灰色に夕焼けを

柊 来飛

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自覚

過去のこと

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「烏坂っ!」

 声を掛けるが反応が無い。
 急いで駆け寄ると、ゼイゼイと息をして、苦しそうに寝ている。額に手を当てると、火傷しそうなほどに熱い。

「やっぱりか…!!」

 朝止めておくべきだった。しかし、今更後悔しても遅い。俺は烏坂を抱いて、部屋に運ぼうとする。すると、体を揺らしたためか、烏坂が目を開ける。

「烏坂、大丈夫か。今運ぶから…」

「いっ…、痛い、」

 そう言って頭を抑える。顔は見たことないくらい苦しそうに歪め、全身汗をかいている。こんなに熱いのに顔は真っ青で、カタカタと震えている。

「すまん、少し揺れる」

 烏坂を抱いて、彼女の部屋に足を運ぶ。その間、烏坂は小さな唸り声を上げ、俺にしがみついていた。

 ベッドに下ろすと、烏坂は少し楽になったのか、顔が穏やかになる。しかしまだ汗は引いてないし、咳もひどい。

「すまん、烏坂。気づかなくて」

 烏坂は何も答えない。苦しそうに息を吐くだけだ。何か冷たいものを取ってこようとその場を立つと、か細い声で名前を呼ばれる。

「せんせ…」

「…なんだ?」

「や…、やだ…。ごめ…なさい…。頑張るから…、捨てないで……」

 俺が烏坂を見捨てると思っているらしい。そんなこと、天地がひっくり返ってもあり得ないのに。
 
 俺は烏坂の側に戻り頭を撫でる。

「捨てるなんてしない。すぐ戻ってくるから。その後は、ずっと一緒にいる」

「ほんと…?」

「ああ、本当だ」

「…すぐ、ですよ…」

 そう言って烏坂はまた目を閉じる。俺はそれを見届けてから、薬やタオルを用意して部屋に向かう。

「ほら、烏坂。起きれるか?」

「ん…‥やだ…」

 頭が痛くて起き上がりたくないのだろう。ご飯も食べなさそうだし、薬は飲めないか。しかし、薬なしでは辛いだろう。

「薬飲まないと辛いぞ」

「良い…それで…。ずっと、そうだったから…」

 その言葉が重くのしかかる。烏坂のことは預かる時に聞いた。おおまかだが。
 しかし、これまでの言葉の端々から読み取れることは、ロクな人生を送っていない。俺が知らないことがたくさんある。

「せんせ…。僕のこと、嫌いにならないで…」

 クッと俺の袖を握る。その姿があまりに小さくて、俺はその手を取る。

「嫌いになんかならない」

「………そっか。…ねぇ、せんせ、」

「何だ」

「僕のこと、知ってる?僕の、昔のこと、全部」

「………知らないな」

「やっぱり」

 悲しそうな顔で、笑って言う。この言葉からも分かる通り、過去に何かあったのだろう。それこそ、烏坂に世間とはズレた認識を植え付けた何かが。

「烏坂。お前は、どんな人生を送ってきたんだ」

 その言葉を投げかけると、烏坂は目を伏せる。そして、少しの沈黙の末、口を開く。

「………話しても、嫌いにならない?」

「当たり前だ。俺も話す」

「…約束、ですよ」

 そう、力無く言った後に烏坂は自分の過去を話し始めた。
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