料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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1章 名もなき村

14 フライドポテト

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 圧力鍋の開封は成功した。
 というか、一人でやった時には成功してるのでその時と同じようにすれば失敗する要素はないのだが。

 まあ、使い慣れない道具を使うときはいつまでもドキドキするってことで。

「じゃあ、圧力鍋の中のバラ肉を取り出して軽く洗う。その時、鍋の中の煮汁は味付けの時に使うから四分の一くらいとっておくこと。バラ肉は軽く洗った後に一口大程度に切って鍋の中に戻す。ついでに醤油、酒、砂糖を入れて蓋をし直したらまた火にかける」

「また、この鍋カタカタ鳴るんですね」

「まあ、そういうものだから」

 鍋を火にかけるついでにフライヤーのほうも火を入れておく。
 このフライヤーも謎で、使った後の油が全く汚くならないのだ。
 一度使った後、次の日も使おうと火だけ落として放置しておいたら次の日には綺麗な油になっていたのだ。

 いや、何を言ってるのかわかりづらいのは分かるんだが、多分これも調味料扱いで使った後に補充される仕組みなのだと思う。

「油が温まってきた確認するには菜箸を突っ込んで菜箸から小さな泡が出てくるか見るのがいい。外でやるときには片栗粉を少しだけ油の中に入れて途中まで沈んでから浮かんできたらいい温度だ」

 そもそもかまどがどんな感じになるかわからないから揚げ物ができるかもわからないが、ミーナにはできるだけの料理の情報を教えておく。

「マサトさんみたいにこの箸も使えるようになりたいんですけど、やっぱり難しいです」

「まあ、見た目は完全に棒二本だからなあ。やっぱり難しいんだろうなあ」

 知識上では前の世界でも使ってる国は少なくて世界的にはマイナーな食器だったみたいだし。

「この油の中に斑芋を入れていけばいいんですか?」

「それでもいいけど、油が跳ねると危ないから、このフライヤー用の揚げ網を使うと良いよ」

 フライヤーの上部に設置してある底の深い揚げ網を渡す。
 形としてはラーメンなんかの湯切りに使うのと同じ感じだが、これの中に芋を入れて揚げてもきちんと揚がる。
 もっと大きなフライヤーならフライヤーの大きさの揚げ網もあるのだろうが、そこまで大きなものだと洗うのも大変なのでこのくらいの大きさが使いやすいだろう。

「斑芋についてる粉を軽くおとしながら網の中に入れていくんだ」

「せっかくつけたのに落としちゃうんですか?」

「粉が付きすぎてると感触が悪くなるからトングで掴んで軽く振ってから入れる感じにすると良いと思うぞ」

「ああ、なるほど。確かにやってみるとこのほうがいい感じになりますね」

 天職の力は偉大で、いちど工程をやってみるとそれが正解かどうかもなんとなくわかるらしい。
 レイジも似たようなもので、同じ剣士の天職持ちに基礎を習えばあっという間に我流で強くなっていってしまっている。
 まあ、俺には異界のレシピと調味料無限の食堂作成があるからそれで我慢しておこう。
 
 多分、食材鑑定は料理人の天職を持っている人間ならそのうち使えそうだからあきらめる。
 というか、長いこと料理に関する知識が向上していないこの世界では鑑定くらい使えないとまともに料理するのも難しいだろう。

「マサトさん、フライドポテトの揚がり方って何か見分ける方法とかあるんですか?」

「一般的には油の中の泡が減ってきたら大丈夫なはずだよ。あとは底に沈む食材の場合は表面に浮かんで来たら大体、中まで火が通った合図かな」

「泡が少なくなったりするんですね」

「食材の中の水分が高温の油で熱されて抜けていくから、水分が減ってきたら泡が少なくなるんだ。水と油の相性は最悪で熱い油の中に水を入れたりすると最悪、爆発炎上するからミーナも慣れるまでは気を付けるんだぞ」

「爆発……炎上……。危ないんですね」

「程度の問題だけどな。ナイフや食べ物だって使い方を間違ったり何も知らずに食べたりすれば死ぬことだってあるんだから、きちんと知って使うことが結局のところ大事なんだと思うぞ」

「そうですね」
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