41 / 76
小さく大きい温かさ
しおりを挟む
馬車から降りて金を払う。十分お釣りが返ってくる額だったが、それを受け取る暇もない。
レイアを抱えて急ぎ足で家の中に入る。使用人にも簡単な事情も話さないまま、客室に向かう。2人ほど女の使用人を呼んで服を持って来させる。
レイアはまだ怯えていて、光の下に居るのも関わらず瞳には光が入らない。
濡羽色の分厚い睫毛が瞳に一際暗い影を落とす。目元も少し赤く腫れており、身体は小刻みに震えている。
俺は救急箱を持ってきて手当にかかる。手を伸ばすと、レイアはビクリと身を縮こませた。
やはり怖いか。
使用人を呼ぼうとすると、レイアは声を上げる。
「違う、違います、違うのです。エヴェレット様が怖いわけでは無いのです。むしろ私は、エヴェレット様が助けてくれて、今、側にいてくれて、安心してるのです」
そんな事を思っていてくれたのか。怖がられているわけではないらしい。少しの安堵が心に落ちる。
俺は一言言ってから、レイアの首に触れる。蝶を、花を扱う様に丁寧に。
傷口に新しいガーゼを貼ると、使用人が服を持ってきてくれた。
使用人に頼んで俺は一回着替えるためにこの場を外そうとする。そのとき、レイアは不安そうな、寂しそうな顔で俺を見つめる。
俺はドアを閉めると、早足で自室に戻り急いで着替える。
ーあんな顔をされては、1秒でも離れたくなくなるだろうが。
戻るとレイアはもう着替え終わっていた。白のシルクのワンピースで、少し大きい様で袖から手が出ていない。
ー可愛いな。
大事なときなのに、そんな事を思ってしまう。
そんなレイアをじっと見ていたら、レイアはオドオドしながら口を開く。
どうやら俺のマントを綺麗に畳んでくれたらしい。確かに騎士にとって重要なものではあるが、そんなのすぐ汚れるし良いのだが。俺はそれを受け取り、近くの机に置く。
ベッドに座れと促すと、レイアはベッドの端にちょこんと座った。
もっと真ん中に座っても良いのだが、本当に謙虚だ。そんな態度も相まって余計にレイアが小さく見える。
レイアと向かい合い、俺が何があったか聞く。レイアのことだ。素直にはいと答えて、何があったか喋ってくれるだろう。
しかし、こんな事話したくないだろう。少なくとも、時間を置くべきだ。
俺はレイアの返事を待たずしてこの話を切り上げる。もう夜遅いし、レイアに寝ろと言うが、レイアはまだ眠たくなさそうだ。
いや、寝れないと言った方が良いだろう。怖いのだ、1人が。ここは安全だと分かっていても、さっきのことが身にこびりついている。
俺は提案をする。飯とか、そこら辺。しかし、あんな事を体験した後で腹が空くとは思えない。何をして欲しいか聞くと、レイアは口籠る。
焦ったくて俺が急かすと、目線を下にしたまま小声で言う。
「………さ、3秒だけ、抱き締めて、くれませんか?」
3秒だけと言うのもレイアらしい。俺は了承してレイアを抱きしめる。
レイアは俺の背中に一生懸命腕を回そうとする一方、俺は簡単にレイアを腕の中に収める。
3秒経ってレイアは離れようとするが、俺は離さない。レイアが動くたびにもっと力を入れる。
離さないでいると、明日も学園があるとか言い出した。
馬鹿なのか?アホなのか?イカれてやがるのか?何でこの状況で学園のことが出てくるんだ。俺はレイアに今の状況を説明する。レイアは何故かありがとうと言って、俺はレイアを離す。
何だか名残惜しくてレイアの頭を撫でてやると、レイアは猫の様に頭を俺の手に押し付ける。何だ、甘えられるではないか。
顎の下を撫でると、レイアは小さな声を上げる。本当に猫みたいだ。
少し続けていると、レイアは安心したのか瞼を重くさせている。俺がベッドに寝かせてやると、レイアは袖を捲って小さな白い手を出して言った。
「…‥手を、握ってくれませんか?」
ようやく素直になったレイアに俺は自然と口元が緩む。レイアの手を握ってやると、レイアは今度こそ目を閉じて、寝息を立て始めた。
レイアの温度が伝わってくる。俺よりも温かい。平熱が高めなのだろうか?小さくとも大きな温かさを送ってくれるレイアを前に、俺は手を握ったまま眠りについた。
