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今日、恋人にフラれました。
恋人と言っても、不倫相手。会社の上司で、お子さんはいないけど奥さんはいる人。甘い言葉に負けて、奥さんのいる人と付き合った私も悪い。でも、納得出来なくて、割り切れなくて、私は一人、バーで濃いめのカクテルを友に泣いていた。今の職場、企画開発部で働き始めて、何年経ったっけ。
私は高校を卒業して、飲食店でバイトをしたのちに今の会社で働き始めた。食玩を扱う会社で、不倫相手だった上司、新田にった 吉良きらは、私が入社した時にはもう部長職に就いていた。仕事の出来る人で、部下からの信頼も厚い、素敵な男性だった。私がそんな新田部長に口説かれたのは、去年のことだった。
「……私も悪かったんだから」
鼻声で呟く。
とある冬の日、私は新田部長に食事に誘われた。上司が部下を食事に誘うのは、そう珍しくないこと。私はそう思っていたし、新田部長も慣れているようだった。だから、付いて行った。行き先はホテルだった。戸惑う私に、新田部長はキスをした。君が好きだ、僕と付き合ってくれ、と。私は新田部長に奥さんがいることを知っていた。だから、お断りするつもりだった。だけど、新田部長は引いてくれなかった。私は昔から、押されると弱いところがあった。
それで……関係を持ってしまった。
「……押し切られた私も、悪かったんだから」
また一杯、カクテルを空にする。
新田部長と関係を持った結果が、これだ。新田部長の方から別れ話をされた。奥さんにこの関係がバレそうなんだ、と。不倫はしたいけど離婚はしたくない。そんな新田部長の気持ちが分かってしまって、お人好しというのか、私は別れ話を受け入れてしまった。私が新田部長に想いを寄せていたのは事実だ。不倫とはいえ、甘い展開を期待していなかったと言えば、嘘になる。
新田部長が、奥さんじゃなくて私を選んでくれたら、と。
「……もう、やだ」
情けなくて泣けてくる。社会人になってから一番ショックだった出来事。最初で最後にしたい出来事。私は半泣きでカクテルを追加注文する。明日のことなんて考えていなかった。こんなに飲んだらどうなるか、それも考えていなかった。いわゆるヤケ酒に溺れる私の隣の席に、誰か座った気がした。もう、それが現実なのかも分からないくらい、私は酔っていた。……良い香りがする。
それは、隣の人のフレグランスだった。
「……いいかおりですね」
「俺?付けてやろうか」
「……いいんですか?」
そんなやり取りをする私と、霞んでよく見えない隣の席の人に、バーのマスターだと思われる、初老の男性が声を掛けてきた。正確には、隣の席の人に。そういうナンパは良くないよ、御沙希。マスターの言葉に、御沙希と呼ばれた人が返事をする。俺だってこの子みたいに酔い潰れたいくらいの気分なんだよ、と。
あぁ、この人と私、同じ名前なんだ。
私は小野 未咲。情けない、社会人5年目の会社員です。
恋人と言っても、不倫相手。会社の上司で、お子さんはいないけど奥さんはいる人。甘い言葉に負けて、奥さんのいる人と付き合った私も悪い。でも、納得出来なくて、割り切れなくて、私は一人、バーで濃いめのカクテルを友に泣いていた。今の職場、企画開発部で働き始めて、何年経ったっけ。
私は高校を卒業して、飲食店でバイトをしたのちに今の会社で働き始めた。食玩を扱う会社で、不倫相手だった上司、新田にった 吉良きらは、私が入社した時にはもう部長職に就いていた。仕事の出来る人で、部下からの信頼も厚い、素敵な男性だった。私がそんな新田部長に口説かれたのは、去年のことだった。
「……私も悪かったんだから」
鼻声で呟く。
とある冬の日、私は新田部長に食事に誘われた。上司が部下を食事に誘うのは、そう珍しくないこと。私はそう思っていたし、新田部長も慣れているようだった。だから、付いて行った。行き先はホテルだった。戸惑う私に、新田部長はキスをした。君が好きだ、僕と付き合ってくれ、と。私は新田部長に奥さんがいることを知っていた。だから、お断りするつもりだった。だけど、新田部長は引いてくれなかった。私は昔から、押されると弱いところがあった。
それで……関係を持ってしまった。
「……押し切られた私も、悪かったんだから」
また一杯、カクテルを空にする。
新田部長と関係を持った結果が、これだ。新田部長の方から別れ話をされた。奥さんにこの関係がバレそうなんだ、と。不倫はしたいけど離婚はしたくない。そんな新田部長の気持ちが分かってしまって、お人好しというのか、私は別れ話を受け入れてしまった。私が新田部長に想いを寄せていたのは事実だ。不倫とはいえ、甘い展開を期待していなかったと言えば、嘘になる。
新田部長が、奥さんじゃなくて私を選んでくれたら、と。
「……もう、やだ」
情けなくて泣けてくる。社会人になってから一番ショックだった出来事。最初で最後にしたい出来事。私は半泣きでカクテルを追加注文する。明日のことなんて考えていなかった。こんなに飲んだらどうなるか、それも考えていなかった。いわゆるヤケ酒に溺れる私の隣の席に、誰か座った気がした。もう、それが現実なのかも分からないくらい、私は酔っていた。……良い香りがする。
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あぁ、この人と私、同じ名前なんだ。
私は小野 未咲。情けない、社会人5年目の会社員です。
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