片桐くんはただの幼馴染

ベポ田

文字の大きさ
3 / 5

確かに片桐とは高校も同じです。けどマジで本当にそれだけ

しおりを挟む
俺たちの代では全国に行った。
個人では、俺と右成が県選抜に選ばれるなどした。片桐も、バスケの方のユースから招集が掛かった。
あと湯田さんとは、連絡を何度か取り合ったあと、自然と疎遠になった。ちゃんと恋人ができたらしい。
そして恋人も無く何も無く。俺は、お声掛け頂いた幾つかの学校の中から、伸び伸びと身軽に進学先を選ぶ事ができたわけだが。
だからこそ、2人と同じ高校に上がるって知った時、俺は未だかつて無いくらいに驚いた。同時に、腐れ縁ってあるんだとちょっと運命の存在を信じるようになった。
「相変わらずモテるねぇ、片桐クンは」
「重い。乗るな」
馴れ馴れしく肩を組んでくる右成は、既に180センチの大台に乗ろうとしている。俺はと言えば、175の境目をウロウロしているので、この体勢は非常に癪である。
肩に回された腕を振り解き、サッと身を屈める。
片桐御一行が廊下を通り過ぎるのを、窓枠の下でやり過ごした。
片桐とクラスは別だ。けれども人情に溢れたあいつの事なので、廊下ですれ違おうものなら、きっと花が綻ぶような笑顔でこちらに微笑みかけてくるだろう。
「侑希」と。
そこから先はお察しである。中学の二の舞だ。
「片桐くんと仲良いの?」
「仲良いよね?」
「お近づきになりたいの。協力して」
俺の中学校生活で唯一心残りがあるとしたら、それらの質問に浪費されてきた時間であろう。
故に俺は、心に決めていた。
中学と同じ轍を踏まぬよう、ここでは表立って片桐と絡まないという事を。右成にも同じことが言えたが、此奴はバレーを続ける限り運命共同体のような物なので、もうどうしようもない。
故に俺は、こうしてアイツの視界から逃げ回ってるわけだが。
「挙動不審くんは隣に立たないでもらえますか?知り合いだと思われたくない」
「何の話だ」
大体先に絡みにきたのはお前の方だ。
歯軋りすれば、右成が肩を竦めて顎をしゃくる。
素直に片桐から意識を逸らせば、「イケメンくんと同じクラスになれてラッキー!」「隣の変な人ダレぇ……?地味顔の」みたいな会話が、クラスのどこからか聞こえてくる。だれだ、変な地味顔って。俺は地味顔だけど変では無いので、たぶん違う人だ。
「お前、ボッチまっしぐらじゃん。話し相手いなくなるよ」
「そんなんお前がいたら充分だろ」
確かに、既に高校デビューに失敗している感じはする。しかしバレーボールに関わる交友関係以外がどうなっても、割とどうでも良いと言うのが本音だ。
「…………?」
急に黙りこくってしまったチームメイトを、半目で睨め付ける。当の本人は、狐に摘まれたような表情で固まっている。間抜けだと思った。
「なんだお前。急に黙るなよ」
「……………キモぉ……」
「は?」
「キモぉ」と言い放った表情は、浴槽でデッカい蜘蛛を見つけた時のそれだった。急に変な顔で変な事を言わないでほしい。ビックリしてグーで殴ってしまった。
「ギャー!」と言う女子の悲鳴と、「暴力です!こいつ暴力マンです!」と言う右成の喚きが、教室中に響き渡っていた。


***



「ふ、藤白くん。片桐くんが呼んでる……」
教室のドアから、恐る恐る声をかけてくる女子生徒。入学して3ヶ月と経たないうちに、『暴力マン』の蔑称を得た俺は、クラスメイトから遠巻きにされている。
180の壁の後ろに隠れながら、「片桐」と言う名前に、ブンブンと首を振る。すると壁は、「今藤白いない。ウンコだって」と答える。
「えっと、お手洗いだって……」
マイルドに、扉の向こうで答える女生徒。ここまでが、お決まりの流れだった。まだ俺が暴力ウンコマンになってないのは、クラスメイトたちの少しの気遣いのおかげである。
スマホにメッセージ。
「最近お腹の調子悪いの」と。片桐からの質問に、「液状」と返しておく。固形のウンコくんスタンプに、便器くんスタンプを返してアプリを閉じた。
「うわ、片桐クンうんこスタンプとか使うのかよ」
180の壁……右成が、俺のスマホを覗き込みながら目を丸くする。お前のせいだと詰め寄りたい気もするが、匿ってもらっている手前強気に出られない。
「お前ですら使わないのにね」
「ほんとそれ」
「あ、待って」
「なに」と、またスマホを覗き込んできた右成は、程なくして「うわ」と声を漏らす。
『トイレ居なくない?』
『どこのトイレ?』
『何階?』
連続して送られてくるメッセージ通知が、少し怖い。彼は何を切羽詰まっているのだろう。まさか、『侑希、ウンコ出た?』とかトイレで聞いて回ってるわけじゃあるまいな……じゃなくて。
これは非常に不味い。嘘が嘘だとバレてしまう。学校で関わり会いたくないだけで、諍いを望んでいるわけではないのだ。
「俺ちょっと、4階のトイレに篭ってくる」
「はァ?」
「片桐がくる前にウンコマンになる」
1階から4階まではかなり距離があるが、中学時代の階段ダッシュに比べたら、ちょっとした段差を跨ぐような物である。片桐がトイレに辿り着く前に、虚言を現実にするべく教室から飛び出した。



「それで?」
肘を突き、鼻下で手を組み項垂れる右成。こいつのここまで深刻な表情は初めて見た。
「付き合う事になりました?」
「いや俺に聞かれても……。俺の記憶が正しければ、お前はトイレでウンコマンしてくる!って、馬鹿みてぇなこと叫ぶなりどっか行ったわけだけど」
「その認識であってます」
「うん。それで?どうなったって?」
「カタ……ヒヒフンと、お付き合いする事になりました?」
「?……??、?……?」
片桐くんと付き合う事になりました。
事実を再確認した右成は、とうとう青い顔で眉間を揉み解した。俺は俺で、大袈裟な……と言いかけて顎先に触れる。いや、改めて事実を言語化してみると、確かにおかしいなこれ。
なんでこうなったんだっけと、朧気な記憶を振り返る。
────『避けてるよね?俺のこと』と。
片桐はトイレに入ってくるなりド直球で尋ねてきた。閑散とした空間に、やけに声が響いていた。ウンコを終えて絶賛手洗い中……と言う設定の俺は、手を洗うポーズのまま、すっかり固まってしまって。
「いや?」と否定するけれど、片桐は身体を少し傾けるだけだ。それは完全に出入り口を塞ぐムーヴメントで、完璧な位置取りに寒気すら感じる。何より不気味だったのは、その笑みが、本当の本当に自然で、いつも通りの物だったと言うことだ。
ごく自然に微笑んだまま、意図的に退路を断つ。
片桐の意図が全く分からなかった。
「なんで?俺のこと、嫌い?」
「嫌いじゃない」
「じゃあ、好き?」
「うん」
素直にそう答えると、少しだけ複雑な表情をする。ただそれも一瞬で、直ぐに貼り付けたみたいな笑みを浮かべた。
「じゃあなんで逃げるの」
すぅと開いた眼光は、どこか悲痛だった。俺だって、片桐にこんな顔をさせたかったわけではない。
そもそも黙っていたのは、本当の事を言ったとして、片桐的には『俺に言われても……』案件でしかないからだ。とは言え、このまま何の弁解もしないよりはマシに思えた。
「……お前と学校で絡むと、何かこう、『片桐くんとお近付きになりたいの』って子に毎回絡まれてしんどい……」
結果、馬鹿正直に本心を吐露した俺に、片桐は目を丸くする。ぴし、と硬直して、暫し、無言のまま見つめ合った。
「そ、れはさぁ」
沈黙を破ったのは、片桐の方である。表情は相変わらず硬い。
「右成くんにも同じ事が言えるんじゃないの」
「でもアイツはほら、部活もクラスも同じだし。ちょっと防ぎようがないだろ」
「なにそれ。俺と部活もクラスも違うから、彼を優先したって事?」
「優先って、おい何だその……ハコフグみたいな顔」
「ひどい!それならねぇ、それなら俺だって言わせてもらうけどさぁ……!」
今にも破裂しそうなほどに頬を膨らませる片桐。あまりの剣幕にたじろぎつつ身を引くと、同じだけの距離を一歩で詰めてくる。
肩を掴まれ、抱き込むように身体を近づけて来て。頬を掠める細い黒髪に、制服越しに伝わってくる体温、甘い香り。何事かと身構えれば、キュ、と言う音の後に、水音が途切れた。どうやら、蛇口を締めてくれただけのようだ。
「侑希だって大概モテるんだからね!?」
再び俺の両肩を掴み叫ぶ片桐。目が完全に据わっていた。息も絶え絶え、「ハァ…?」と呻くも、変わらず本気の形相で詰め寄ってくる。
「ほら気付いてない!しかもコアなファンが多いのか、ヤバい子も多かったし……」
「ヤバい子って……」
「『真っ新で可愛い』『私色に染めたい……』『色々手取り足取り教えてあげたい』エトセトラエトセトラ」
「何言ってるの?」
「俺も分からなかったよ最初は」
指折り数える片桐は、ちょっと驚くくらい顔色が悪い。何かわからないが、すごく怖い思いをしたのだろうなと思った。けれど記憶を遡っても、俺自身にそのようなトラウマは無いが。
「侑希に対する相談は専ら俺に来るんだよ。お前は友達が少ないから」
「…………」
「その度に俺は、お前の色々を必死で守ってさ」
「それは……ごめん?」
「本当だよ。苦し紛れのキャップ交換作戦も、裏目……って言うか、何か気付いたら他の子と交換してるし」
ここに来て衝撃の事実だが、あのキャップ交換事件は、片桐の思いやりによる物だったらしい。本当にハンドクリームをあげて良かったと思った。あとそれは、他の女子との交換じゃなくて、右成って言う野郎との交換です。なんて訂正は、「断言するけどね」と言う低い声に遮られる。
「お前は俺がいなかったら、とっくに食われてたよ。頭からバリバリって」
冗談よせよ、と笑い飛ばせないのが辛い。俺は母親以外の女性をほぼ知らないし、相手はあの片桐だ。俺よりもよっぽど、女性と言う生き物に造詣が深い筈。何よりその表情は真に迫った物で、説得力が違う。文字通り頭からバリバリ食べられる自分を想像して、ぶるりと身震いした。
「……なら尚更、俺と表で関わるのはやめた方が良いでしょ」
「馬鹿、それで済むなら中学で縁切ってるよ。俺は!お前を!心配してるの!」
「片桐……」
「ずっと一緒だって言ってくれたよね。行けるところまで2人で行くって。だから俺は、そう言うのでお前の足が引っ張られるのがすごくイヤ」
目を伏せ、切なげな声音で懇願する片桐。下がった眉と、小さく震える唇。今にでも、濡れた双眸から涙が零れ落ちそうだ。泣いてる?冗談だろ。
釣られて俺も何だか、目頭が熱くなってくる。
そう、ここからだ。ここから何か、こう、変な空気になったのだ。
「だから高校上がって、お前が無事にやれてるか俺は気が気じゃないの」
「問題ないよ」
「本当?お前は鈍感だから、自分で気付いてないだけじゃない?中学の時のアレソレを踏まえて、本当に問題ないって言い切れるの?」
垂れ気味の目元が、精一杯と言った様子で吊り上げている。怒涛の質問攻めに口籠れば、片桐もまた、何かを考え込むように口を噤む。
「……付き合おう」
やがて、おもむろに吐き出された提案に、俺はしばらく口が聞けなかった。
「付き合ってる事にしよう」
いや、聞こえなかった訳ではなく……。何故か2度同じ事を言ったソイツに、俺は「はぁ……?」としか返す事ができなかった。
そして今に至る。

「いやいやいや、なんで?」
右成が、頭痛を訴えながら待ったをかけてくる。普段は立場が逆な分、こう言う姿は新鮮だ。
「意味がわからない。意味が」
「いや、自分から公表するわけじゃないけど。こう、お互いの事聞かれたら、『アイツ俺と付き合ってるから』で黙らせようって話に」
「うーん……」
「win-winだねって」
「丸め込まれたの?」
「丸め込まれた……わけでは、ない……」
「本当ぉ?」
少し考えて、俺はきつく目を瞑る。ぐりぐりと眉間を揉みほぐしたら、思考が冴えてくる気がする。スッキリした頭で考えて、冷静に事態を整理して。
「……やっぱおかしいな?」
「だよねぇ」
「いや、そうはならんやろ。まんまと丸め込まれた」
「急に正気に戻るじゃん」
胡乱な目でマテ茶を啜りながら、右成が肯首する。昼練をすっぽかした詫びに捧げたマテ茶であるが、安上がりで本当に助かる。次の授業の準備だろう。黒板に数式を書くクラスメイトをボンヤリ眺め、椅子に深く腰掛けた。
「どうしよ」
「…まぁ、良いんでね。そんな深刻そうな顔せんでも」
トン、と硬質な音がする。右成が、机にペットボトルを置いた音だった。
「お前が目立たなければ、万事解決」
「その心は」
「そしたらアイツは、お前関連で女子に絡まれない。なので、『お前と付き合ってる』と答える必要はない」
「あー。逆に俺がアイツについて絡まれたとしても、別の事言って適当に誤魔化せれば、無問題?」
「話が早くて助かるよぉ、藤白くん」
豪快に笑いながら、背中を叩いてくる右成。力加減を知らないのか、普通に心臓が止まるんじゃないかってくらい痛い。俺が暴力マンなら、こいつは無自覚暴力マンと呼ばれて然るべきだろう。いや、たまにおもくそ故意に暴力を振るってくるけど。
「それより、浩平先輩のハイブリッドサーブをさ……」
さっさと部活の話を始めるバレー馬鹿は、ひょっとすると俺のゴタゴタなど、心底『どーでも良い』のかもしれない。それでも一応相談らしき物に付き合ってくれたのは、成長と呼べるのではないか。数年前のアレソレを思い出しながら、俺は丸くなったチームメイトに目頭を押さえた。



***



1年のインターハイ予選で、強豪と呼ばれるチームで。そのベンチに入れてもらっただけ、有難いと喜ぶべきだろうか。喜ぶべきなんだろうな。
ああでも、片桐は公式戦にも出してもらえるようになったんだっけ。
駄目だなぁ、行けるところまでは一緒に行くって言ったのに。
決勝。1セット先取された2セット目の、24-23の劣勢。
このタイミングでピンチサーバーなんて役で放り込まれて、俺の頭にあったのは、『ここでミスしたら負け』でも、『ここで取ったらヒーロー』でもない。
『ここで負けたら、片桐に置いていかれる』と、それだけだった。
チームを一切慮らない自己中強気サーブは、練習通り見事に相手の守備を乱し、時にはノータッチエースで得点に。
2セット目を取り返したところで、先輩やら右成やらに肩を抱かれ叩かれ我に帰る。
我が校のアリーナ席から湧き上がった歓声に、ゆっくりと目を瞬いた。

