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11話 お風呂

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「ふー……」
「温度どうだ?」
「僕は裸なんですが!?」
「いいじゃねーかチンコが見えてるくらい」
「よくないです!!」

彼女は気にしないようだが僕の方が恥ずかしい
でも久しぶりに入れたお風呂は確かに気持ちが良かった
頭も身体も石鹸があって洗えた為かなりスッキリ

かといっていつまでも入っているわけにもいかなくて出て身体を拭いた。

「流石に出たあと寒いですねッ」
「まぁでも良かったな」
「水を運ぶ大変さを全然考えて無くてすみません」
「あの程度は風呂に入れた事にを考えれば安いぜ?」

一気に7.5Lの水を運搬するのがどれほど大変だったか
しかも4往復もさせてしまいお風呂に必要な水の量の多さを痛感した
それでも完全な風呂には足りなかったが成立はする程度になっていた。

「このあと何をしましょうか?」
「ドングリを集めて来て喰うか魚をとる道具を作るかって所だな」
「確実な方法を取るのがいいですね」
「ならドングリを大量に集めて食べようぜ」
「塩とかあればいいんですけどね」
「拠点は頼む」
「えっ」
「モンスターかサルか分からないがいずれにせよ気配がしたんだ」
「いま別れて大丈夫なんでしょうか!?」
「ケモノは炎を怖がるしモンスターは視界に入らなければ襲われない」
「確かにそうですね」
「なるべくテントの中で大人しくしてて火を時々足せ、出来るな?」

子供扱いされているような気がする
実際自分に体力が無いので子供のように思われているかも
回復キャラが攻撃してもダメージにならないのと同じで役割を果たさねば

「それなら僕はここに残って出来る事をしますね」
「行って来る」

見送った後まずは火の様子を見た
随分弱くなっているので枯木を追加して燃やした
太い木は燃え初めこそ時間がかかるが一度でも火がつけば長い
これが沢山あって本当に助かった。

「ふー……」

炎を大きくしてせめて猿など野生動物が近づかないようにして
ふと身体を洗い終わり冷えてしまったお風呂を見た
石鹸も使ったし飲み水としては使えないがまた綺麗に出来ればお風呂にも出来る

「あっ」

子供の頃『理科の実験』で水をきれいにする方法をやった
ペットボトルの中に炭や布を入れて通すというもの
しかし水を運ぶのに丁度いいペットボトルを壊す訳にいかず
だったらと思い穴を少し掘って風呂に続く道を作った
幸い木の燃えカスは沢山あるので炭の代わりに出来るかもと入れて

「よし!」

石、砂、炭、布の順番で水が流れる装置を作った。
お風呂の残り水を鍋でくみとる
装置を使って見れば水はかなり綺麗になっているのが分かった


「戻った……何だこりゃ?」
「おかえり」
「川?」
「水を綺麗に出来ないかと思って」
「頭いいなお前!?」
「飲み水としては適さないんですけど明日もお風呂これなら入れるかもしれません」
「新しくくんでくるにしても時間かかりそうだったもんな……」

リュックからかなりのどんぐりを出すヒロ
2Lのペットボトル二つと同じ程度にはあった
そこで前と同じように水の入った鍋に入れて浮いた物を取り除いて料理した
全てが終わる頃にはもう日が暮れて来て

「今日はもう川の向こうにはいかない方がいいかもなぁ」
「あー……」

小麦粉を入れたせいもあって焼いた物がフライパンにくっついてしまった
油が欲しいが贅沢言ってられない
なんとかフライパンから引きはがして食べてみる

「食べられはする、かな?」
「ほとんど味しねぇけど食べられるな」
「塩があれば」
「あった気がするが?」
「え」

どうやらキャンプ場から食材を持ってきた時に
調味料ももって来ていたらしく『塩』が
すこしかければもはや料理に変わった。


「美味い!!」
「これなら食事の心配をしばらくしなくて良さそうですね……」


『箱』が出現したのが見えたので中身を確認した。
驚いたことに再びタオルが2枚だけ
食べものが良かった所だが清潔な布が手に入ったのは有難い。

「嬉しそうだな」
「ポジティブに生きようって決めてるんです」
「ふーん」
「ただ何でそういう風に決めたか思い出せなくて……」
「俺はいろんな奴を見て来たが前向きな奴は好きだぜ?」
「どうも!?」

美女の『好き』など慣れてない自分には恥ずかしいというか
嬉しいは嬉しいのだが照れて仕方ない
こんな状況でなく合コンと呼ばれるものなら舞い上がっていた
でも自分は何て言うか照れるだけで結局何も出来なかった気がする

「ここにはどれくらい『とどまる』のがいいんだろうな?」
「スマホで地図を確認した所、向こうの山はここより『レベル』が高いみたいです」
「レベルが高い???」
「多分これは難易度を表していて『箱』の中身に関係してくるかと」
「今よりよくなるかもって事か?」
「行って確認するまでは分かりません」
「けど今までここにいるだけで徐々に消耗していくだけだったから……」
「ドングリのおかげでここで少しだけ暮らす事は出来そうですね」
「今夜も冷えるならいっそ火を焚き続けて外の方が温かいか?」

どうにかテントの中を温める方法
火をつけてしまえば温かくはなるだろうけどテントが燃えてしまう
穴をあけてそこだけ『囲炉裏』にする方法もあるが後で困りそうだ

「あっ」
「どうした?」
「サウナになら出来るかも」
「さう?」

首をかしげる彼女は『サウナ』が何か分からない様子
自分もただ暑い所のイメージで説明するのは難しい
テレビでやってた知識があるだけなのだ

「焼いた石って燃えないですよね」
「そりゃ石だからな」
「でもすごく熱いのが中々冷えないんです」
「風呂の水も沸かすくらいだからな」
「それをテントの中に入れれば温かくなるのではないかと」
「天才かよ」

でも既に焚き火が随分と弱い
石を温めるにはもっと強くないと厳しそうである
強くするにしても薪の量がもう無くなっていて

「少しそのへんの薪をあつめるか」
「こんなに暗くて大丈夫でしょうか?」
「危ないのは重々承知してるから遠くへいくのは避ける」
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