57 / 152
56話 vs.イチドペンギン(挑戦編)
しおりを挟む今から闘牛でも始まりそうなコロッセオに飛ばされた。
レイニーたちとは引き離され、俺は今ペンギン型の魔物とたった1人で退治している。
やけに高いところから俺を見下してくるそいつが踏み台にしているのは、闇スキルを操る転生者・マキナが入った檻だ。
『ようこそ。私の名前は【イチドペンギン】です。あなたのお名前は何ですか?』
英語の教科書に載っている例文のような質問。
俺はカドマツであるとだけ名乗った。
そして、何故俺1人をここに連れてきたのかと問う。
『カドマツ様にここの【ルール】を説明させていただきます』
1、参加者2人が揃ったらゲームスタート
2、参加者のうち1人は『人質』として檻の中に入る
3、もう1人の参加者が『挑戦者』としてイチドペンギンに挑む
4、『挑戦者』がイチドペンギンを倒せば『悪夢の水槽』は破壊され、囚われている人々は解放される
5、『挑戦者』はイチドペンギンを倒せなければ檻の中にいる『人質』が『悪夢の水槽』の中に転送される
6、『挑戦者』の死亡、または挑戦者が建物のそとに出たことをもってゲームオーバー
7、イチドペンギンに挑戦できるのはたったの一度、二度目はない
8、この闘技場以外の場所にいるイチドペンギンはただの幻影であり、攻撃しても無駄
9、『悪夢の水槽』は触れた者を中に取り込む仕組み、物理・スキルを問わず攻撃しても中に取り込む
10、参加者が2人以上の場合は『人質』1人と『挑戦者』1人をランダムに抽出、残りは手出し無用
「何で俺は『人質』ではなく『挑戦者』になった?」
『カドマツ様がスキルカードでここに現れた時、あなたがお仲間に向けられた顔がその答えですよ』
確かにウルフは、ティラノと入れ替わった俺に嫌そうな顔を向けた。
レイニーはあまり表情を変えなかったが、状況が好転したときの反応ではなかった。
そして檻の中に入れられているマキナは、俺のことを相手の過去を見るスキルを持つ者だと思っている。
「なんでアイツらの誰かはお前に負けたわけ?」
返事など期待してはいなかったのだが、イチドペンギンは丁寧に説明した。
この場所では【スキル】および【スキルカード】が1種類につき1度きりしか使えない。
なるほど、だからイチドペンギンなわけか。
一撃必殺で倒すか、多種多様なスキルカードで倒しきるしかない。
『過去に私と戦い、そして私に負けたのはシャックという男性です』
俺はこの建物から出ることなくイチドペンギンを倒せれば『挑戦者』の勝ちかと念を押す。
『勿論ですとも』
余裕綽綽とペンギン野郎が俺の質問に答える間にも、俺は脳をフルで回転させる。
向こうは俺とイチドペンギンじゃ相性が最悪であることにはまだ気が付いていない。
勝機は必ずあるはずだ。
『では、面白い物を見せてあげましょう 【トリダシ】』
今の今まで水槽の中にいたはずの知らない男性が突如、俺の目の前に現れた。
月の瞬間、銃声が鳴り響いて彼は倒れ、血だまりが広がっていく。
イチドペンギンの手にはハンドガンがあり、明らかに既製品のベレッタ。
アニメでよく見る警察とかが持っている自動拳銃がこれだ。
「スキル……」
『おや、一般人だと思っていましたが治療系のスキルをお持ちなのですか』
ぼそっとスキル名を小さな声で、イチドペンギンには聞こえないようにつぶやく。
【スキルカード:治療】を使い、撃たれた男性を理療する。
大丈夫ですかと声をかけてもうめき声しか返ってこないが、意識はある。
銃弾は貫通しているが、今のところ命に別状はなさそうだ。
「……俺、頑張りますね」
絶対に助ける、なんて無責任な約束は俺にはできない。だが全力は尽くしたい。
151人いるという歴代異世界転生者の中で俺は、俺より他にイチドペンギンとの戦いに有利なスキルの持ち主は思い浮かばないのだ。
俺は意を決して深呼吸すると、声の限りさけんだ。
生き抜くための叫びを上げる。
「【スキル:トラウマ】!!!」
俺が召喚したのは虎で馬なぬいぐるみ。しかしトラウマ人形の下半身は本物の馬のそれに近くなり、人ひとり乗せて走れそうなほどに大きくなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる