれていいからさ」
俺を呼びに戻ってこなくていい、さっさとみんなで解決して戻ってきてくれと伝えた。
シャックだって昔ここにきた時の何百倍も強くなっているのだから、記憶をいじる魔物なんか瞬殺して妹さん連れ帰って紹介してくれと。
今回は洗脳系のスキルが効かないマキナも一緒なので何とでもなるだろう。
1人で森の中に残された俺は、しばらくして腹が減ったので非常食のパンを焚き火で焼いて食べた。5時間経過。
夕方になり、さすがに皆の戻りが遅いと感じで〈フレンド〉のスキルカードで無事を確認することに。
「【スキルカード:フレンド レイニー通信】」
ザザザザザ……という謎のノイズ音が聞こえてきて、いよいよ何かが起きたということを悟る。
他のメンバーにも通信を試みたが結果は同じで、一切連絡が取れない。
ウルフとも。ティラノとも。シャックとも。マキナともだ。
想定していない遭難をした気がする。寒くて焚き火ばかり見ていて気付くのが遅れたが、辺りはすっかり暗くなっている。月は出ていない。
「誰かいますかーッ!!」
大声で叫ぶが、俺の声がむなしく森にこだまするだけで返事は返ってこない。
一応の何かあった時に使う装備は整えてきて良かったと思いつつ【スキル:ライト】で荷物を確認。
レイニーに借りた何でも入る特殊な鞄を背中に背負いスキルカードを手に取り叫ぶ。
「【スキルカード:テレポーター エクスチェンジ!!】」
ティラノさんと俺の座標を入れ替える。ティラノさんなら自分の【スキル:テレポーター】で戻ってくることができるだろうと判断した。
次の瞬間、俺が立っていたのはダンジョンというよりは王宮の中のように見える何やらおどろおどろしい場所だ。
RPG後半に出てきそうなタイプの内装で、髑髏の装飾が無駄に多い。
ティラノとすり替わった俺を見て、ウルフが顔をしかめた。
「カドマツ様。来てしまったのですね」
「だって【スキルカード:フレンド】が使えないし……何があったのか教えてくれ」
「そこに最低の魔物がいます。ちなみにカドマツ様よりははるかに強いかと」
王座のようなデカい椅子に座っている。ペンギン型の魔物。
その背後には巨大な水槽があり、苦しそうな人間たちが何十人も沈んでいた。
シャックの妹らしき少女も、その水槽の中にいるのが分かった。
『初めまして』
人の言葉を話せる魔物。この世界でも、魔物が俺たちと同じ言葉を話すことは珍しくない。だが俺はこの世界に転生してきてから今まで、喋るなら性格がいい魔物としか出会わなかった。
首無し鎧のグラドも、ドラゴンのメレンゲも。カミノ城下町の人々も、しっかりと話ができる魔物はみんないい人ばかりだった。
避難してきた人間に暴力も盗みもしない――相手がしていたら別だが。
しかし俺の推理では目の前にいるのはゴミクズでは言い表せないぐらい最低そうだ。
水槽の中にシャックの姿を見つけ、俺はシャックほどの実力者にいったい何があったのかとレイニーに振り返った。
「あいつそんなに強いのかレイニー」
「……」
「レイニー?」
気が付いたら牛とかを競わせる闘技場に移動させられていた。
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