保健室の秘め事

桜屋敷 櫻子

文字の大きさ
36 / 42
愛あるお仕置き

しおりを挟む
 私のクラスの学級委員長、斎藤さんといえば、病弱で学校を休みがちだけど、おっとりしていて、誰にでも分け隔てなく優しい、優等生成分百パーセントの女子生徒だ。
 ちなみに、斎藤さんは男子にモテまくりの、美少女。まぁ、美少女は置いておいて、なんで、斎藤さんには知られちゃいけなかったの?
 斎藤さんなら、私と今井先生の関係を知っても、黙っていてくれそうだけど。私がそんなことを思っていると、今井先生は、はぁ、と、重い溜め息を吐いて、喋り出した。


 「ことの始まりは、斎藤さんが持病の発作で保健室に来たことでした。僕も、斎藤さんの持病のことは知っていたので、仕方なくベッドを貸したんですが……思っていたより、彼女の具合が悪かったんです。

 教育実習生が来る時間になっても、雛ちゃんが来る時間になっても、彼女、ベッドから動けなくて。そして、あんなことになってしまったんですが……なぜ、彼女に知られてはいけなかったのか。

 ……雛ちゃん、今から話すことは、他の生徒には内緒にしておいてくださいね?

 まぁ、言ってしまうと、ですね。彼女、教師の間では有名なんですよ。他人の評判を落とすような噂を流す、質の悪い生徒として。表の顔は優等生なので、ほとんどの生徒が彼女の話を信じてしまうのですが、彼女の言っていることは、八割が嘘です。そんな彼女に、僕と雛ちゃんの関係を知られたら、どうなるか……ここまで言えば、わかりますよね?」


 ……えーと、こういうこと?斎藤さんに、私と今井先生の仲を知られたら、とんでもない噂を流されるから、あの場は否定しておくしかなかった、って、そういうこと?……あ、だから、今井先生、私のことを名字で呼んでいたのか。ベッドを気にしていたのも、斎藤さんがいたから、か。

 ……なんだろう、この疲労感と、脱力感。


 「ちなみに。今、僕が保健室を留守にしていたのも、斎藤さんが、また酷い噂を流してしまって、その対応で職員室に呼ばれていたからです。今度の噂は、僕と雛ちゃんが主役ですよ。僕と雛ちゃんが援助交際をしているとかなんとか。彼女は本当に想像力が豊かというか、なんというか……」


 ……なに、それ。私の涙を返してくれ、斎藤さん。ついでに、今井先生の涙も。あと、健斗の……あ、健斗は泣いてないか。
 はぁ。今井先生が、もう一度、重い溜め息を吐く。そして、今井先生は、私の身体の上から退くと、ベッドの端に座り、俯いて言った。


 「そういうわけなんですよ。しかし、あの場はそうするしかなかったとはいえ、雛ちゃんを傷付けてしまったことは、事実です。本当に、すみませんでし、」


 私は飛び起きて、今井先生の肩を掴んで、ガックガク揺すった。謝らなきゃいけないことをしたのは、私の方だ。謝らなきゃ、めっちゃ謝らなきゃ!


 「謝らなきゃいけないことをしたのは、私の方ですーっ!今井先生のこと、傷付けましたし、泣かせちゃいましたし、あと、それから、それから……!!」


 ……あ、いけない。つい、今井先生をゆきちゃんと同じように扱ってしまった。今井先生は、ズレた眼鏡の位置を直しながら、私に向かって微笑む。

 ……あれ、目が、笑って、な……い?


 「……雛ちゃん、さっき、僕が戻って来なかったら、どうしていました?」


 だらだらだら。見えない冷や汗が流れていく。どうしよう、今井先生が、めっちゃ怖いんですが。どうしていました?と、聞かれましても。どうしていたんでしょうね。
 力じゃ健斗には敵わないし、今井先生が戻って来なかったら、私、あのまま健斗に抱かれることになっていたかもしれない。今井先生が怖い顔をするのも、無理ないや……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...