131 / 132
アフターストーリー
懺悔
しおりを挟む
「ゴホッ、ゲホッ…くそっ、こんな時期に風邪なんてな…」
先生はベッドの上で咳をしていて、僕はその隣でタオルを取り替えて先生の額の上に載せる。
「安静にして下さいね」
「気が向いたらな」
先生のベッドの上には仕事用のパソコンが置いてあり、僕が出ていったらすぐにでも取り掛かるつもりなのだろう。そんな事をさせないために僕はずっと先生の隣に座る。
「移るぞ」
「ふん!ならば先生の仇を僕がうってあげます」
「頼もしいな。…何だか、前を思い出すな」
「あ、そ、そうですね…、」
僕は目を伏せる。だって僕はあのとき、先生の額にキスをしているのだ。
「その…鷹翔さん…僕の懺悔を聞いてください」
「何だ?」
「…僕、あの時寝ている先生の額にき、キス、したんです…」
「…………ふ、」
「え?」
「ふっ、ははは!あっはははは!」
先生は高らかに笑い出したかと思えば僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「せっせんせ?」
「ハハハ!何だそんなことか!あのとき言ってくれれば良かったのに」
「で、でも、」
「あの時の俺はもうお前に落とされてんだ。そんなこと知ったらすぐに風邪なんて治ったさ」
「そ、そう…ですか?」
「ああ。じゃあこちらからの懺悔を聞いてほしい」
「な、何でしょう?」
「俺も、お前が風邪の時額にキスした」
「…………え?」
「俺たち2人、全く同じ事をやってたなんて知ったら面白くてな。ククク、ハハハ!」
「えええええー!?」
僕と先生、全く同じことをしてたのか!?気づかなかった…。まぁあの時は熱で頭が朦朧としてたから当然か…。
「またキスしてくれたら早く治るかもな」
「もう!」
先生はカラカラと笑うと、僕の頭を撫でる。
「さ、俺はちゃんと寝るから安心しろ」
「……………鷹翔さん」
僕は身を乗り出して先生の唇に軽くキスを落とす。
「………夕、」
「………う、移したら、早く治るって言うし…」
すっごく恥ずかしい。とても恥ずかしい。軽い気持ちでこんなことしなければよかった。僕はその後悔から先生の顔を見れなくてその場から動けない。じっと固まっている僕を見かねた先生は僕を優しく抱きしめる。
「ありがとう夕。いい夢が見れそうだ」
「…それは、良かったです…?」
「じゃあおやすみ、夕」
「おやすみなさい、鷹翔さん」
先生は近くに置いてあったパソコンを退けるとちゃんと横になる。僕はその様子をきちんと見届けてから先生の自室を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ゴホッ、ゲホッ、コホッ、うぅ…」
「言わんこっちゃない。俺の時よりも酷いじゃねぇか」
「そ、れは、コホッ、先生の仇をっ、うつためにっ、コホッ、僕の細胞たちが、ゲホッ、頑張って、くれてるからっ、ゴホゴホッ」
「そうだな」
俺が治ったと同時に風邪を引いてしまった夕は顔を赤くして咳をしている。額に手を当てるとそりゃもう熱くて今話しているのが凄いくらいだ。
「冷たい…」
夕は俺の手を握ると自分の首に当てる。猫みたいにスリスリと甘える姿がとても愛らしい。
「…僕、昔は風邪なんて大っ嫌いだったんです。風邪引いても家事は休ませてくれないから、余計に辛いだけで。でも、先生は違う。先生は、僕が風邪を引いたら手厚く看病してくれて。だから、風邪も悪くないなって思ったんです」
「……あの施設がおかしいだけだ」
「でも、先生が優しいことには変わりないです」
夕の他人に対するハードルは極端に低いが、自分に対するハードルは極端に高い。他人にはほぼ何も求めないのに自分にはこれも出来ないと、あれも出来ないと自分に価値は無いと思い込んでいる。
犬のように従順にしていれば、捨てられる事はない
そんな考えが身体に染み付いているのだ。そんな考えを捨て、猫のように自由気ままに生きて欲しいのだが、それは中々難しい事なのだろう。
「じゃあ俺は授業だから、終わったらまた来る」
「………うん」
俺が夕の唇にキスを落とすと、夕は元々赤い顔をもっと赤くさせて布団を被る。これじゃもっと熱くて蒸発するだろ。
「おい死ぬぞ」
「しっ死なない!風邪移りますよ!?」
「俺はもう一回かかってるから心配すんな。夕、本当に死ぬから顔だけでも出してくれ」
「………ま、」
「ま?」
「まだ、鷹翔さんと結婚してないのに、死ぬわけない………」
「…………クソッ、お前風邪治ったとき覚えてろよ」
「えっ!?」
オロオロする夕を置いて俺は授業に向かう。
「何で……!」
何でそんなことを言うんだ。なんでいつも煽るようなことばかり。本人にその自覚がないことが余計に焦ったい。
「あれ?先生顔赤くないですか?まだ風邪治ってないんじゃ…」
「……いや、心配ありがとう。授業を始める」
生徒の心配を受けながら、俺は熱い脳を落ち着かせるようにリモート授業を始めた。
