灰色に夕焼けを

柊 来飛

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自覚

恋バナ

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 お風呂が終わり、部屋に戻ると早速布団を敷く。6人いるため、上と下で3対3に分けて敷いた。誰がどこに寝るか決めた後、早速みんなが布団の中に入る。
 僕は上のちょうど真ん中、隣には彩葉と班リーダーの子がいる。
 班リーダーの子は明日のことで呼ばれ、その間僕たちはババ抜きをすることになった。

 ババ抜きは僕と彩葉はすぐに上がってしまった。表情を変えないことと、相手の視線やクセを見破って仕舞えばこれは簡単だ。
 毎回上がるのが早すぎて、不正を疑われたがそんな事はない。
 これは先生とババ抜きをやった時に鍛えられた能力だ。先生は本当に強い。僕は何回も負けたし、持っている札を当てられたこともある。
 
 班リーダーの子も帰ってきて、部屋の電気を消してからみんな布団に入る。
 しかし、みんなこれからが本番だと言わんばかりに一斉に中心に体を向ける。

「修学旅行と言ったら、恋バナでしょう!」

 班リーダーの子が先陣を切る。この子にも彼氏がいて、最初はその子の話を聞いた。
 大体愚痴だったが、それでもその子は彼氏のことを好きと言うことがよく伝わった。
 次は彩葉だった。ずっと幼馴染関係だった伊集院君は今となっては彼氏だ。
 照れながらもエピソードを話す彩葉は可愛かった。
 伊集院君の方は、早い時期から彩葉への恋心を自覚しており、疎い彩葉に四苦八苦していたようだった。
 それのせいか、彼氏になったら奥手のように見えた伊集院はかなりグイグイ来るようで、今は彩葉の方が振り回させているらしい。

 みんなの話を聞き終わった後、自分に話の矛先が向けられる。

「ねぇ、夕ちゃんは?彼氏、出来たことないんでしょ?」

「う、うん。だから、僕の話は…」

「いや、聞くよ?」

 逃げられないらしい。でも、僕に話せることなんて本当に無い。それを伝えると、「話せることが無いなら作ればいいじゃない」と、かの有名な構文のようなことを言い始めた。

「夕ちゃんはさ、異性と手は繋いだことある?」

 先生とのあれはどうなのだろうか。指を絡めていたわけだし、手をつないでいる判定でもいいだろう。

「うん、あるよ」

「それは流石にあるか。じゃあ、異性とハグした事は?家族以外で」

 これも先生とのハグはカウントしていいのだろうか。家族では無いし。

「それも、ある」

「まぁ、ハグもあるか。じゃぁ、キスは?」

「キッ…」
 
 き、きす、キスは…。口、には無いが、前に先生の額にキスした事が鮮明に蘇る。あれは、どうなのだろうか。親愛、親愛のキス、は。

「………、く、、口、には無い、けど……」

「あるの!?どこに!?」

「お、おでこ…」

「誰に!?」

 そこまで聞くのか!?これ、素直に先生って答えていいのか!?いや、駄目…な気がする。でも、何で駄目な気がするのだろう。親愛なら、別にいいのではないか?何も、やましいことなんてないんだから。

「……せ、先、生」

「えー!!!」

 大きな声でみんなが驚く。やっぱり、駄目だったのだろうか。

「なんで!?どうして!?」

「せ、先生が、そのとき風邪でね。すごい弱ってて。僕には、そばにいることしか出来なくて…」

 そこまで話すと、みんながしゅんとする。あれ?駄目だったのだろうか。やっぱりキスは本当に親密な関係の人とするべきなのだろうか。でも、おでこは…おでこも、駄目だろうか。

「そっかぁ…。ごめん、大変だったんだね」

「ち、違うよ!その、こっちこそごめん!」

 なんかしんみりとした雰囲気にしてしまった。ごめんみんな、僕のせいで。

「まあ、気を取り直して。夕ちゃんはその先生とは、どーゆー関係なの?」

「どーゆー関係、か…」

 何が1番近いのだろう。親子にしては歳が近すぎるし、兄妹にしてはまぁ現実にもいるが、離れすぎている気がする。叔父さん…のような感じだろうか。

「んー、叔父、かな…?」

「えー!叔父なの!?もっとこうさ、かっこいーとか、思わないの!?あんなにかっこいい人が近くにいたら好きになっちゃわない!?」

「す、好きに…」

 好きだ。そうだよ。僕は、先生のことが好きだ。でも、それは叶わないから。

「……うん、かっこいいと思うし、とってもいい人だよ」 

「えー、じゃぁ…」


    「でも、叶わないから」

 
 そう、僕が静かに言う。僕は薄く笑って続ける。

「僕が好きになるなんて、そんなの許されないくらいに、先生は次元が違う人だから」

 その通りだ。僕が好きになってはいけないのだ。何で気づかなかったのだろう。なんて、烏滸がましいことを僕はしていたんだろう。 
 そんな考えをしていた時、彩葉が声を出す。

「好きになるのに、資格なんているの?」

「え?」

「夕は、その人のこと好きなの?そうじゃないの?どっちなの?」

「…僕は、そんなの、」

「違う、違うよ夕。私が聞きたいのは、夕の気持ちだよ。周りの意見じゃない」

「……僕、僕は、」

 声が詰まる。僕は、本当はね、僕、



    「先生が、好き……!!」

 

 ついに言ってしまった言葉。もう、戻れない。消せない、この想いは。叶わないと知っていても、もう無理だ。

「先生が好き。大好き。先生が近くにいると嬉しいし、先生と話すのが楽しい。先生が頭を撫でてくれると、何でもできる気がするの」 

 もう止まらない。僕がボロボロと吐き出す言葉をみんなは黙って聞いてくれている。

「でも、年も離れてるし、先生は僕をそういう対象として見てないから。分かってるのに、諦め切れないの。ずっと諦めようと思ってるのに、ずっと大きくなってくばかりで、」

 なんて醜いんだろうか。往生際が悪いにも程がある。

「先生には、僕よりも良い人がいるの。それは分かってる。でも、いざ先生にそういう人ができたら、僕は心の底から祝福出来ない。その人よりも、僕の方が先生のことよく知ってると思うし、先生と一緒に過ごしてたし、そういうことばっかり考えちゃう」

 ここまで言ったとき、班リーダーの子が口を開く。

「…夕ちゃんの先生、夕ちゃんのことすごく大切に思ってるよ」

「…え?」

 そこから、班リーダーの子は色々なことを話してくれた。
 
 
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