灰色に夕焼けを

柊 来飛

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過去

確かな想い

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「…‥先生、も、施設に、居たんですね」

「ああ」

「僕を、預かってくれたのも、その思い…からですか?」

「まぁな。ただ、今はこの選択をして良かったと思っている。お前に出会えたからな」

「…僕も、先生に出会えて、嬉しいです」

 互いのことを知った俺らは、似たような境遇からかそんなに溝を感じない。むしろ、距離が縮まった感覚さえある。

「………先生、遊んでた時期、あったんですね」

「………そう、だな」

「先生、モテるし、カッコいいから、相手の人、喜んだでしょ」

「………さぁ、意味のない言葉ばかりだったからな」

 烏坂は不意に俺の手を取る。

「…‥僕に対する言葉も、意味はない?」

「そんなわけっ!」

 俺が声を上げると、烏坂は笑う。

「先生、必死すぎるよ、」

「………当たり前だろう」

「えへへ、僕、嬉しいですよ、先生」

 熱を孕んだ夕焼け色の瞳をこちらに向けて、とろんと瞳が溶ける。赤く染まった顔がそれを助長し、余計に色っぽくなる。
 烏坂は言葉を続ける。

「先生、今日だけ、そばに居て」

「当たり前だ。前はお世話になったからな。今日に限らずずっといる」

「ずっとじゃなくていいよ」

 言われた言葉が俺の心に刺さる。何気ない言葉だが、現実を突きつけられた気がして。

「ずっとじゃなくていい。だから、今は、今だけは………」

 哀しそうな声で言う烏坂の手を握りしめる。すると、烏坂は俺の手を自分の額に持っていく。烏坂の熱はまだ引いていない。湯気が出そうなほどだ。

「冷たい……。気持ちいい…」

「お前が熱すぎるんだ」

「ねぇせんせ、」

「何だ」

「………ねぇ、鷹翔さん」

 不意に名前を呼ばれ、息が止まる。

「………何だ、夕」

「今だけ、名前で呼んで」

「わかった。夕」

 夕はふわりと笑うと、手を握ったまま起き上がる。まだ頭痛が酷いようで、少し動くだけで顔を苦痛に歪める。俺はそれを支えようと近づくと、俺の胸に烏坂が倒れ込む。

「烏坂!」

「……だき、しめて」

 俺は烏坂の体を抱きしめる。細い。本当に細い。ここにきてからはちゃんと食べているのに。力を入れると壊れてしまいそうで。でも、力を入れないとどこか消えてしまいそうで。

「先生、他の女の子に、簡単にこんなこと、しちゃダメだよ。誤解、されちゃうよ」

「お前だけだ」

「…そっ、か。ねぇ、鷹翔さん」

「何だ、夕」

「………ううん、何でもない」

 そのまま烏坂は目を閉じて、静かに寝息を立て始めた。随分と長い間話していた。無理をさせてしまった。
 俺はゆっくりとベッドに寝かして、顔にかかっている髪をさらりと撫でる。


 この感情は、抱いてはいけない。


 分かっている。そんなに子供ではない。


 しかし、止められない。無くせない。



    この気持ちは、もうー



 俺は確かな愛を持って、烏坂の額にキスを落とした。



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