先生はベッドの上で咳をしていて、僕はその隣でタオルを取り替えて先生の額の上に載せる。
「安静にして下さいね」
「気が向いたらな」
先生のベッドの上には仕事用のパソコンが置いてあり、僕が出ていったらすぐにでも取り掛かるつもりなのだろう。そんな事をさせないために僕はずっと先生の隣に座る。
「移るぞ」
「ふん!ならば先生の仇を僕がうってあげます」
「頼もしいな。…何だか、前を思い出すな」
「あ、そ、そうですね…、」
僕は目を伏せる。だって僕はあのとき、先生の額にキスをしているのだ。
「その…鷹翔さん…僕の懺悔を聞いてください」
「何だ?」
「…僕、あの時寝ている先生の額にき、キス、したんです…」
「…………ふ、」
「え?」
「ふっ、ははは!あっはははは!」
先生は高らかに笑い出したかと思えば僕の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「せっせんせ?」
「ハハハ!何だそんなことか!あのとき言ってくれれば良かったのに」
「で、でも、」
「あの時の俺はもうお前に落とされてんだ。そんなこと知ったらすぐに風邪なんて治ったさ」
「そ、そう…ですか?」
「ああ。じゃあこちらからの懺悔を聞いてほしい」
「な、何でしょう?」
「俺も、お前が風邪の時額にキスした」
「…………え?」
「俺たち2人、全く同じ事をやってたなんて知ったら面白くてな。ククク、ハハハ!」
「えええええー!?」
僕と先生、全く同じことをしてたのか!?気づかなかった…。まぁあの時は熱で頭が朦朧としてたから当然か…。
「またキスしてくれたら早く治るかもな」
「もう!」
先生はカラカラと笑うと、僕の頭を撫でる。
「さ、俺はちゃんと寝るから安心しろ」
「……………鷹翔さん」
僕は身を乗り出して先生の唇に軽くキスを落とす。
「………夕、」
「………う、移したら、早く治るって言うし…」
すっごく恥ずかしい。とても恥ずかしい。軽い気持ちでこんなことしなければよかった。僕はその後悔から先生の顔を見れなくてその場から動けない。じっと固まっている僕を見かねた先生は僕を優しく抱きしめる。
「ありがとう夕。いい夢が見れそうだ」
「…それは、良かったです…?」
「じゃあおやすみ、夕」
「おやすみなさい、鷹翔さん」
先生は近くに置いてあったパソコンを退けるとちゃんと横になる。僕はその様子をきちんと見届けてから先生の自室を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ゴホッ、ゲホッ、コホッ、うぅ…」
「言わんこっちゃない。俺の時よりも酷いじゃねぇか」
「そ、れは、コホッ、先生の仇をっ、うつためにっ、コホッ、僕の細胞たちが、ゲホッ、頑張って、くれてるからっ、ゴホゴホッ」
「そうだな」
俺が治ったと同時に風邪を引いてしまった夕は顔を赤くして咳をしている。額に手を当てるとそりゃもう熱くて今話しているのが凄いくらいだ。
「冷たい…」
夕は俺の手を握ると自分の首に当てる。猫みたいにスリスリと甘える姿がとても愛らしい。
「…僕、昔は風邪なんて大っ嫌いだったんです。風邪引いても家事は休ませてくれないから、余計に辛いだけで。でも、先生は違う。先生は、僕が風邪を引いたら手厚く看病してくれて。だから、風邪も悪くないなって思ったんです」
「……あの施設がおかしいだけだ」
「でも、先生が優しいことには変わりないです」
夕の他人に対するハードルは極端に低いが、自分に対するハードルは極端に高い。他人にはほぼ何も求めないのに自分にはこれも出来ないと、あれも出来ないと自分に価値は無いと思い込んでいる。
犬のように従順にしていれば、捨てられる事はない
そんな考えが身体に染み付いているのだ。そんな考えを捨て、猫のように自由気ままに生きて欲しいのだが、それは中々難しい事なのだろう。
「じゃあ俺は授業だから、終わったらまた来る」
「………うん」
俺が夕の唇にキスを落とすと、夕は元々赤い顔をもっと赤くさせて布団を被る。これじゃもっと熱くて蒸発するだろ。
「おい死ぬぞ」
「しっ死なない!風邪移りますよ!?」
「俺はもう一回かかってるから心配すんな。夕、本当に死ぬから顔だけでも出してくれ」
「………ま、」
「ま?」
「まだ、鷹翔さんと結婚してないのに、死ぬわけない………」
「…………クソッ、お前風邪治ったとき覚えてろよ」
「えっ!?」
オロオロする夕を置いて俺は授業に向かう。
「何で……!」
何でそんなことを言うんだ。なんでいつも煽るようなことばかり。本人にその自覚がないことが余計に焦ったい。
「あれ?先生顔赤くないですか?まだ風邪治ってないんじゃ…」
「……いや、心配ありがとう。授業を始める」
生徒の心配を受けながら、俺は熱い脳を落ち着かせるようにリモート授業を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる