灰色に夕焼けを

柊 来飛

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学校

古 誉

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 「はい、これ言ってたカメラ!」

「あ、ありがとうございます」

 僕の目の前にはある女性が座っている。
 名前は古 誉いにしえ ほまれさん。
 深緑色の髪と瞳をしていて、身長は高い。多分175くらいだろうか。
 モデル並みにスタイル抜群で、スラリと細く長い足をズボンでビシッと決めている。
 髪はボリュームのある髪型で、前髪は僕から見て左側にサラリと流している。後ろは段になっており、今流行りのウルフカットと言うやつだろうか。
 キリッとしたアーモンド型の目を厚めの睫毛が綺麗に縁取っている。
 クールビューティーなお姉さんの印象を受けるが、話してみるとカラカラとよく笑う明るい人だ。

「ところで夕ちゃん、夕ちゃんは私のこと聞いてる?」

「えっと…先生の、ご友人さんの、叔母…ということは聞きました」

「せ、先生…?夕ちゃん、鷹翔のこと、先生って呼んでるの?」

「は、はい。大学教授だし、ちょうど良いかなって…」

それを聞いた古さんは大笑いし始める。

「あはっ!あはははは!!鷹翔、せんっせっ、あはははは!!大学教授になった時も驚いたけど、あははは!!!」

目に涙を浮かべてヒィヒィと呼吸が出来なくなるほど笑った古さんは、僕に先生のことを話してくれた。

「いや、ごめんね。鷹翔、中学生の頃はそんな真面目じゃなかったからさ。むしろ喧嘩っ早い問題児っていう感じの。真面目になったの高2、いや、3年の夏ごろとかだった気が…。まぁとにかく、大学教授になったって聞いた時はほんとにとんだ冗談かと思ったよ」

「そうなんですか?」

「うん。というか、私と鷹翔、一緒に暮らしてたんだよね。私が育ての親っていう感じで」

そうだったのか。でも、何で先生が先生の友人の叔母と一緒に?
 
「まっ、色々あったのよ、あの子にも。あの子、自分のことあまり話さないでしょ」

当たりだ。先生は自分のことをあまり話さない。

「…でも、私も、自分の事、話してないから。先生も、私のことを聞かないでくれているから。だから、僕も先生が自分のことを話してくれなくても、何も聞きません」

それを聞いた古さんは何かを察したようにふわりと笑うと、僕の隣に移動して僕を優しく抱きしめる。

「何かあったら、遠慮なく私に言いなさい。鷹翔じゃ言いづらいこともあるでしょうし」

古さんは僕を抱きしめたままそんな言葉をくれる。古さんの温かく柔らかい体に身を任せ、思いを巡らす。
 こうやって、抱きしめられたのはいつぶりだろうか。多分、母が最後だろう。僕の、大好きな母親。

「鷹翔がどこまで話をしたかは知らないけどさ、きっと2人なら、上手くやっていけるよ」

「…そう、言ってもらえると、心強いです」

いつまでもこうしてるわけにもいかないので僕の方からスッと離れると、もう良いの?と古さんが視線を送ってきた。もう大丈夫ですと一言言うと、古さんはまた元の場所に戻り座った。

「んー、せっかくなら私だけじゃなくて他の人にも会わせたいなぁ」

「他の人…?」

「ほら、わたし鷹翔と一緒に暮らしてたって言ったでしょ?それ、鷹翔と2人きりじゃなくて他にも2人居てさ、計4人で暮らしてたんだよね」

 話を聞くと、元々は古さんの姪っ子さんと2人暮らしだったらしいが、その姪っ子さんと仲の良かった先生ともう1人の男子生徒を迎え入れたというのだ。関係としては養子とかではなく、本当にただ一緒に暮らしていただけらしい。
 次会う時はその人たちにも会わせたいと言われたので、僕は快く了承した。

 あまり長くお邪魔するのもあれだからと言い、古さんは僕に最後のハグをするとすぐに帰ってしまった。

 古さんを見送り、くれたカメラを触っているとガチャリと玄関が開いて先生が帰ってきた。

「おかえりなさい先生。古さん、ついさっき帰ってしまいました」

「そうか。話せたか?」

「はい!すごく良い人でした。」

「スキンシップが凄くなかったか?見てすぐ抱きついてきただろ」

「えっ、そうです。お別れの時も最後してくれました」

「距離感が近いんだよな姉貴…」

 少し苦い顔をする先生。僕は何とも思わなかったけど、誰に対してもハグをすると考えると男性の先生にとっては少し気恥ずかしい部分もあるかもしれない。

「古さん。他の人にも合わせたいって言ってました」

「他…ああ、あいつらか。俺も後々会わせようと思ってたし。いつになるかはわからんが」

「楽しみにしています!」

 他人との関わりがなかった僕だけど、ここに来て色々な人と関われることが、とても嬉しかった。
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