「『インターハイ出場を決めた大きな勝因として、男子バレーボール部主将の本村雄大選手(3年)はピンチサーバーの活躍を挙げる。「ピンチサーバーに起用された藤白選手(1年)は、ハイブリッドサーブを使います。これは、最近Vリーグなどでも見られるようになった新しいサーブです。その分習得も難しく、実際成功率も半々だったと思います。それをあの局面、あのプレッシャーの中で成功させる精神力と勝負強さには、目を見張るものがあります」そう語った本村選手は、藤白選手含めた1年生の成長が楽しみだと締めくくった。次に、最多29得点を決めたエースの、』ぶぶ……っ!」
思い切りほっぺを掴んで、右成を黙らせる。学校新聞を取り上げようと手を伸ばすも、リーチの差で華麗に回避された。
「音読やめろ」
「クソ、クソ!藤白クンはすごいですねェ!」
「…称賛するなよ」
「は?スゲーものはスゲーだろ」
「そうだけど、お前はだめだろ」
「………?」
怪訝な顔をする右成。本気で、意味が分からないという表情だ。どさくさで手を伸ばすが、しっかり新聞は避難させられる。クソ。
「お前は張り合って来いよ。いつも通り」
「………藤白くんはマゾなの?」
「あーそう、じゃあおれの勝ちか。良いライバルだったな、右成くん」
「バッカおまえ!」
俺が取り上げる間も無く、右成が学校新聞を八つ裂きにする。
「お前なんてすぐ追い越すに決まってんだろ?次のはスタメン入りしてやるから、ベンチで指くわえて見とけよ」
「今回コートにすら入れなかった奴が、なんか言ってるな………」
「うるせぇ!」
叫び、八つ裂きの新聞紙をムシャムシャとを咀嚼して、マテ茶で流し込んだ。滑らかに奇行に走らないでほしい。
「こわ……」
「腹壊したらお前のせいだからな」
「まだ発酵麦茶事件の方がお前に分があるの、相当だと思う」
「は?なんだその事件」
俺がお前を認知するきっかけになった事件だけど。
加害者は、自分のやった事を覚えていないの典型だと思った。『部室は綺麗に使おう』と書かれたポスターを一瞥。諦めて俺が新聞の切れ端を拾い集めるうちに、腹の虫も治ったらしい。右成が不意に、「現金だよなぁ」と溢すので、「なにが」と答える。なんでこいつが撒き散らしたゴミカスを、俺が掃除しているんだろう。
「ちょっと前までは『ボッチ・地味顔』だったのに、ヒーローになった途端、『孤高の人』扱いだもんなぁ、お前の周り」
「俺ボッチ・地味顔って呼ばれてたの?」
「そうだよ」
「そうなんだ……」
右成だけかと思ってた、俺のことボッチ扱いする人。でも皆んな結構、右成より凄いこと言う。人間不信になりそう。
「そして『地味顔』が、『整ってる顔』に。スポーツの魔力ってすげーわ」
「そうね……」
「めちゃくちゃどうでも良さそうな顔するじゃん……。お前、さてはすっかり忘れてるだろ」
「何が」
詰め寄ってくる右成の相貌。こう言うのは地味顔じゃなくて、せ、精悍?な顔立ちって呼ぶんだろうな。そんな事をボンヤリ考えていれば、ただでさえ涼しげな目の、眦が釣り上がる。急に真剣な表情をするチームメイトに、思わず目を見張った。
「お前がゲイだって噂が流れ始めています」
「あっ」
「『あの……藤白くんって、その、男の子……が好きなの?』とか、クラスの女子に相談された時の俺の気持ち、分かる?」
「お前、俺の知らないところでそんな目に……」
「この際目立つなとは言わんけどさぁ、片桐クンにはせめて何か断っとけよ」
思い出すのは、数ヶ月前のトンチキ盟約である。有難い……のかは分からないが。俺に興味を持ってくれた女子に対して、律儀に『あいつ恋人いるよ』『え?誰って……俺だけど』と返す片桐の姿は、想像するだけで結構泣ける。
というか、あれは自動的に『即ち自分もゲイである』と広がる、諸刃的な力業だ。お互いのために、性急に取り辞めた方が良いだろう。
「そうする……」
そう呟いた自分の声は、思っていたよりも狼狽している。
ゆっくりと右成を見ると、俺よりもずっと深刻な表情をしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

重すぎる愛には重すぎる愛で返すのが道理でしょ?

チョコレートが食べたい
BL
常日頃から愛が重すぎる同居人兼恋人の深見千歳。そんな彼を普段は鬱陶しいと感じている主人公綾瀬叶の創作BLです。 初投稿でどきどきなのですが、良ければ楽しんでくださると嬉しいです。反響次第ですが、作者の好きを詰め込んだキャラクターなのでシリーズものにするか検討します。出来れば深見視点も出してみたいです。 ※pixivの方が先行投稿です

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

処理中です...