捨て猫ちゃんとおっさん。

桜屋敷 櫻子

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ある日、起きたらゴミ捨て場でした。

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 「んー……」



 「ん、目が覚めたか?」





 ……身体が重い。でも、温かい。あたしが、誰かのベッドに身体を横たえられ何重にも毛布や布団を掛けられている、と認識出来るまでしばらく掛かった。ベッドの横にはあのおっさんが座り込んでいて、湯気の立つカップで何かを飲んでいる。あたし、おっさんに命を助けられたの?





 「……ここ、おっさんの家?」



 「おっさん言うな。まぁ、別にいいが。そうだよ、ここは俺の家。お前さんはあんなところで何してたんだよ?」



 「……親に捨てられて」





 重い沈黙。それはまぁ、そう。あたし、死にかけてたわけだし。この後の展開としては警察へ通報、だろうな。全く、あたしが一体何をしたっていうんだか。生まれてきたことが罪だって言われたらそこまでだけど。おっさんもいい迷惑だよね、私有地に未成年者を捨てられる、なんて。



 沈黙を破ったのはおっさんが先だった。とりあえず、どういう経緯で捨てられたのかを聞かれた。詳しいことは捨てられた張本人であるあたしにも分からないけど。恐らく、あたしの態度の何かが気に食わなかったから、とか、前々から決まってたから、とかそういう理由で捨てられたんだと思う、でも、本当のところは分からない。



 そして、あたしが自宅の住所も電話番号も教えられていない、と言った時、おっさんはガックリと項垂れた。





 「俺が警察に通報したら、お前さん、どこかの施設行きかもな……」



 「それも仕方ないでしょ、人生、そんなもん」



 「……お前さんはもうちょっと、こう、あぁ、もう!!」





 ……むぎゅっとプレスされた。ベッドで横たわっているあたしの上におっさんが乗っかってきた。カップを放り出し、床に盛大に中身を撒き散らして。そして、おっさんは言った。お前、ここにいろ、と。その瞬間、意識を覆っていた膜のようなものが取れた感じがした。捨て猫、返事は?と微妙な呼び方で返事を催促される。



 あたしの中には選択肢なんて用意されていない。あたしはおっさんの用意した「はい」を選んだ。その時、あたしは生まれて初めて誰かに責任を持ってもらった気がした。生きていていい、そう言われたようでアホみたいに涙が溢れてきた。まぁ、あたし、アホなんだけどさ──……。
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