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幼馴染みで元カレで不良な転校生
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とある日のお昼休みのことだった。私がいつも通り、お弁当を持って保健室に行こうとしていると、きゃーきゃー!という、同級生の女子たちの黄色い声が聞こえてきた。教室からひょこっと顔を出して廊下を覗くと、少し離れたところに、ちょっとした人集りが出来ている。一体なんだろう、と、気になりはしたけど、私は人集りのない方から、まっすぐ保健室に向かおうとした。
「ひな、」
そんな私を呼び止める、男子の声。その声には、とても聞き覚えがあった。いやいや、まさかね?だって、あいつがここにいるはずないもん。たぶん、私の空耳かなにかだ。……そんな現実逃避をしてみる。
「おい、無視すんなよ、ひなっ」
その声は、私のすぐ後ろまで迫っていた。そして、ガシッと、力加減というものを知らない馬鹿力で肩を掴まれる。振り返りたくないなぁ。でも、振り返らないと、強制的に振り向かされるだろうなぁ。……はぁ。私がくるっと振り向くと、そこにいたのは、やっぱり、あいつ、だった。
「……なんでここにいるの、あんた」
キシキシに傷んだ金髪、明らかに校則違反な着崩した制服、そして……。
「なんでって、転校してきたから?」
高身長、人懐こい笑顔、どこか大型犬を連想させるこの男……私の幼馴染みであり元カレである。ついでに言うと、地元では知らない人はいないと言っても過言ではない、不良グループのリーダーでもある。さらについでに言うと、しょっちゅう、ファッション雑誌に乗ってしまうようなイケメンモデル。名前は、遠藤 健斗。
「転校って、どうしたの。おばさんたちの都合で引っ越しとか?」
……あぁ、居心地が悪い。ただ話しているだけなのに、こいつを取り囲む女子たちから、すごい目で見られる。皆さん、こいつと話せる私が羨ましいですか?だったら、今すぐ誰か、代わってください。ちょっとくらいなら謝礼もします。
「いや、前の学校、いきなり女子校になっちまってさ」
「嘘つけ」
「はい、嘘です。実は、前の学校で厄介な問題を起こして、学校側から、もうお前の面倒は見きれん!って言われちゃって」
「相変わらずだね、あんた……」
ちなみに、この超の付く問題児、健斗は三年生である。なんで、一年生の教室の前にいるんだろう。いや、言われなくても、なんとなくわかってしまう。たぶん、こいつは私を探しに来たんだ。だって、こいつは、私に……いや、今はもう違っていると思いたい。
「ひな、」
「なに、健斗」
……ぎゅう。なんの予告もなく健斗に抱き締められる。廊下に響き渡る、女子たちの悲鳴。棒立ちする、私。なにがあっても、背中に腕なんか回してやらない。私たちはもう、カレカノじゃないんだから。そう、カレカノじゃない。なのに、こいつときたら……。
「ひな、俺は今でも、お前のことがっ、」
「未練がましいわ、このバカ犬!!」
「ぐほっ……!お、おい、待てよ、ひなっ!!」
脇腹に、重い一発をくれてやった。乙女の身体に気安く触れた罰だ。私は健斗の腕の中から抜け出すと、全力で廊下を走った。そして、全力で階段を下りる。保健室に逃げ込もう、今井先生に匿ってもらおう。私はろくにノックもせず、保健室に飛び込んだ。……飛び込んだ?いつも鍵が閉まっているのに、なんで今日は開いているんだろう?
「ひな、」
そんな私を呼び止める、男子の声。その声には、とても聞き覚えがあった。いやいや、まさかね?だって、あいつがここにいるはずないもん。たぶん、私の空耳かなにかだ。……そんな現実逃避をしてみる。
「おい、無視すんなよ、ひなっ」
その声は、私のすぐ後ろまで迫っていた。そして、ガシッと、力加減というものを知らない馬鹿力で肩を掴まれる。振り返りたくないなぁ。でも、振り返らないと、強制的に振り向かされるだろうなぁ。……はぁ。私がくるっと振り向くと、そこにいたのは、やっぱり、あいつ、だった。
「……なんでここにいるの、あんた」
キシキシに傷んだ金髪、明らかに校則違反な着崩した制服、そして……。
「なんでって、転校してきたから?」
高身長、人懐こい笑顔、どこか大型犬を連想させるこの男……私の幼馴染みであり元カレである。ついでに言うと、地元では知らない人はいないと言っても過言ではない、不良グループのリーダーでもある。さらについでに言うと、しょっちゅう、ファッション雑誌に乗ってしまうようなイケメンモデル。名前は、遠藤 健斗。
「転校って、どうしたの。おばさんたちの都合で引っ越しとか?」
……あぁ、居心地が悪い。ただ話しているだけなのに、こいつを取り囲む女子たちから、すごい目で見られる。皆さん、こいつと話せる私が羨ましいですか?だったら、今すぐ誰か、代わってください。ちょっとくらいなら謝礼もします。
「いや、前の学校、いきなり女子校になっちまってさ」
「嘘つけ」
「はい、嘘です。実は、前の学校で厄介な問題を起こして、学校側から、もうお前の面倒は見きれん!って言われちゃって」
「相変わらずだね、あんた……」
ちなみに、この超の付く問題児、健斗は三年生である。なんで、一年生の教室の前にいるんだろう。いや、言われなくても、なんとなくわかってしまう。たぶん、こいつは私を探しに来たんだ。だって、こいつは、私に……いや、今はもう違っていると思いたい。
「ひな、」
「なに、健斗」
……ぎゅう。なんの予告もなく健斗に抱き締められる。廊下に響き渡る、女子たちの悲鳴。棒立ちする、私。なにがあっても、背中に腕なんか回してやらない。私たちはもう、カレカノじゃないんだから。そう、カレカノじゃない。なのに、こいつときたら……。
「ひな、俺は今でも、お前のことがっ、」
「未練がましいわ、このバカ犬!!」
「ぐほっ……!お、おい、待てよ、ひなっ!!」
脇腹に、重い一発をくれてやった。乙女の身体に気安く触れた罰だ。私は健斗の腕の中から抜け出すと、全力で廊下を走った。そして、全力で階段を下りる。保健室に逃げ込もう、今井先生に匿ってもらおう。私はろくにノックもせず、保健室に飛び込んだ。……飛び込んだ?いつも鍵が閉まっているのに、なんで今日は開いているんだろう?
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