灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
16 / 132
学校

体育祭

しおりを挟む
 開会式が終わり、早速競技が始まる。 
 
 最初は応援合戦からで、6つの団体がそれぞれダンスや掛け声を披露する。どの団もカッコ良かったが、僕の団は特に気合いが入っていた気がする。
 ダンスの時は3年生がバク転で移動したり、団長は各団にアドリブで宣戦布告をして副団長に止められていたり、あまりにも声が大きいので先生からマイクを切られたり、ハプニングもたくさんあったが楽しかった。

 その次は僕が出るクラス100m対抗リレーだ。クラスメイトに見送られながら、僕は招集場所に行った。
 周りは皆運動部で速そうな人ばかりで、僕が縮こまっていると同じ代表の陸上部の男の子がにっこりと太陽のように笑って大丈夫と励ましてくれた。
 最初は男子からなので、まずはその男の子を応援する。彼は陸上部の中でも速い方らしく、見事1位を取っていた。

 ついに女子の番が来て、僕もスタート位置に立った。名前が呼ばれ、返事をするとクラスメイトのみんなが名前を呼んで歓声をくれる。ヒラヒラと手を振ると、うおおおおおと盛り上がってくれたクラウチングスタートの姿勢をとって、ピストルが鳴るのを待つ。

 パンという発砲音と同時に、選手が一斉に走り出す。僕は反射神経も良い方で、スタートダッシュは完璧だった。女子だけでなく、男子を合わせても良い順位に来る僕だ。そのまま勢いに乗って2位と差をつけてゴールした。
 男女ともに1位を獲得した僕たちは、応援席に戻るとよくやったと拍手をもらった。男子からはせいぜいハイタッチくらいだったのだが、女子からは大勢から抱きつかれた。女子は皆抱きつくのが主流なのだろうか?そんなことを考えている間にも競技は始まっていく。
 
 大玉転がしでは3位、玉入れでは5位という結果になった。写真を撮ることが仕事の僕は、転がってくる大玉や飛んでくる玉に気をつけながら、その勇姿を写真に収めた。
 
 お昼休憩前最後の種目は障害物競走。僕は平均台の上を渡った後、走ってタスキを渡す役割だ。最初の人がラケットの上でボールを落とさないように運んだ後、僕にタスキが渡る。
 
 みんなが平均台の前で一度ストップして慎重に渡る中、僕はスピードを落とさずにその勢いのまま平均台の上に飛び乗ってその上を駆け抜けた。みんながゆっくり歩いている中、僕は全力疾走。あっという間に差を縮めて1位に躍り出る。みんなが驚きの歓声をあげる中、僕はアンカーにタスキを渡した。
 アンカーの人は野生動物のように素早くハードルの下を潜り抜けた後、麻袋に入って飛びながらゴールテープを切った。
 この種目での結果は1位。最後みんなで集まって伊集院君に写真を撮ってもらった。1番走者とアンカーの子が僕をすごく褒めてくれて、誇らしい気分だった。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ついにお昼休憩となり、お腹すいたーと声があちらこちらから聞こえる。隣にいる彩葉と一緒に椅子を机にしてお弁当を広げて食べようとしたその時、後ろからもう聞き慣れた声が聞こえた。

「よお、烏坂」

 先生が僕の顔を覗き込むように見下ろす。

「せ、先生…」

 またの先生の登場に、クラスメイトはざわつき始める。

「リレーと障害物競走、凄かったな。どっちも1位じゃないか」  

「お、おかげさまで。みんなのおかげです」

 先生の腕には役員の腕輪が付いている。なんの役員かは知らないが、こんなところで油を売っていて良いのだろうか。

「ご飯、食べないんですか?」

「食べるさ。ただ、水筒の中身の確認だ。あれで足りるか?」

「水筒の中身…は…、」

「もう無いんだな」

「…はい、無い、です」

 僕が持ってる水筒は小さめの方だ。運動部でも無いし、日常生活ではこれで足りるのだが、今日は体育祭。これでは少し無理がありすぎたようだ。

「だと思って、差し入れだ」

 そう言って先生は僕の額に冷たい何かを当てる。受け取ってみると、500mlの冷えた水のペットボトルだった。

「わ、あ、ありがとうございます!」

「熱中症、気をつけろよ」

 先生はクラスメイトの方に視線を移すと、「君たちもな」と一言言ってから去っていた。 

 少しの間、沈黙の時間が流れた。それを破ったのは、クラスの男子たちだった。

「うわあああああ!!!俺たち、あの人に話しかけられたぜ!!」

「なぁ烏坂さん、あの人のこと、先生って呼んでんの?」

「う、うん」

「へー!確かに、なんでも知ってそー!」

 その会話を皮切りに、女子たちも話し始めた。
 
「やばい、ほんとにかっこいい」

「いやそれな、惚れちゃうでしょあんなの」

「烏坂さんよく普通でいられるね」

 いや、僕も頑張って普通に見せてるだけで、心臓が爆発しそうなのだが。

 僕のクラスの昼休みは、先生の話で持ち切りだった。




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...