灰色に夕焼けを

柊 来飛

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惹かれ合う

告白

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「先生、隣良いですか?」

「ああ」

 ベランダでビールを飲んでいる先生の隣に行って、僕もジュースを飲む。僕と先生は無言だ。
 最初に沈黙を破ったのは僕だった。

「ねぇせんせ」

「ん?」

「好き」

「……ああ、俺もー」

「好きだよ、先生」

 僕は先生の言葉に重ねて話す。

「先生、ねぇ先生。僕、先生のこと、好きなんだ」

「……烏坂、」

「一人の男性として好きなんだ。好き、大好き」

 僕はジュースを換気扇の上に置いて先生と向き合う。



       

       「先生、大好きだよ」





 先生は驚いて目を見開く。

「僕にとって先生は、初恋で、今後2度と無いような、そんな恋なんだ」

 僕の視界が滲んでいく。

「ずっと前から決めてたんだ。この恋が、想いが、もうどうしよもなく大きくなっていた時から。受験に受かったら、告白しようって。卒業式でも良かったけど、ねぇ先生」

 僕は一生懸命笑顔を作る。




「僕を忘れないで。ずっと、覚えていて」




 先生は黙ったままだ。

「卒業式じゃ、もう先生と長くいられないでしょ?僕を、ずっと覚えていて欲しくて。かつて灰月鷹翔のそばには、自分のことを好きになった人がいたって。でもそれじゃ、すぐ忘れられちゃう。僕はただの高校生だから」

 僕は先生に一歩近づく。

「ねぇ、僕ずるいでしょ?みんなは先生の記憶からすぐ消えちゃう。でも僕は違う。先生に告白しても、振られても、まだそばにいられる。先生は僕に今すぐ出て行けって言わない、優しいから。僕は先生の記憶にずっと残りたいの」




「嫌でも何でも、先生は自分が振った高校生と卒業までの期間を同じ家で過ごすんだ。そんなの、すぐ忘れられるわけないでしょ?」




 僕は自虐的な笑みを浮かべる。僕の瞳からはもうボロボロと涙が溢れている。

「先生が僕のことそんな目で見てないって分かってる。分かってるから、優しくしないで、慰めもしないで、ただ断って。僕を拒否して、拒絶して、僕のこの想いを殺してよ。先生が始めたんだよ、先生が、先生のせいで、僕は、こんなことになっちゃったんだよ、だから、」



      


     「先生が、全部終わらせて」






 僕は先生に懇願する。先生なのだ。この僕の物語を終わらせるのは、僕じゃない。先生だ。先生だけが、僕の物語を終わらせることができる。

「先生好きだよ、大好き。僕の大好きな人。全部嘘じゃない。嘘にしたくないから、全部終わらせて」

 僕はもう前を向けない。涙が溢れ出して止まらない。こんなに辛いのか、この想いは。口に出したらもう戻れなくて、自分が思っていた以上に本音が溢れ出てくる。

「…烏坂」

「先生、」

 先生は換気扇の上にビール缶を置く。その音がやけに響く。先生は僕の近くに来ると、僕を引き寄せる。

「っせん、」

 次の言葉は出なかった。僕の唇に温かく柔らかい感触が伝わる。数秒後、その感触から解放される。

「っは、せん…」

「…お前は、疎いな…」

「せん、せ…?」

 僕は言葉を紡ぐことが出来ない。ただ、先生を呼ぶだけ。
 
「あの、さっき、」

 僕のアレが幻覚ではなければ、妄想ではなければ、夢でなければ、さっき、先生は、僕に。
 そんな考えを消し去るように、また先生の声が降りてくる。




         「俺も好きだ」




 僕はフレーズする。僕は耳までおかしくなったのか?いや、待て早まるな、そんな意味じゃない。

「違う、先生の好きと、僕の好きは、」

「同じだ」

「ちっ、違、」

 僕が言いかけると、僕の唇にまた同じ感触が走る。


 これは、キスだ。


 僕の頭が完全に理解をする。理解せざるおえない。
 今度は少し長くて苦しい。苦しくて逃げたいのに、先生が僕の体を固定しているせいでそれが出来ない。
 やっと解放された時、僕の息はもう絶え絶えだ。

「っはっ、、はっ、せん、せ、」

「俺の好きはこれだ。お前は違うのか?」

「違、く、ない……、」

 僕は認める。口では認めたが、頭が追いついていない。だって、僕、それじゃあ、先生と、

「りょ、両思い…?」

「やっと分かったか」

 先生は小さく息を吐く。

「ずっと好きだ、大好きだ、愛してる、烏坂。それなのにお前は断れとか、拒否しろとか、終わらせろとか、何言い出すんだ」

「だっ、だって、先生と両思いなんて、そんなの、夢にも思わなくて…」

 そこまで言うと、先生は大きく溜息をつく。そして、ジロリと僕を見る。

「お前は疎すぎるぞ。かなりアプローチしたと思うんだが」

「あ、あぷろーち…?」

「距離が近いのも、手を繋ぐのも、ハグするのも、ちょっかい出すのも、お前が好きだからだ」

「へ…?」

「他の奴になんてやらない。お前だけだ、烏坂」

 僕はどんどん赤くなっていく。

「あの、」

「好きだ、烏坂」



 真っ直ぐな瞳で言われる。僕は目を逸らすことが出来ない。その目に、捕えられてしまったから。
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