灰色に夕焼けを

柊 来飛

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アフターストーリー

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 俺の大学にリモート授業が導入され、今日はその試運転日だ。俺は大学には行かずに自分の家から配信する。俺の家にはプロジェクターもあるからスライドを写せるし特に問題は無い。

 俺はパソコンを起動して授業を進めていく。マイクとチャットはうるさいし気が散るからオフにして進めていると、今日はオフの夕が前に来る。夕は何かノートに書くとパッと俺の方に見せる。

〈僕も授業受けます〉

 その字を見せた後、夕はその場に座って行儀良く授業を受ける。たまにカリカリとメモを取り、また前を向く。いつもこんな感じで授業を受けているのか、そんなことを思って特にそのまま授業を進めていると、夕からまたノートを見せられる。

〈多分、生徒さんの方に画面映ってませんよ〉

「そうなのか?」

 俺が言うと、夕はこくりと頷いてまたノートを見せる。

〈少し代わってくれますか?僕が設定します〉

「ああ、頼む」

 俺が変わると、夕は慣れた手つきで操作して画面をこちらに向ける。おそらく画面設定が違ったのだろう、パッとこちらが映し出され、今まで壁が映っていたことを知る。俺は皆に謝罪をした後夕の方にもありがとうと会釈を送ると、夕ははにかんで手を振る。その姿に和んだ後、俺は授業を進めていく。
 すると、また夕がノートを見せる。

〈マイクオンにしないんですか?チャットもオフだったし、それじゃ今回みたいに気付けませんし不便ですよ〉

 その意見には同意出来るが、それだと気が散るしな…。しかし、やはり使い勝手は悪いから皆に聞くと、全員が賛成の意見を出す。俺は隠すこともせずに顔を顰めると、前にいる夕が静かに笑う。俺は苦肉の策でチャットだけオンにしてマイクは俺の許可でオンにすることにする。
 最後、質問の時間を取るとすぐさまマイクから声が聞こえてくる。

「先生!さっき映ってたあの人誰ですか!?」

「授業に関係ある質問だけ許可する」

「アレ教えてくれないと授業集中出来ませんよ!誰ですか!?え、彼女!?」

 ああ、やっぱり来たか。さっき夕に貸した時に夕が映ってしまったのは気づいていたが、まさかこんなみんなの前で言われるとは思っていなかった。しかもコイツはかなりグイグイ踏み込んでくる。俺は諦めて濁しながら言うが、何も信じてくれない。これからもこの様なハプニングがあったら面倒だから何かとテンプレートを作っておかなくては、そう思いながら授業を終わらせる。

 俺の方のマイクと画面をオフにすると、夕が初めて声を出す。

「えへへ、灰月先生、大変ですね」

 いちいち「灰月先生」と言ってくる夕になんとも言えない感情が湧き上がる。先生呼びも減ってきたが、わざとこの様に言われるとなんだかむず痒い。せっかく名前で呼び合っているのだから名前で呼んで欲しい。

「夕」

「何ですか?灰月先生」

 この状況を楽しんでいる夕を目の端に俺は溜め息を吐く。

「聞かれちゃいましたね、僕のこと」

「ああ。何も話したく無い」

 何で夕のことを話さなければならないのか、夕の事なんてみんなには関係ないだろうに。何故、皆俺のことを知りたがるのだろうか。そのことを前に夕に聞いた時、夕は悩むことも無くすぐに答えを返す。

「そりゃ、気になる人のことは知りたいでしょう?僕が先生のことを知りたい様に」

 そんなものだのだろうか。俺が夕のことを知りたい様に、皆俺のことを知りたいのか?そう思えば少し納得できる様な、感じはする。しかし、話したくないものは話したくないのだ。

「知り合いって、何だか他人ぽい答えですね」

 夕が珍しく拗ねる。

「次、もしも次あったら、また知り合いで通すんですか?」

「なんて言って欲しい?」

「…………ち、違う大学に通う、し、知り合い」

「やっぱ知り合いじゃねぇか」

 夕は何かと恥ずかしがる。キスは勿論ハグだって前みたいにしてくれないし、恋人という関係を言うのもモゴモゴとして口をなかなか開かない。

「きっと噂になってますよ、先生の近くに女がいたって。僕、いつか刺されちゃうかも」

「そんなことない様に俺がそばにいてやるよ」

 俺は夕のそばに行くと、夕は相変わらず慣れていない様で逃げる体制になる。俺はもうその行動パターンを分かっているからすぐに引き寄せると、夕は体を縮こませて俺から目を逸らす。

「おい夕」

「お、怒らないで、ね?た、鷹翔さん?」

 コテンと首を傾げて上目遣いで見つめてくる夕にグッと喉を鳴らす。夕はそれで逃げられると思ったらしいが、俺は夕を離さない。

「た、鷹翔さん、そ、そろそろ授業じゃな、」

「そうだな、後5分だ」

「じゃ、じゃあ、」

「パソコンは閉じてないからすぐに始められる」

「し、、資料とか、」

「机の上に全部置いてあるから心配するな」

「え、えっと、」

「夕、お前がわざわざ「灰月先生」なんて言ったこと、俺少し怒ってるんだぜ」

「あの、それは、少しの出来心で、」

「そうだな、ああ分かってる。悪気はなかったんだよな?」

「そ、そうです!」

 夕は目を輝かして希望を見てるが、俺が夕の唇に手を触れた時、一変してビクリと体を硬直させる。

「なぁ夕…後3分くらいか?残り3分、耐えられるといいな」

「え、」

 夕の瞳には俺しか映っていない。それに優越感が駆け上がり、これから俺が夕を蹂躙すると言う期待のもと、俺は夕に口付けた。

 
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