保健室の秘め事

桜屋敷 櫻子

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幼馴染みで元カレで不良な転校生

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 保健室の中に入って、すぐに、鍵が開いていた理由がわかった。保健室の中には、今井先生の他にスーツを着た女性が一人、男性が二人いた。三人とも若く、たぶん、今井先生より年下だった。
 ちょっと、やらかしたかな。まさか、来客中だとは思わなかった。今井先生以外の三人は、挨拶もなしに保健室に飛び込んできた私を見て、目を丸くしている。さて、どうしよう。私が扉の前で固まっていると、今井先生が助け舟を出してくれた。


 「あぁ、佐藤さん。そろそろカウンセリングの時間ですね。緒方さん、畑山さん、須藤さん、すみませんが、先約がありますので、今日のところは、これで」


 スーツを着た三人は、それぞれ今井先生に挨拶をすると、保健室から出て行った。一気に、身体から力が抜ける。私はその場にしゃがみ込んで、デスクで笑いを堪えている今井先生を睨んだ。


 「わ、悪いのは私ですけど、笑うことないじゃないですか……」

 「すみません、意外な登場の仕方だったので」


 今井先生は、カーテンが閉まっているベッドの方へ視線を投げて、なにかを確認してから席を立った。そして、私のところまでやってくると、私のすぐ側にしゃがみ込み、私の頭を撫でてニコッと笑った。今井先生は、私がその笑顔に弱いのを、よく理解しているようだ。


 「ナイスなタイミングでしたよ?佐藤さんが来るのが、もう少し遅かったら、今頃、僕のお昼休みは、まるまる潰れていました。教育実習生たちに、カウンセリングの基礎を教えてくれ、と、せがまれていたんです」


 そんな面倒なことはごめんですよ。そう言って、今井先生は溜め息を吐いた。なるほど、さっきのスーツの三人は教育実習生だったのか。
 ……あれ、今井先生、なんで私のこと、佐藤さんって呼んでいるんだろう?二人でいる時は、いつも、雛ちゃん、なのに。まぁ、いいか。


 「今井先生がちゃんと仕事をしてるところ、初めて見ました」


 笑われた仕返しとかではなく、思ったことをそのまま言ってみた。今井先生は、苦笑いをする。

 
 「まぁ、僕も働くべき時には働いていますよ。教育実習生が来ることは、事前に知らされていなかったのですが。危うく、佐藤さんとの時間を奪われるところでした」


 はぁ。今井先生は二回目の溜め息を吐くと、またベッドの方へ視線を投げて、なにかを確認する。どうしたんだろう、ベッドの方を気にしてばっかりいるけど。なにかを確認し終えると、今井先生は私に顔を近付けてきた。なにをしたいのかはわかっているので、私の方から唇をくっつけた。


「佐藤さん、今日は校庭でお話しませんか?良いお天気ですよ」


 今井先生は、そう言って、立ち上がる。校庭で話?なんのことだろう、そんな約束していたっけ?


 「……おや」


 今井先生が固まる。今井先生の視線の先にいたのは……バカ犬、健斗。

 いつの間にか、保健室の扉は開いていた。


 「ふぅん、ひなって保健室の先生と付き合ってるのか」


 ……あの、色々と、見聞きされてました?

 保健室の中の空気が、一気に冷たくなった気がする。今井先生を睨む、健斗。健斗を睨む、今井先生。私はしゃがみ込んだまま、睨み合う二人を見上げて、また固まっていた。

 
 「佐藤さんのお友達、ですか?」

 「俺?俺は、ひなの幼馴染み。元カレ」

 
 ……どうしよう。これって、私と今井先生の関係を知られたことになる、よね?

 今井先生、この前、学校をクビになる覚悟はしているって、言っていたけど、私も、処罰を受ける覚悟はしていたけど、まさか、今日、こういうことになるとは思っていなかった。誰かに知られたその時はどうするのか、まだ話し合っていない。堂々としていていい……のかな?

 そうだ、一応、健斗に訊けることは訊いておこう。


 「健斗、なんで、ここにいるの」

 「あ?俺の脚力、舐めんじゃねーよ。追いかけてきたに決まってんだろ」

 「いつから、いたの」

 「結構前から?保健室の先生とお前が、良い雰囲気なのも見てた」
 
 「……そう、」


 ……私のバカ。そういえば、健斗は昔から足だけは速くて、運動会のリレーではいつもトップで……って、今はそんなこと、どうでもいいか。とにかく、私のバカ。
 なんで、こんなデカいものに追いかけられてることに気付かなかったんだろう。なんで、こんなデカいものがいることに気付かなかったんだろう。この状況を作り出したのって、半分以上、私じゃないか。
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