何様?俺様、お兄様〜義兄に落ちる10のステップ〜

桜屋敷 櫻子

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Step1

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 誰かが、私の髪に触れている。誰かが、私の耳元で歌を歌っている。低くて、でも、甘い声で。



 私に触れているのが、新田部長ではないことは確かだった。あの人は紳士だったけど、こんな甘ったるい介抱の仕方はしない人だった。……介抱?そうだ、私はバーで泥酔して、自分と同じ名前の、御沙希という男性に口移しで特濃のカクテルを飲まされて、何も考えられなくなって。ということは。



 ここはホテル!?





 「私は美味しくないですっ」



 「……急に、何」





 あれ?ここ、バー?



 私はクラクラする頭を抱えながらも、現在地がまだバーであったことに驚いた。もうとっくに御沙希さんにホテルに連れ込まれて、えっちなことをされているのだと思っていたから。御沙希さんはまだ飲んでいる。私の髪に触れながら。じゃあ、歌っていたのも御沙希さん?それは、それなりに酔っているからなのか、素なのか。でも、心地良かった。潰れる前より鮮明な視界に映った御沙希さんは、普通かそれ以上に美形だった。思わず、ポーッと見惚れてしまうくらいには。





 「何?人の顔、じっと見て」



 「え、あ、えーっと……あ、そうだ、ここ、ホテルじゃないんですね!」



 「聞こえてなかったか?酔いが醒めるまで介抱するって言ったろ」





 どうやら、私が思っているより、御沙希さんはまともな人だったらしい。





 「ホテルに連れ込まれてた方が良かった?」





 ……前言は撤回した方がいい気がしてきた。



 ニヤニヤとそんなことを言う御沙希さんにこれ以上、関わるのは良くないだろう。私はそこそこに酔いが醒めている自覚があった為、帰ろうとした。しかし、腕を掴まれる。他ならぬ、御沙希さんに。御沙希さんの顔を見ると、御沙希さんはジト目で私を見ていた。そして、一言、私に言った。





 「話くらいは聞いてやるけど?」



 「え」



 「だから、何があってそんな酔い潰れてるのか、聞いてやるって言ってんの」





 意外、だった。美形だけど、パッと見、遊んでいそうだし、ちょっと怖いのに、出会ったばかりの人間の愚痴や泣き言を聞いてくれるとは、優しいところもあるらしい。いや、そっちが本質なのか。分からないけど、私は御沙希さんに新田部長とのことを話した。不倫して、フラれて、泥酔して。とんでもない女だと思われるかもしれない、と、覚悟はしたけど。軽い女じゃありません、なんて、どの口が言えようか。



 しかし、御沙希さんは私の話を黙って聞いてくれた。そして、私がどうして今ここにいるか、まで話し終えると、溜め息を一つ。子供がいない男を選んだのはいい選択だ、と。それは、慰めの言葉なのか。確かに、私だって新田部長に子供がいたら関係を持たなかった。でも。でも、だ。



 御沙希さんに責められなくて、良かった。急に涙が溢れてくる。





 「うー……私、馬鹿なことしちゃったぁ……」



 「まぁ、いいじゃん。そのお陰で、こんないい男を捕まえられたんだから」



 「正直、ヤリ逃げするような人だと思ってました……」





 私の言葉を聞いて、御沙希さんの頬が引き攣った。

 そして、私の耳元に唇を寄せる。



 ──それは、確かめてみないと分からないよな?



 その御沙希さんの言葉に、顔が熱くなる。ほら、やっぱりこうなるじゃない。
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