灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

独占欲

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「では行ってきます。先生は今日お休みなんですよね?」

「ああ。だから今日は御代一と会ってくる」

「良いですね!お気をつけて!」

 学校に着き、昨日の動画のことをみんなに話す。先生がまた箸を折ってしまったと言うと、みんなはもう全てを諦めたような顔をしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「お、いた鷹翔。やっぱ鷹翔は背が高くてどこにいるか分かりやすいね」

「お前が言うのか」

 俺らはどっちも背が190を超えている。俺に至っては、あと2センチで2メートルだ。
 いつも外を歩くとよく見られるが、2人でいると格段に視線がこちらに集まる。

「というか、そのピアス珍しいね。いつも黒とかなのに」

「烏坂から貰ったんだ。お土産で」

 ヒュ~と御代一が口笛を吹く。
 それを無視して俺たちは喫茶店に入る。

 注文が終わると、すかさず御代一が口を開く。

「ねぇ聞いてよ鷹翔ー」

「何だ」

「ほら、レイ今夕ちゃんがいる高校の先生じゃん?それでさ、すっごい男子にモテてるらしいの」

「あー、なんかそれ烏坂も言ってたな」

「なんて?」

「レイがとても人気で、レイ目当てで保健室くる男子が後を絶えないらしい」

「誰?それ。殺してくるから言って」

「やめろよ…」

 いつもならサラリと言えるが、俺も御代一のことを言えない。昨日の夕飯時、烏坂と似たような会話を交わしたばかりだ。

「なんかいつもより覇気がないね。なんかあったん?」

「………お前、よくレイのことになると見境がなくなるだろ?」

「よく言われる」

「その気持ちがイマイチ分からなかったんだが、最近分かった」

「うっそだろ鷹翔。あんなに他人に興味なくて冷たかったのに。あんな鷹翔をこんだけ変えた夕ちゃん何者なの」

 烏坂関係だとバレているらしい。俺は溜息を吐く。本当に、どうしてしまったんだ俺は。

「何?何があったの?」

「………烏坂が、告白された」

「相手殺せば良いじゃん」

「やめろ。で、それが罰ゲームだったらしくてな」

「殺せよソイツ」

「その動画も回ってな。罰ゲームということは伏せられてて、烏坂が酷い振り方をしたことになっているらしい」

「だから殺せって」

「うるさい。で、相手に色々言われてな。聞いたんだが、施設育ちとか、可愛げがないとか。顔と身体は良いとか言われたらしくって、」

「もう殺せよ!」

「ただ、烏坂が駄目だというから殺してない。本当は俺だって殺したい」

 御代一は、はあーと大きな溜息を吐く。

「で?どうしたの?」

「……箸を、折った。2膳」

「うわ、めっちゃ怒ってる」

「しょうがないだろ…」

 俺は額に手を当て項垂れる。相手のことでこんなに怒ったのは烏坂が初めてだ。
 前のオープンキャンパスでのナンパや、暴漢もそうだが、烏坂が関わると俺が俺でなくなる。

「そのせいで気を取られた烏坂が、指を包丁で切って、火傷もした」

「いいよ殺して。俺が隠蔽してあげるよ」

 側から見ても、自分たちから見ても、とても物騒な会話をしている。飲み物を持ってきてくれた店員も、何事かと目を開いていた。

 しかし、本当に殺してしまいたいほどなのだ。そう思えてしまうほど、烏坂に何かしたら、俺はそいつが許せない。

「いや、でもまさか。あの鷹翔がねー」

「黙ってくれ…。俺も混乱してるんだ…」

「ダハハ!マジで参ってんじゃん!」

 本当に笑い事では無い。仕事が手につかないのだ。烏坂の告白の件の次の日なんて、人を殺す時の顔をしていると職場で言われた。

「お前と俺。性格がよく似ていると言われてはきたが…。ここまでとは……。クソッ……」

「なんか、変なところまで似ちゃったねー」

「……はぁ、…」

 烏坂が告白されたと聞いた時、時が止まった。全身が凍りついて、呼吸も、鼓動も。
 しかし、聞けば罰ゲームだと言う。それだけでカチンときたのに、散々言われた挙句、顔と身体は良いとか抜かす。
 

     ー何も知らないくせにー


 俺は衝動的に烏坂を抱きしめた。烏坂の骨が折れてしまうのではないかと思うほど。
 いつもは力を入れると言っても、加減をしている。
 ただ、そのときは、加減ができなかった。
 
 頬を撫でてやると、烏坂の顔が赤くなる。
 こんなに可愛いのに、可愛げが無いなんて。相手はどれだけ節穴なんだ。
 しかし、同時に安心した。烏坂が取られなくて。自分のものでもないのに。

「先生は僕の手をへし折ることも出来るんですね」

 昨日の言葉が蘇る。
 ああそうだとも。俺は、その気になれば手どころか足も、背骨も、首も折れるだろう。
 
 誰かに、他の男に攫われるくらいなら、全身の骨を折って監禁してしまいたい。
 その綺麗な夕焼けの瞳に映るのは俺だけがいい。
 その照れた顔も、笑った顔も、弱さも、全部全部俺だけに見せて欲しい。


 烏坂のことは、俺だけが知っていればいい。


 行きすぎた感情は、日に日に大きくなるばかりだ。

 ああ、何で、何で。

 
      何で彼女なんだ。


 他の奴でもいいだろう。もっと歳の近い奴とか、きっと、居るはずなのだ。


  でも、彼女じゃなきゃ駄目なのだ。


「で、どうするの?鷹翔だってもう、気づいてるくせに」

「…………ああ。何でなのか、俺も分からん。俺には勿体無いくらいだ」

「それ、レイも言ってた」

「だろうな」

「……あんま俺も口出しする権利ないけどさ。後悔だけはしないようにね」

「………ああ」


 頼んだコーヒーを一気に飲む。口に苦いコーヒーが広がり喉を通る。いつもよりも苦く感じたのは、きっと気のせいだ。



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