この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

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人混みの中、四人ではぐれないようにお祭りをまわる。
「こんなに人がいると寄りたい屋台にもなかなか寄れないよなー・・・。」
「そうだね・・・でも私、りんご飴だけは買いたいんだけどなー・・・。」
「森下、りんご飴好きなんだな。」
「うん!なんかお祭り来たなー・・・って感じしない?」
「わかる・・・私も・・・りんご飴・・・好き・・・。」
「楓ちゃんもなんだー!わー!お揃いだねー!嬉しい!咲音ちゃんはりんご飴好き?・・・あれ?咲音ちゃん?」
周りを見渡すと桜山だけいなくなっていた。
あいつ・・・はぐれたのかよ。お祭りあんまり行ったことないって言ってたもんな・・・さすがに1人でこの人混みを歩くのは可哀想だな・・・。
「仕方ねーな・・・森下・・・お前、ケータイ持ってるよな?」
「えっ!?・・・う、うん!持ってるよ?」
「じゃあ、あいつ探し出してすぐ連絡するからどっかで落ち合おう!」
「えっ!?・・・あ、わかった!」


そう言って車道君は人混みに消えていった。
「いいの・・・?一緒に・・・お祭り・・・まわりたかったんじゃ・・・。」
「いや、そ、そんなことないよ!!わ、私は皆とまわりたかったのでござるよ!!」
「・・・動揺が・・・すごい・・・車道君のこと・・・好きなの・・・?」
「えっ!?いや!あの!・・・す、好きです・・・。」
「・・・優しいもんね・・・。」
「うん!優しいよね!車道君って!」
「・・・早く・・・咲音ちゃんが・・・見つかって・・・戻ってくると・・・いいね・・・。」
「うん!」
私達は車道君が走り去っていった方を見る。


「ったく・・・どこではぐれたんだよ・・・プライベートで連絡とかしないから連絡先も知らねーし・・・。」
「お!コーちゃん!鬼気迫る顔してどうしたの!?」
声がした方を見ると神沢が屋台の中で焼きそばを焼いていた。
「お前こそどうして焼きそば焼いてんだよ。」
「いやー、知り合いが屋台やるって言ってたから興味あって手伝わせてもらってんだよー!」
「・・・さすがの顔の広さだな・・・あ、そういやお前桜山見なかったか?」
「桜山さん?・・・なに?デート中に喧嘩でもしちゃったの?」
「そんなんじゃねーよ!ちょっとはぐれちゃってさ!見てないか?」
「見かけたよー!向こうのお社の方に向かっていったけど・・・あっちって屋台とかないのにね・・・。」
「それを知ってるならなんで声かけなかったんだよ!」
「いや、なんかすごい悲しそうな顔してたから気まずくて!」
「こんな時に変に気遣い出すなよ!デリカシーないのがお前の持ち味だろ!」
「いやー、そんなほめられても!」
「ほめてねーよ!・・・でもありがとう!あとで焼きそば買いにきてやるよ!」
「お!まいどありー!」

俺は神沢の焼きそば屋台をあとにしてお社に向かった。
ここの神社のお社は石段を上がって行ったところだ。
ひと気も無くなっていき、その石段の前まで来たところで石段の中腹に座る桜山を見つける。
「お前、こんなとこで何してたんだよ。」
うつむいていた桜山が顔をあげる。
「・・・わー!!人混みこわかったよー!!」
目に涙を浮かべて桜山がらしくもなく泣きついてきた。
人混みがこわくてここまで逃げてきたのか。
「慣れてないもんな。大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょー!こわかったんだからー!もうずっと1人かと思ったー!」
「そこまで追い詰められてたのかよ・・・じゃあ、よし・・・行くぞ。」
「戻りたいけど、歩けないのよ・・・草履の鼻緒が切れちゃって・・・。」
「まじかよ。・・・ったく・・・仕方ねーな・・・おぶってやるから乗れよ。」
「え?いや、そんな・・・恥ずかしいから!」
「俺だって恥ずかしいわ!でも歩けないなら仕方ねーだろ。」
「・・・じゃあ・・・楓ちゃんより重いけど・・・重いとか言わないでよね。」
「言うわけないだろ。とにかく乗れよ。」
「・・・ありがとう。」

俺は桜山をおぶって森下と連絡をとり合流することにした。
人の全くいない砂利道を桜山をおぶって歩いていると少し離れた夜空に花火が上がった。
「あー、花火上がっちゃったな・・・悪かったな・・・花火見る相手が俺だけになっちゃって。」
「別に・・・これははぐれた私が悪いから・・・。」
なんだよ・・・調子狂うなー。

「花火・・・綺麗ね。」
「ん?ああ・・・綺麗だな・・・。」
花火を横目で見ながら俺達は森下と鶴里の元へと向かった。
「・・・そういえばお前、りんご飴食べたことある?」
「なによ急に!?・・・ないけど・・・興味ある・・・。」

帰りに四人でりんご飴でも食べてこうかな・・・なんてことを思った。
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