この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

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8月の真ん中、世間ではお盆休みがはじまったらしい。
そんな日の夜、滅多に鳴らない電話が鳴る。
どうせまた神沢だろうなと思いながら画面を見ると森下からだった。

「も、も、もしもし?く、車道君?」
「なんで全部疑問形なんだよ。どうした?」
「あ、あの・・・あ、明日ね!学校の近くの神社でお祭りがあるの!・・・そ、それで・・・良かったら一緒に行かないかな・・・と思いまして・・・」
「今度は変な敬語だし、忙しい奴だな・・・別にいいけど俺でいいのか?桜山とか誘えば良かったのに・・・」
「えっ!?あ、いや・・・こないだ海で置いていっちゃったから・・・そ、その・・・お、お詫びになんかお祭りで奢らせていただきたいなと・・・思ったのであります・・・。」
「いや、そんなの気にしてないから変に気なんかつかわなくていいぞ?」
「き、気なんか使ってないよー・・・えっ・・・と・・・と、とにかく!明日の18時半に駅前集合で!わ、私・・・浴衣を・・・着ていく・・・つもりなので・・・そ、そのつもりでー!」
「え?何その報告・・・あっ・・・」
切られた。なんだったんだ?まあ、明日の18時半に駅前に行けばいいのか・・・あいつが浴衣なら甚平とかでも着てけばいいのか?

そして次の日。
着慣れてない感が否めない甚平に身を包み駅前で森下を待つ。
「車道君!お待たせ!」
声の方を見ると、浴衣姿でメガネをかけた森下がそこにいた。
メガネ!メガネ美少女が!浴衣を!着ている!なんだ・・・絶景じゃないか!!
「お、おう・・・浴衣、似合ってるな・・・。」
「え!?ほ、本当に!?・・・嬉しい。」
と言いながら森下が頬を赤く染める。メガネをかけたりんご飴とか素敵なんだろうな・・・とわけのわからない妄想をして2人で神社に向かう。

神社に着くとものすごい人がいて、思っているより多くの露店が並んでいた。
「すげー賑わってんな・・・迷子になるなよ?」
「う・・・うん・・・あの・・・はぐれないように・・・こ、こうしてていい?」
と言いながら俺の甚平を森下が少しだけ掴む。
初めての経験で少し照れくさい。
「あ・・・ああ。」

その体勢のまま人の群れに入っていく。
「森下・・・大丈夫か?」
「大丈夫だよ!車道君と一緒だし!」
こいつはあれだな・・・聞く人によっては勘違いをしてしまいそうな発言をたまにするな・・・。
「なんか寄りたい店があったらちゃんと言えよ?」
「うん・・・あ、見て!射的やってるよ!なんか懐かしくない?」
「子供の頃はよくやったなー・・・ああいうのって欲張って大きいの狙って重くて全然倒れないのに悔しい思いするんだよな。」
「あ、わかる!子供の頃はなんか頑張れば倒れる気がしちゃうんだよね!」

どんな感じか覗いてみるつもりで射的の屋台に近づいてみると高校生くらいの浴衣姿の女の子がムキになっていた。
「あー!もう!今、当たったじゃん!なんで倒れないのよ!」
「多分・・・何回やっても・・・一緒だと・・・思うよ・・・?」
「くーやーしーい!!」
俺はその女の子達に話しかける。
「お前はその歳にまでなって何をやってんだよ。」
「え!?誰よ!?こんな忙しい時に声かけてき・・・あー!あんた何やってんのよ!」
「桜山・・・射的に悔しがってる女子高生って恥ずかしくないか?」
「あんたこそ、家遠いのに1人でそんな格好で来るなんて恥ずかしくないの!?」
「あいにく1人じゃないんでね・・・。」
「あ・・・咲音ちゃん・・・どうもー・・・。」
「こ、琴子ちゃん!・・・2人で来てたんだ・・・!」
「そ、そうなんだ!咲音ちゃんも楓ちゃんと2人で来てたんだね!」
「お祭りってあんまり行ったことないから来て見たかったんだー!あ、じゃあ私達はそろそろ行こうかな?」
「・・・一緒にまわる?」
「え?琴子ちゃん・・・?・・・いいの?」
「私は楽しい方がいいから!車道君も人数多い方がいいでしょ!?」
「いや・・・まあ、俺はどっちでもいいけど・・・。」

そんなやりとりがあった結果、俺達は四人でまわることになった。
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