レイアを抱えて急ぎ足で家の中に入る。使用人にも簡単な事情も話さないまま、客室に向かう。2人ほど女の使用人を呼んで服を持って来させる。
レイアはまだ怯えていて、光の下に居るのも関わらず瞳には光が入らない。
濡羽色の分厚い睫毛が瞳に一際暗い影を落とす。目元も少し赤く腫れており、身体は小刻みに震えている。
俺は救急箱を持ってきて手当にかかる。手を伸ばすと、レイアはビクリと身を縮こませた。
やはり怖いか。
使用人を呼ぼうとすると、レイアは声を上げる。
「違う、違います、違うのです。エヴェレット様が怖いわけでは無いのです。むしろ私は、エヴェレット様が助けてくれて、今、側にいてくれて、安心してるのです」
そんな事を思っていてくれたのか。怖がられているわけではないらしい。少しの安堵が心に落ちる。
俺は一言言ってから、レイアの首に触れる。蝶を、花を扱う様に丁寧に。
傷口に新しいガーゼを貼ると、使用人が服を持ってきてくれた。
使用人に頼んで俺は一回着替えるためにこの場を外そうとする。そのとき、レイアは不安そうな、寂しそうな顔で俺を見つめる。
俺はドアを閉めると、早足で自室に戻り急いで着替える。
ーあんな顔をされては、1秒でも離れたくなくなるだろうが。
戻るとレイアはもう着替え終わっていた。白のシルクのワンピースで、少し大きい様で袖から手が出ていない。
ー可愛いな。
大事なときなのに、そんな事を思ってしまう。
そんなレイアをじっと見ていたら、レイアはオドオドしながら口を開く。
どうやら俺のマントを綺麗に畳んでくれたらしい。確かに騎士にとって重要なものではあるが、そんなのすぐ汚れるし良いのだが。俺はそれを受け取り、近くの机に置く。
ベッドに座れと促すと、レイアはベッドの端にちょこんと座った。
もっと真ん中に座っても良いのだが、本当に謙虚だ。そんな態度も相まって余計にレイアが小さく見える。
レイアと向かい合い、俺が何があったか聞く。レイアのことだ。素直にはいと答えて、何があったか喋ってくれるだろう。
しかし、こんな事話したくないだろう。少なくとも、時間を置くべきだ。
俺はレイアの返事を待たずしてこの話を切り上げる。もう夜遅いし、レイアに寝ろと言うが、レイアはまだ眠たくなさそうだ。
いや、寝れないと言った方が良いだろう。怖いのだ、1人が。ここは安全だと分かっていても、さっきのことが身にこびりついている。
俺は提案をする。飯とか、そこら辺。しかし、あんな事を体験した後で腹が空くとは思えない。何をして欲しいか聞くと、レイアは口籠る。
焦ったくて俺が急かすと、目線を下にしたまま小声で言う。
「………さ、3秒だけ、抱き締めて、くれませんか?」
3秒だけと言うのもレイアらしい。俺は了承してレイアを抱きしめる。
レイアは俺の背中に一生懸命腕を回そうとする一方、俺は簡単にレイアを腕の中に収める。
3秒経ってレイアは離れようとするが、俺は離さない。レイアが動くたびにもっと力を入れる。
離さないでいると、明日も学園があるとか言い出した。
馬鹿なのか?アホなのか?イカれてやがるのか?何でこの状況で学園のことが出てくるんだ。俺はレイアに今の状況を説明する。レイアは何故かありがとうと言って、俺はレイアを離す。
何だか名残惜しくてレイアの頭を撫でてやると、レイアは猫の様に頭を俺の手に押し付ける。何だ、甘えられるではないか。
顎の下を撫でると、レイアは小さな声を上げる。本当に猫みたいだ。
少し続けていると、レイアは安心したのか瞼を重くさせている。俺がベッドに寝かせてやると、レイアは袖を捲って小さな白い手を出して言った。
「…‥手を、握ってくれませんか?」
ようやく素直になったレイアに俺は自然と口元が緩む。レイアの手を握ってやると、レイアは今度こそ目を閉じて、寝息を立て始めた。
レイアの温度が伝わってくる。俺よりも温かい。平熱が高めなのだろうか?小さくとも大きな温かさを送ってくれるレイアを前に、俺は手を握ったまま眠りについた。
501
あなたにおすすめの小説
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる