灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
10 / 132
学校

部活

しおりを挟む
 彩葉と一緒に色んな部活を回った。
 彩葉はもう何が何がも美術部と決めているらしく、まだ入るかどうかも決めていない僕のことを優先してくれた。
 
「スポーツをやってる人って、すごいカッコいいと思う。夕は?」

「うん、私もそう思う」

「夕、君はどっちなの?」
 
「どっちって?」

「僕か私か。ああ、いくつか一人称がある人?」

「あっえーと、人前では私にしてるけど…普段は僕だよ」

「じゃあ、私の前でも僕がいい。その方が友達になれそう」

「わかった。僕にする」

 運動部を一通り見た後、文化部を回る。色々見ている中、僕は彩葉に問いかける。

「彩葉は、何で僕のこと描きたいって思ったの?」

「…………むず、かしい、言葉にするのは。でも、夕は独特?だから。他の人とは、何か、違う気がしたから。だから描きたい。夕、とても綺麗だから。その美しさというか、儚さというか、それを自分の絵で表してみたい」

 何かとんでもないことを僕に想ってくれているらしい。でも僕はそんな綺麗じゃなくないか?髪だってピョコピョコ跳ねてるし、ストレートサラサラ黒髪ボブの彩葉の方がよっぽど映えると思うのだが。

 他愛の無い会話を続けていると、写真部の前に来た。写真部の部員らしき男子生徒2人が勧誘をしている、本当にとても一生懸命。命が懸かっているんじゃないかってくらいに必死に。生徒の男の子特有の低く大きな声が廊下に響きわたる。

「写真!写真撮りませんか!?初心者でも大丈夫です!大歓迎です!!部員がいないんです!部長と副部長二人だけなんです!!兼部でも!!このままじゃ廃部になっちゃうんです!!」

だからこんなに必死なのか。大変そうだなぁと思っていたら、僕たちの方にも声をかけられた。

「そこの二人組!どう!?気にならない!?」

「私は美術部一択なので」

「えっと…私は、まだ決まってはないんですけど…」

「じゃぁ候補に入れとくだけでも!活動日数少ないし、カメラさえあれば活動できるよ!」

 確かに、活動日数が少ないのは僕にとって良い条件だ。聞くと月に2、3回ほどらしい。
 「良いかも…」と、ポロッと口に出したら、これはいけると思った写真部の二人がグイグイ推してきた。どうすればいいのか分からなくて、彩葉にヘルプの視線を送ると、

「確かに、夕はカメラ、似合うと思う。写真撮るの上手そうだし。夕がいいと思うなら、それがいい。」

 違う!!いや、褒めてくれるのは嬉しいが今はそうじゃない!!助けてくれ!彩葉!!

 どうにかこうにかして写真部から離れた僕たちは彩葉本命の美術部に来た。何やらスケッチ?みたいなものをしている。美術部の部長さんが穏やかな声で話しかけてくれる。

「どう?描いてく?」

「いや、私は絵とかあんまり描かなくて…」

「じゃ、モデルだけでも!」

「夕、モデルやって欲しい」

 彩葉は僕を描きたいと言っていた。ここで断る理由も無いし、僕はモデルとなった。ポーズとか色々悩んだ結果、窓の外を見ている僕を描くことに決まった。
 時間は5分。タイマーが始まりの音を鳴らし、一斉に鉛筆が動く。鉛筆が紙の上を滑る音だけが美術室に響き、それがとても心地いい。
 ピピピピと、無情にもタイマーが5分経ったことを知らせる。

「あー、時間少ないー!」

「もっと時間配分考えるべきだったなぁ」

「ここ、もうちょっと書き込みたかったな」

 色んな声が交錯する中、僕は彩葉の絵を見せてもらった。当たり前だが僕の横顔が描かれている。自分で言うのもアレだが、とても美人だった。窓の外を見ている儚い美人な人という印象で、僕に似てるような似てないような、いや似てはいるのだが僕はそれを僕だと認識できなかった。あまりにも美人すぎて。

「すごい美人さんに描いてくれたね」

「そのままの夕を描いただけ。ほんとはもっと描き込みたかった。また、モデルになってくれる?」

「勿論だよ」

描いた絵は持ち帰ることも、美術部に預けることも可能らしい。せっかく描いた絵だ、彩葉は持って帰ることにしたらしい。

「彩葉、絵上手だね。びっくりしちゃった。」

「…夕、これ、いる?」

 そう差し出してきたのはさっき彩葉が描いてくれた僕の横顔だった。

「え!?これ彩葉が描いた絵でしょ?」

「うん、でも完成品じゃないし、もっと本格的に描きたいから。夕がいらないなら私が持ってる」

「……ほ、欲しい…です」

僕はありのままの心を伝えた。誰かに僕を描いてもらうなんて初めてだったし、嬉しかった。それをもらえるのなら、僕は喜んで欲しい。

「ん、あげる。次はもっとちゃんと描くから、また見にきて」

「うん!楽しみにしてる!」

 僕たちはもう一通り回り終わったため、そろそろ解散することにした。下駄箱で靴にローファーに履き替え終わったとき、僕たちは手を振り合う。

「じゃあね夕。また明日」

「うん。また明日!」

 僕は早速先生に連絡しようとスマホと開くと、先生から連絡が入っていた。ちょうど保護者の会議が終わったらしい。昇降口付近で待っていて欲しいとのことだった。
 このスマホも先生に貰ったもので、かろうじて連絡手段は覚えたがそれ以外の操作はほぼわからない。
 僕は邪魔にならない様に昇降口の端に寄る。僕はスマホ画面を意味も無くぽけーと見ていると、肩を叩かれた。

「あ、先…」

「?せん?」

「あっわっ!彩葉!どうしたの?」

「連絡先、交換してなかったと思って」

「あっ確かに。今交換しちゃおうか」

 連絡先交換は家で先生と一回やっていたため無事に交換できた。連絡先の項目に新しく彩葉の名前が入る。彩葉は満足そうにフフンと言ってから手を軽く振って帰路についた。それを見送ると、見計らった様に後ろから声がかかる。

「友達、出来てんじゃねぇか」

「わぁ!先生、居たなら言ってくださいよ」

「連絡先交換してんのに邪魔するわけにはいかねぇだろ」

 気を遣って話かけなかったらしい。そこまで考えが回らなかったことを密かに反省しながら、僕は先生の車で家に帰った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 僕が作った夕飯を2人で食べてる途中、先生が口を開いた。

「連絡先を交換してたが、もう仲良くなったのか」

「はい。向こうから話しかけてきてくれて。美術部に入る予定の子で、僕を描いた絵ももらったんですよ。すごく上手でした」

「そういえば、お前はどの部活入るか決まったのか?別に入らなくても俺が決めることじゃねぇが」
 
 それを聞いて僕は「ちょっと待っててください」と言って、自分の部屋から入部希望用紙を持ってきた。それを見た先生は少し驚いた様子で言った。

「ここにするのか。……似合うな」

僕を少し見つめてから、彩葉と同じ言葉を口にする。


 次の日、僕はその部長に入部届を出してきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...