灰色に夕焼けを

柊 来飛

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過去

経緯

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 寝息を立てている烏坂を横目に、俺はこれまでの経緯を振り返っていた。
 それはとても酷い、身勝手な大人達による やりとりだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 
 あるとき、一本の電話がかかってきた。それは、大学時代たまに話したくらいの友人とも言えない奴からだった。
 確か、その場凌ぎで連絡先を交換していたな。何の用だ?打ち上げとか、結婚の出席とかなら断ろうと電話に出ると、要件は意外なものだった。

「よお、灰月。元気か?」

「ああ、まぁな。何の用だ?」

「実はさ、預かって欲しい奴がいんだよ」

「何のことだ?」

「実は俺、今施設の職員やってんだけどさ、アルバイトみたいな感じで。それで、ここの施設にいる奴預かってほしいの。お前大学教授になったんだろ?金もあるし頼むよ」
 
 何で見ず知らずの奴を預からなければならないのか。俺は断ろうとすると、少し切羽詰まった声が聞こえてきた。

「待ってくれよ!お前に頼んだ意味を考えろよ!お前の家、あいつが行く高校にめっちゃ近いんだよ。徒歩で行ける」

「だからなんだ。そこから通わせれば良いだろう」

「あーもう!あいつを此処に置いときたくないんだよ!!」

 ダンと机を叩く音がする。かなり参っている様子だ。そんな奴をこちらに寄越すと言うのか。冗談じゃない。

「あいつ、家の事情があれでさ。分かるだろ?それで、おかしいんだよあいつの家族。だからみんなあいつに関わりたくなくて」

「お前が言う「アイツ」自体はどうなんだ?今はアイツの家族の話しかしてないだろ」

「知らねぇよ!関わりたく無いし。とにかく、お前も施設育ちだったんだろ?だから分かるだろ、アイツの気持ち。アイツも中々ここに馴染めなくてさ、頼むよ。学費とか生活費はあいつにバイト掛け持ちさせて払わせれば良いじゃん。足りない分は社会に上がったら返すって感じでさ、」

 何か勝手に話が進んでいる。
 というか、何故俺が今大学教授で、施設育ちということを知っているんだ?誰にも話したことがないのに。家の場所さえ割られている。誰かがリークしたのだろうか。よく分からないが、本題はそこではない。

 そもそも、ただの高校生がバイトを掛け持ちで全てを補えるわけでも無いだろう。
 それに、本人が素直に了承するとも思えない。俺には分かる。環境が急に変わることがどれだけ苦痛か。

「本人は了承してんのか?」

「まだ話してないけどするだろ。ここ出て行きたいって顔してるし」

 それは事実だろう。しかし、施設を出て行って俺のところに来たいと言うわけでは無い。施設を出て、一刻も早く関係を断ち切りたいのが本音だろう。

「とにかく!頼むよ、ここに居られても迷惑なんだよ、みんな言ってる。早く出てけばいいのにって。人助けだと思ってさ、な?俺らの仲じゃねえか」

 そんなに仲がいいとは思っていないし、本人の意思を無視で話が進んでいることに気づいていない。
 きっと本人も、施設の職員に失望していて、何を言っても自分の意見が通らないことを知っているのだろう。だから、何を言われても反抗しない。ただ、言われたことを聞くだけ。

「………分かった。預かるから、資料を寄越せ。いつからだ?」

「えっ、」

「資料はすぐ送れるだろ。本人が来るのはいつだ?明日でも明後日でも良い。」

「ま、マジでいいの?結構ダメ元だったんだけど….」

 こんなに言っておいて今更なんだと言うのだ。つくづく都合のいい奴だ。

「で、どうするんだ」

「分かった!送る!送るから!日程も決まったら送る。サンキュー灰月!」

 そのまま通話が途切れる。

 俺は、何を言っているんだ。

 俺らしく無い。人助けなんて。

 見ず知らずの奴を預かるなんて、そんな面倒臭いこと、何で。

 

 俺が烏坂を預かったのは、ただの同情だった。
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