灰色に夕焼けを

柊 来飛

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惹かれ合う

卒業式

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 今日はいよいよ卒業式だ。

 僕は今日で着るのが最後であろう制服に袖を通す。アイロンをかけた制服はいつもよりも綺麗に見える。髪を櫛でとかし、準備は万端だ。

「あ、先生」

「その先生呼び、まだ治らねぇな」

「約三年間この呼び方でしたからね。直すのにはまた三年掛かっちゃうかもしれません」

「それもそうだな」

 先生はスーツを身につけて、胸元には僕のあげたネクタイ、耳には僕のあげたピアスをしている。灰色の髪と黒のスーツとコントラストがついているのに、全体的に綺麗に纏まっている。

「先生似合ってますよ。ただやっぱり少し怖いですね」

「仕方ないだろ、これはどうしようもない」

 先生がまだタレ目とかだったら威圧感は軽減されたのだろうが、生憎先生は顔だけでも威圧感がある。

「じゃ、行くか」

「はい」

 僕は少ない荷物を持って先生の車に乗り込む。このスクールバッグも、ローファーも、使うのは最後だろう。先生からプレゼントされた物たち。全部が僕の宝物だ。

 学校に着き、先生と別れる。またすぐ会うことになるが。

 教室に向かうと、まだ早い時間にも関わらずもうみんなが集まっていた。思い出話に花を咲かせていると、卒業式の時間が来る。僕たちは並んで体育館に足を運ぶ。

 体育館に着くと、大勢の人が僕たちを拍手で迎える。ヨレた上履きでレッドカーペットの上を歩き、自分の席に静かに座る。
 在校生が感謝の言葉を言い、卒業生代表が話をする。泣いている人もちらほら居て、ここには大切な思い出が詰まっていることを改めて知った。

 卒業式が終わった後は自分たちの教室に戻って担任の先生の話を聞く。先生は泣かなかったけどクラスの子の中には泣いている子もいた。
 
 卒業証書を持って外に出ると、そこにはみんなの保護者が居た。ここからは在校生と先生が作った道の真ん中を歩いて行く。最初の方はアーチを作っていてそこを通るのだが、

「これ、俺ずっと屈みながら通るのか?」

「そうですね」

 先生が苦い顔をする。先生は背が大きいから仕方がない。そう言っている間にも僕たちの番が来て、僕は屈まずに通るが先生は凄い屈んで通っている。

「ふはは!」

「笑うな、烏坂」

「だ、だって、ふふ、ん、ははは!」

 だって、絵面が凄い面白いのだ。在校生もとても頑張ってアーチを上に上げているのだがそれでも足りなくて、先生はずっと屈んでいるし。

 ようやくアーチを抜けると、先生はグッと背中を反らす。

「ようやくだ」

「ですね」

 在校生の中には先生を知らない人も多い。だから先生が通るとみんな先生に目を奪われて、拍手を忘れる子もいる。
 途中、蝶先生と会って僕が手を振ると、蝶先生も笑顔で振り返してくれた。

 みんなが通り抜け終わり、解散の合図がかかる。僕たちは集まって卒業式の看板の前で順番に写真を撮る。

「写真撮りますよ!」

 僕のクラスの男の子が声を上げる。僕と先生はその看板の前で写真を撮ってもらう。

「すげー!身長差やべー!」

 男の子の周りにはその友達が群がって一緒に声を上げる。そりゃ約40センチも身長差があればね。

「ありがとう」

「どーいたしまして!」

 僕と先生が撮ってもらった写真を見ていると、彩葉が話しかけてくる。

「夕、一緒に撮ろ」

「うん!」

 僕はみんなと一緒に写真を撮る。男女問わず、みんなが集まって撮った写真はわちゃわちゃしていてとても楽しそうだ。

 僕たちのクラスは校門に移動する。

「これでみんなとお別れかー」

「また集まろうね!」

 みんなが約束を交わす。みんなの親はまだ違う場所で話しているようだ。僕は先生と一緒だけど。
 
「烏坂の先生も、三年間ありがとうございました!楽しかったです!」

「ああ。烏坂がお世話になったな」

 そんなやりとりをしていると、男の子が僕の前に来る。

「ん?どうしたの?」

「…烏坂さ、まだあいつと仲直りしてないよな?」

 あいつと言うのはサッカー部の彼だろう。

「うん」

「その、近くにいるからさ。あいつ、こんな時でもちょっかいかけてきそうじゃん」

 だから僕の前に立って壁になってくれたのか。僕はお礼を述べると、その子は明るくはにかむ。

「ったくよー、本当にあの時大変だったよな」

「わかるー!あの後夕ちゃん大丈夫だった?」

「うん。みんなありがとうね」

「よかったー!夕ちゃんの先生、先生のおかげですよ。先生にあんなこと言われたら手を引くしかないですから」

「どうだか」

 先生はそう笑うと、棒がついた飴を取り出して舐める。先生が飴を舐めるなんて珍しい。

「最後にもう一言言った方が良いんじゃないですか?どうせもう会わないだろうし」

「……そうだな、なぁ夕」

「えっ!?な、何ですか?」

 先生がみんなの前で僕の名前を呼ぶ。しかし、みんなは気にしていない。僕を名前で呼ぶのはいつものことだと思っているのだろう。

「飴舐めるか?」

「え、良いんですか?あるなら欲しいです」

 多分、先生が今舐めているのと同じ種類のやつだろう。僕は素直に答えると、先生はまた僕に言う。

「夕、俺の名前は?」

「え?鷹ー」

 その瞬間、僕の口に飴が放り込まれる。

「やるよ」

「………へ、」

 みんなは口を開けている。これを見ていたサッカー部の彼もだ。



 先生は、自分が舐めていた飴を僕の口に入れたのだ。

 

「これ見たら、もう夕に手ェ出すなんて考えねぇだろ」

 先生はニヤリと笑って言う。僕がその場に固まっていると、先生は僕の腕を引く。

「ってな訳で、俺たちは先に失礼する」

 僕は腕を引かれてその場を後にする。後ろからは男子の雄叫びと女子の黄色い悲鳴が聞こえてきた。

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