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憧れの君は遠くから見つめてたいの

わからない

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「これが最近の魔族関連の事件についてまとめた資料。」

「ありがとう、アレンくん助かるよ。
アレンくんは今日も誰よりも美しいね。流石、格が違うよ。同じ人間だと思えないよ。」

ビクッと揺れそうになるのを抑えて微笑む。
アレンくんに話しかけられるのは慣れない。一緒にいるのはもっと慣れない。

「そんなことないけどね。
気になる事件の所にいくつか付箋つけたからリリアナさんにも見て欲しい。」
「わかった。今日は私も予定あるしそろそろ帰るね。いつもいつもありがとう。」

本当は予定なんてないけど。
家に帰ったらアレンくんがまとめてくれた資料に目を通そう。

そのまま手を振って帰ろうとしたら、後ろから声がかけられた。

「ね、何で事件について調べてるのか教えて欲しいな?」

振り向くとちょっとだけ何か期待した顔のアレンくんがいた。何でそんな表情をするの。

「なんとなく知りたかったの」

答えられるはずがない。
今度は私が困った顔をしてると思う。


私のようにある日から突然同じ夢を繰り返し繰り返し見る人が他にもいないのか気になる。そしてどのように治したのかも。

そろそろいい加減治したい。

流石にほとんど毎晩のように眠るとアレンくんに抱かれて、学校でも会うとなると身がもたない。

あまり眠れないのと落ち着かないので、

最近特に疲れがひどい。

それにアレンくんのことを妙に意識してしまうのが、居心地悪くて嫌なんだ。


図書館でのやり取りをした次の日から、気付いたら2人でほとんど毎日のように過ごしていた。
主な場所は学校にあるグループで使う用の自習スペース。開かれてるから決して密室で2人きりとかではない。
あとは図書館なんかもそう。

崇拝対象と一緒にいてパニックになってたのは始めの数日。連日のように一緒に作業するうちに考えるのを放棄してしまった。

図書館で片っ端から本を読んで気になる箇所を共有する日もあれば、どちらかに予定がある時は見て欲しい資料を渡すだけの時もある。
これは一緒にいることになった原因でもあるが、次の試験に備えて勉強している日もある。これが1番多い。

何で一緒に勉強することになったのかは、思い出すと、とんでもなく消え去りたくなるからできれば思い出したくない。後で詳しく言う。


魔族について調べるのは
正直、あまり捗ってない。

勉強メインであるし、

アレンくんが魔族について調べたい理由がわからなければ、私自身何を知りたいのか明かしてないから捗ってない。

アレンくんの態度を見るからに全く興味なさそうなのに何で調べたいなんて言ったのだろう。
ふと、その疑問を投げかけそうになる時もある。けれども彼に対して深入りしないと決めてるから聞いてない。


アレンくんと2人でいる時は、恥ずかしい話だが、いつもの挙動不審な態度がさらに過剰になってしまう。そして気を抜くとアレンくんのことを性的に見てしまいそうになる。触れてしまいそうになる。

勉強で教えてもらった問題が解けて、嬉しくて、思わずアレンくんの腕を掴んでしまった時は目眩がした。
その時アレンくんはどんな顔をしていたんだっけ。上手く思い出せない。

今日みたいにすぐに解散する時は、多少は落ち着いた態度で接することができるが、それでも色々考えてしまい疲れる。

だから、正直眼福であっても2人で作業するのはあまり好きではない。

挙動不審悪化するし、恥ずかしいし、話しかけられる度に思考停止するし、心臓が煩い。幸にして、勉強や作業で忙しくてそこまでも会話してないが。

けれども、どこか嬉しいと感じている自分も確実に存在する。運がいいなんて思ってしまう。アレンくんと夢の中のように触れ合える関係になりたいとすら思ってしまう。

しかし私は、危なくないストーカー、ファン、影、崇拝者を自称している以上、全て抑えている。

抑える、抑える、抑える。


アレンくんは誰よりも美しい。
私はアレンくんの自尊心を上げて、
いつかこれまた美しい女の子と出会った時に、自信を持って声をかけられるようにしないといけない。

頑張るんだ私!
卒業かかった試験が終わればもう卒業式でアレンくんとは離れ離れになるだろう。
その時まで続けると初めて出会った時に自分の中に課した。

一目惚れとは違う、一目惚れだがアレンくんに対して欲を持ってなかった。
何1つ持ってなかったし、自称危なくないストーカーだから、アレンくんについて詳しくも知らない。

ただ彼の外見を愛でていた。
存在そのものをただ愛でていた。


本当に何してるんだ、私は一体。
アレンくんに対する気持ちが変化し過ぎている。これは良くない。

ため息をつかずにはいられない。
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